マクロン氏「暴徒に責任を取らせる」 フランス 近年最悪の騒乱の被害を確認

2026/10/19
更新: 2026/10/19

10月17日の暴力行為で2397人を逮捕、警察官ら約1千人が負傷。パリで再び略奪が起きる中、政治家らは責任を巡って応酬している。

 

「破壊した者は代償を払い、略奪した者は弁償し、共和国を倒そうとした者は、その責任を問われなければならない」

エマニュエル・マクロン大統領は10月18日夜、テレビ演説で国民にこう語った。前日に発生した生活費の高騰に反対する全国的な抗議活動が、フランスで近年最悪の暴動へと発展した。

マクロン氏は「極めて重大な局面」と述べ、破壊行為の責任は「極左の分派集団に属する扇動的な勢力と、それに加わった多数の犯罪者」にあると非難した。特にリモージュ市庁舎への放火に言及した。

「フランス人が、どうしてフランスにこんなことができるのか」と問いかけ、「今夜、われわれは皆、怒りと恥辱を感じている」と述べた。商店主らを「孤立させない」と約束し、地方長官は「特定の集会」を禁止できると説明。「国に必要なのは秩序であり、事態の激化ではない」と警告した。

「全てを壊された」

その数時間前、レピュブリック広場には使用済みの催涙弾の容器が散乱していた。作業員らは、飛び道具に使う石材をはがされて台座が損傷したマリアンヌ像の周囲で、ガラス片を掃き集めていた。

近くでは、姓を明かさなかったヨニさんが、自身の大理石ショールーム「ピエール・エクスクルーシブ」の展示品が壊されているのを見つけた。

「こうした事態を予想し、店を守るためにできることは全てしていた」と大紀元に語った。

「しかし、ここには盗むものはなく、壊すものしかなかった」

2万5千ユーロ(約440万円)相当の大理石のテーブルが、粉々になっていた。

「今朝、私たちが到着した時も、まだ店内に人がいた」と述べた。

パリ第3区では、薬剤師のファビアン・カレームさんが、荒らされた自身の店内に立っていた。

「薬局は、そもそも最初にケアを受ける場所だ。それをなぜ荒らすのか理解できない」と大紀元に語った。

在庫品だけで損失は15万ユーロ(約2651万円)近くに上るという。「私の小さな商売は、長期間にわたって営業できなくなった」

10月18日、パリで暴力的な抗議活動が広がった翌日、レピュブリック広場の共和国記念碑は「ファシストに死を」「アンティファ」など極左のスローガンの落書きに覆われている(Etienne Fauchaire/The Epoch Times)

フランス製のフレームだけを販売する眼鏡店「オプティショップ」のカミーユ・ミシュランさんは、「孤立感と途方に暮れる思い」を語った。

「正しい方向に進んでいる会社なのに、全てを略奪され、全てを壊された」と大紀元に述べ、損失は5万ユーロ(約5万6千ドル)を超えると見積もった。10月17日、群衆が通り過ぎた際、ミシュランさんと従業員3人は午後5時まで店内にいた。

「憎悪の言葉を浴びせられ、私たちに向かって喉を切るしぐさをされた」と語った。

夜が明けても略奪は終わらなかった。

パリ警視庁によると、10月18日午後までに、さらに3店舗が略奪され、25人が逮捕された。拘束された人々は「主に略奪の機会を探していた郊外の若者」だと説明した。

ボールペール通りのブティックは、数秒で商品を奪い尽くされた。レピュブリック広場には再び数百人の抗議者が集まった。警察は催涙ガスを発射し、放水車と機動隊のCRS第8部隊を投入した。ボルテール大通りでは、ごみ箱で作られたバリケードが燃え、近くの通りではレンタル自転車が炎に包まれた。

デモ行進が暴動へ

10月17日のデモ行進は、1か月にわたる騒乱の末に行われた。発端は、移民が暮らす郊外で、極左の高校生らが校舎の老朽化と教員不足に抗議したことだった。怒りは間もなく物価上昇や政府の歳出削減にも広がり、ネット上では、生活費の高騰に抗議した2018年の「黄色いベスト運動」の復活を呼びかける声が上がった。

10月18日、暴力的な抗議活動と広範な破壊行為がパリを襲った翌日、サンドニ門の近くに残された焼け焦げた車両(Etienne Fauchaire/The Epoch Times)

内務省は、全国の参加者を55万人と発表した。労働組合の労働総同盟(CGT)などの主催者側は、80万人が行進したとしている。

警察によると、パリでは11万人が平和的に行進した一方、別の数千人が暴動に参加した。

パリの警察は、暴力的な集団は通常よりはるかに大きく、その人数は500人から1千人超だったと説明した。行進が解散すると、黒い服を着た小集団がレピュブリック広場とバスチーユ広場の間で店のシャッターをこじ開け、別の人々が後から入り、略奪した。

エマニュエル・グレゴワール市長は記者団に、「通り全体が組織的に荒らされた」と述べた。警察は首都で過去最多となる855人を逮捕した。また、マジャンタ大通りでは、行進の参加者1人が心停止で死亡したと明らかにした。

