四川大地震:エネルギー産業の被害甚大

2008/05/25
更新: 2008/05/25

【大紀元日本5月25日】中国全土で四川地震の犠牲者を追悼した5月19日、中国当局は工業および情報化部の奚国華(シー・グォ・ファ)・副長官が政府側として初めて、大地震が企業に与えた経済損失が95億米ドル(約9975億円)に達し、影響は長期にわたると、初めて外部に示した。米誌「ビジネス・ウィーク」によると、北京当局は原油、天然ガスダムなどの損害状況について、すでに調査を行い、経済損失は経済学者らの予測を超える可能性が高いという。

*最大手タービン工場閉鎖、エネルギー産業は前途多難

「ウォールストリート・ジャーナル」はアナリストの見解を引用し、四川省は農業が中心にであることから、中国経済に対する地震の長期的影響は限定的でると報道した。これに対して、ビジネス・ウィークでは中国最大手タービン製造メーカー・東方電機公司傘下の「東方タービン」の四川省綿竹市にある本部生産工場は、大地震により廃墟と化したと報じた。

東方電機は5月16日、大地震でタービン製造部門が「タービンの製造および販売が深刻な影響を受けた」と発表した。同部門の売り上げは昨年、企業全体240億米ドル(約2兆5200億円)の5分の1を占めた。中国において、同企業はタービン市場の3割以上を占めていることから、直接の経済損失は10億米ドル(約1050億円)に達するとみられる。

地震発生から5月19日までに、香港式市場の東方電機株価はすでに17%も下落し、上海市場でも開設時に比べ10%下落している現状だ。ケンブリッジ・エネルギー・リサーチ協会の駐北京アナリストのエンカフさんは、「この企業は基本的にすでに無くなっている。数ヶ月内で運営を回復できるかは疑問だ。しかし、この企業がなくなれば、中国のエネルギー産業に大きく影響を与える。中国は海外からタービンの多くを輸入するしかない」と分析した。

その他に、大地震により、四川省の天然ガス供給が止まり、水力発電の停止をもたらし深刻な問題となった。中国政府電力主管当局がホームページで公開した情報では、すでに27の発電所が閉鎖され、発電量は地震前の76%に減少したことを明らかにした。近年中国経済の著しい成長により、電力供給は窮迫している状況で、エネルギー産業の損失は経済全体に対して連鎖反応的に影響する可能性が高いとみられる。

*天然ガスの採掘停止

大地震発生後、四川省にある76箇所の天然ガス掘削所の内、すでに50箇所が停止した。そのため、中国石油(ペトロ・チャイナ)は香港とニューヨークの株式市場では、大きく下落し、同社が四川省にある最大天然ガス田生産量は、日産600万立方メートルから400万立方メートルに減少した。

昨年の天然ガス供給量が全国の27%を占めた四川省は、中国の主要天然ガス供給源と言える。中国の天然ガス生産量は現在、中国エネルギー市場の3%しか占めていないが、北京当局は2020年までにそれを10%に達するように計画しており、豊富な天然ガスを有する四川省は、同計画の中では重要な位置を占める。

*ダムの安全が懸念される

中国全国の電力需要量は、7220億ワットになるが、その20%が水力発電に頼っている。しかし、中国水力発電の要である四川省の大地震による被害は、最も深刻であり、復旧には時間がかかるという。中国水資部の発表によると、最大水力発電所として利用されていた四川省にある391のダムがすでに深刻な損害を受けているという。

中国の大手ダム建設会社・水利水電建設集団公司(シノ・ハイドロ)は、会社の従業員約100人が大地震により死亡し、500人が負傷、1万人が家を失い、財務損失は約263億円に達したとし、約347億円に相当する建築物を立て直す必要があると発表した。

米セントルイス・ワシントン大学政治学助教授のアドリュウ・C・マーサー氏は、ダムの決壊の可能性が緊急事態になっていると警告した。マーサー教授によると、地震発生前、全国の8万7千のダムに欠陥が見つかり、その内の3万7千のダムが、今年初めにすでに警戒状態にされたという

中国当局は少し前、都江堰付近の紫坪鋪ダムに生じた亀裂は安全上問題にならないとしたが、マーサー教授は、「中国のダムに実際に使用された建材を研究すればするほど、当初設定した基準を遥かにかけ離れていることが分かる」と警告した。

 (記者・郭秋怡、翻訳/編集・余靜)
関連特集: 日本経済