【透視中国】何清漣:西洋人のチャイナ・ドリーム

2005/05/05
更新: 2005/05/05

【大紀元日本5月5日】(新唐人テレビ局記者・林丹、謝宗延、陳修文報道)2004年9月20日に国連貿易開発会議(UNCTAD)が発表した「2004年世界投資報告」によると、中国は始めてアメリカを抜いて外国からの投資額が世界一となった。しかし、投資に必ずリスクが伴っている。マルコボーロが初めて中国を西洋に紹介したとき、西洋人は中国に対して夢を抱き始めた。西洋人のチャイナ・ドリームについて、経済学者の何清漣は次のように分析した。

安価な労働力とSA8000基準

中国が外資を誘致する際の大きな目玉は安価な労働力である。中国が世界の工場として躍進できたのは、労働者の厳しい就業条件と環境への破壊の上に成立している。

現在、中国の労働コストは世界で最も低い。中国の労働力、つまり「出稼ぎ者」の給料の中に、殆ど福祉が含まれていない。彼らに医療保険も厚生年金保険もかけられていない。

アメリカは1997年企業の人権状況を判断するSA8000基準を作った。この基準に、未成年者の雇用、長時間の労働、女性の権益など八項目が含まれている。この基準で中国の企業を図れば、半数の企業は基準を満たしておらず、未成年者の雇用や、労働保護の皆無などの違法行為は当たり前のように行われている。この基準を順守すると、中国の労働コストは大幅に増額することになる。

西洋人のチャイナドリーム

マルコボーロのときから、西洋人はチャイナ・ドリームを抱いている。もし全ての中国人がフォークを一本でも買えば、この市場はもう十分大きい。もしみなパジャマを着れば、生産が追いつかないほど大量の注文がやってくると思っていた。もちろん、これらの打算は失敗に終わった。しかし、このチャイナドリームの現代版は、十年前から始まった。多くの西洋人は成功の機会が中国にあると信じはじめた。マレーシアの大統領は中国人の全ての人がマレーシア産のオリーブオイルをおさじ一杯でも使えば、売れない心配はないと言った。しかし、オリーブオイルはオイルの中で最も高く、今の中国人に買えるものではない。十三億の中国人の中に消費能力のある人はせいぜい三億であり、しかもこの三億の人が外国の高価なものを自由に購入できるわけではない。外国が中国を本当に認識するまで、時間が必要である。今のバブルが崩壊して、はじめて本当の中国を見ることができる。

面白いことに、外国製品は中国市場でのシェア率が非常に限られているのに対し、中国製の商品は今彼らの産業を脅かしている。今、多くの国はいかに本国での中国製商品のシェア率を抑えるかに頭を悩ましている。

中国最大の危機金融危機

農業危機や、資源危機より中国の本当の危機は金融危機である。ある国の金融が正常であるかどうかを図るとき、二つの指標がある。一つは資産に関わるリスクに応じて調整した総資産に対する自己資本(BIS 基準自己資本)の割合で,基準では国際業務を行う金融機関は 8%以上,国内業務だけの場合は 4%以上とすることが求められている。これは即ちバーゼル・アコード(※1988年7月にスイスのバーゼルで,主要先進12ケ国銀行監督当局と中央銀行の代表で構成されるバーゼル銀行監督委員会で出された申し合わせ事項)である。8%以下の場合、銀行が破産してしまう。

中国の場合、1993年以来、自己資本率は常に3%以下であり、つまり自己資本が不足しているということである。この問題を解決するために、1998年から2004年まで中央政府は一千億ドル以上を投入し、一万五千億の不良債権を切り離した。しかし、近年鉄鋼産業への融資の48%、不動産の不良債権の80%が銀行からであるため、不良債権を処理しては増えるという情況になってしまい、その負担は全部中央政府が背負ってしまった。もし中国の銀行が国有であるという要素を考慮しなければ、事実上、銀行は既に破産している。中国政府は国の信用だけで銀行を支えているわけである。

もう一つの判断基準は不良債権の割合である。中国政府が公表した不良債権の割合は年々下がっている。2004年3月末、中国の四大国有銀行の不良債権は融資総額の19%を占めていたが、同年9月末まで既に5.16%に下がったと中国政府は同年11月、発表した。下がるスピードが速く、しかも下がった理由について何の説明もないため、この数字に信頼性はない。米国の権威ある評価機関スタンダード・アンド・ブアーズ(Standard & Poor’s)は中国の銀行の不良債権率は45%に達していると見ている。

外資の進出と資金の流失

外資が中国に流れ込んできていると同時に、多額の資金が海外に流失している。中国の資金の流失は幾つかの原因がある。一つは、幹部が汚職で着服したお金をもって海外へ逃げる。もう一つは、中国の政治制度を信用しておらず、政策がいつも変えられているため、資金の安全を考えて、資金を海外に持っていく。近年、留学を通じて流失した資金は毎年、30億から40億ドルに達している。しかし、これほど大量の資金が流失しても、次から次へと流れ込んでくる外資の補充によって、資金流失の深刻さはなかなか気づかれないでいる。

中国投資ブーム

近年、中国投資ブームは衰えを見せることなく、中国系の株も注目されている。ドイツの中国問題専門家は公にテレビで中国投資をドイツ政府に勧めた。さらに、中国との経済関係を発展させるために、中国政府の機嫌を損なってはならず、中国の人権、中国の政治体制を批判してはならないとまでアドバイスした。ドイツ政府はこれを殆ど鵜呑みした。

さらに、フランスは中国友好年であり、数百に及ぶ中国の観光ツアーがフランスを訪ね、旅行で大きな収益が見込まれるため、フランスからの中国に対する批判の声は今殆どない。

中国に投資している企業はみな金儲けが目的であるが、成功した企業もあれば、失敗した企業もある。しかし、多くの場合、人々は成功した企業に注目しがちであり、失敗した企業は企業イメージのダウンを恐れ、失敗を公にしたがらない。

今の中国は大きなギャンブル場のようである。その結果がどうなるかは神様しか知らない。

関連特集: 日本経済