中国で、出稼ぎ労働者や貧困層の暮らしなど社会の現実を記録したドキュメンタリー映画のうち、少なくとも32本が公開を止められ、表に出せない状態にある。
こうした作品をまとめた一覧がネット上に出回り議論を呼んだが、投稿は拡散後まもなく削除され、「都合の悪い現実に蓋をしようとしているのではないか」と当局への不満も噴き出している。
紹介された作品は、出稼ぎ労働者や日雇いで暮らす若者、職業病に苦しむ人々、不当な扱いを受けても行政に訴えても取り合ってもらえない人々(陳情民)など、中国社会の下の層の現実を記録したものが中心だ。日本ではほとんど知られていない実態である。
本紙の取材に対し、北京の映像制作関係者は「現実を扱う作品は審査で何度も差し戻される」と語る。いったん許可された作品でも、完成後に「内容が敏感」として公開を止められるケースがあり、「制作費をかけても最後に止められる」と実態を明かした。
封じられたこれらの作品はテーマこそ異なるが、「普通の人々の暮らしをそのまま映している」点で共通している。つまり、現実をそのまま記録すること自体が、公開できなくなるリスクになっている。
こうした作品は海外では評価されることもあるが、中国国内では継続的な公開は難しい。
専門家は「個々の作品の問題ではなく、現実をそのまま映すこうした作品そのものがまとめて排除されている」と指摘する。複数の作品が並ぶことで、社会の全体像が見えてしまうことを警戒しているという。
中国という特殊な国をみることにおいては、見えている情報よりも、検閲で消されている情報にこそ真実がある。それでも家庭のテレビに映るのは、「繁栄した中国」の姿ばかりだ。

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