最も衝撃的な映像は、フランス中部リモージュのものだった。地方長官府によると、歴史的建造物に指定されている1883年建築の市庁舎が、議員や職員がまだ中にいる状態で放火された。鐘楼は炎の中に崩落した。

リモージュのギヨーム・ゲラン市長は10月18日、記者団に対し、覆面姿で「高度な訓練を受け、武装した」極左活動家約700人が、5千人の行進に紛れ込んでいたと述べた。大通りで彼らを食い止めていた警察は、午後3時半までに「弾薬が尽きた」という。侵入者らは議員らに「お前たちを全員殺す」と言ったとした。

「計画的な放火だった。共和国の選挙で選ばれた公職者に対する殺人未遂だ」と述べた。10月18日には、約7千人がリモージュ市内を行進した。

マルセイユでは、抗議者らが市庁舎の扉をこじ開け、フランス共和国を象徴するマリアンヌの胸像を床に落とし、市警察の庁舎への放火を試みた。警察の地方長官府によると、混乱が最も激しかった時点で「略奪者」は3万人を超え、そのうち8千人が暴徒と分類された。警察官118人が負傷し、催涙弾4千発が発射された。

ボルドーでは、暴徒が地方長官の公邸を荒らし、最大100店舗を略奪したと市長が述べた。リールの市庁舎にも一時、侵入者が押し入った。

「極めて厳格な」対応

内務省によると、10月18日夜までの逮捕者は2397人、負傷した警察官、憲兵、消防隊員は997人に上り、このうち7人は重傷だった。ローラン・ニュネズ内相は、暴徒の集団が「極左による極めて明確な扇動」によって形成され、午後には略奪者や「混乱に乗じる犯罪者」が加わったと述べた。

ニュネズ氏はXに、「デモは基本的な権利だ。暴力を用い、組織的に混乱を引き起こすことは、そうではない」と投稿した。

10月18日、極左による暴力的な抗議活動がパリを襲った翌日、破壊されたマクドナルドの店舗前に残る暴徒のバリケード。窓は「2026年革命」などの落書きに覆われている(Etienne Fauchaire/The Epoch Times)

セバスチャン・ルコルニュ首相は、「極左集団がフランスの複数の都市で暴力行為を組織した」と述べた。また、混乱の責任を警察の指揮系統に帰していた極左の大統領候補ジャンリュック・メランション氏を批判した。

ルコルニュ氏はXに、「暴力を振るう者に言い訳を与えながら、暴力の終結を求めることはできない。それこそが、あなた自身の政治的責任だ」と投稿した。

ジェラルド・ダルマナン司法相は、「極めて厳格な」司法対応を指示した。パリだけでも557人が引き続き身柄を拘束されていた。

メランション氏は10月18日、テレビ局LCIのインタビューで、暴動への非難を拒み、「それで何が変わるのか」と問い返した。「政府の責任であり、これら全てについて政府だけが責任を負っている」と主張した。リモージュ市庁舎への放火を「犯罪」と呼び、政府が「事態を放置して悪化させている」と非難。価格の凍結と、学校への100億ユーロ(約112億ドル)の支出を求めた。

国民連合の大統領候補マリーヌ・ルペン氏はビデオ演説で、フランスは「息切れし、疲弊し、方向感覚を失ったマクロン派の政権」の下で、「信頼と権威の深刻な危機」に直面していると述べた。「破壊勢力」を、メランション氏の「不服従のフランス」とアンティファの集団に結びつけた。

10月17日、パリで暴力的な抗議活動が広がる中、ポワソニエール大通りのカフェ「ル・ブレバン」の外で、燃えるがれきの横にバリケードを築く覆面姿の抗議者(Etienne Fauchaire/The Epoch Times)

被害の代償

小売業団体FCDとカルフールの双方を率いるアレクサンドル・ボンパール氏は、約1500の事業者が被害を受け、損失は「数億ユーロ」に上ると見積もった。セルジュ・パパン商業相は、小売業者、銀行、保険会社を10月19日午前の会合に招集した。

フランス市長会は、10月19日正午に全国の市庁舎前で集会を開くよう呼びかけた。ヤエル・ブロンピベ国民議会議長は、暴力行為と警察の対応に関する議会調査を提案すると述べた。また、国内の主要5労組は11月5日の全国ストライキを呼びかけた。

トランプ米大統領はトゥルース・ソーシャルに「フランスが燃えている!」と投稿し、同国に国境を閉鎖するよう促した。

「全く異なる世界から来た、心に憎しみを抱く人々の移民が、かつての偉大な国を打ち砕いた。手遅れになる前に国境を閉鎖し、統制を取り戻せ!」と記した。

レピュブリック広場近くに戻ると、ヨニさんはすでに、ショールームを再び板で覆う準備を進めていた。防護措置には毎回数千ユーロかかり、最も忙しい土曜日に休業しなければならなくなる。

「デモのたびに、これをしなければならないのか」とヨニさんは問いかけた。

「もう、どうすればよいのか分からない」

エティエンヌ・フォシェール(Etienne Fauchaire)はパリを拠点とするエポックタイムズのジャーナリストであり、フランス政治および米仏関係を専門としている。