アングル:トランプ政権、中国向け「圧力戦略」が新局面入りか

2018/10/01
更新: 2018/10/01

Matt Spetalnick and David Brunnstrom

[ワシントン 27日 ロイター] – トランプ米大統領が26日、11月の米中間選挙に介入しようと画策していると中国を非難したことは、中国に対する圧力戦術が新たな局面を迎えたことを示している。複数の米政府高官が27日語った。

2人の政府高官によると、長年の対中強硬派として知られるボルトン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)が中心となって、貿易摩擦の枠を超え、サイバー活動や台湾、南シナ海の領有権問題なども含めて、中国に対して強い姿勢を取るようトランプ大統領を説得した。

新たな戦術はまだ策定中だが、中国への圧力強化により、今後数週間で米国側からのさらなる強硬発言や、新たな政策措置が出てくるだろう、と政府関係者は語った。ホワイトハウスは、この点に関するロイターの問い合わせに応じなかった。

米中関係が緊迫化する中で、トランプ大統領は26日の国連安保理会合で、中国が11月6日の米中間選挙で共和党が不利になるよう介入し、通商問題におけるトランプ氏の強硬姿勢に一矢報いようとしていると非難。介入の根拠は示さなかった。

これにより、トランプ氏は2016年の米大統領選におけるロシア介入疑惑と自身の選挙陣営の癒着疑惑を巡る捜査から、関心をそらそうとしており、同時に、中間選挙で共和党が振るわなかった場合に中国に責任を転嫁する用意を始めたのではないかとの批判も出ている。中間選挙の結果次第では、共和党が下院で過半数を失う可能性がある。

とはいえ、中国は米国の国益に「ハイブリッド戦」を仕掛けており、ロシアと並ぶ強力なライバルだということを、トランプ大統領が明確な発言で示す必要があるとの認識がホワイトハウスで高まっていた、と前出の政府高官は強調する。

最近では、ロシアから戦闘機やミサイルシステムを購入して米制裁に違反したとして、米国が中国人民解放軍の兵器管理部門を制裁対象に指定。これを受けて中国政府は22日、駐北京の米大使を呼び出したほか、予定されていた軍事協議を延期した。

<全方面で圧力強化>

中国の「影響操作」と呼ばれる問題について、トランプ大統領はより多くの説明を米情報機関から受けるようになっており、この分野も含め、中国に対してさらに強い姿勢で臨む構えだと、政府高官は言う。

「通商措置を取ったこともあり、われわれは全方位で中国に一層の圧力をかける準備ができている」と同高官は語った。

中国が米国の政府や企業データベースにハッキングを仕掛けてくる主犯の1つだと、米政府は以前から特定していた。ただ、ロシアが2016年の米大統領選で行ったような、ソーシャルメディア上の意識操作を含む組織的な政治キャンペーンを中国が行った形跡は見つかっていないと米政府関係者や独立系アナリストは指摘する。

中国は、米国選挙に対する一切の介入行為を否定しており、「中傷だ」と反発している。

26日の国連発言で、トランプ氏が中国による具体的な行動として唯一指摘したのが、米新聞への「プロパガンダ広告」だった。これは、アイオワ州有力紙デモイン・レジスターの日曜版に中国国営メディア企業が掲載した、米中貿易が相互利益をもたらすと訴えた4ページの折込広告のことを指している。

米大統領選においてトランプ氏は、農業州アイオワで勝利を収めたが、貿易戦争が長引けば農家が大きなダメージを受けることになる。

ただ、外国政府が貿易促進を訴える広告を米紙に出すことは日常的にあることで、外国情報機関が秘密裏に行う工作とは異なる。

「中国政府は、われわれの政策を撤回させるためにあらゆる手段を講じている」とホワイトハウス国家安全保障会議の広報担当者は語る。「彼らは、トランプ大統領に投票した州の農家や労働者を狙って報復関税を課している。その他にも政治的、経済的、通商的、軍事的な手段やメディアを使い、中国共産党の利益を得ようとしている」

トランプ政権は、たとえ中国から激しい反応を引き起こす恐れがあっても、より幅広く押し返そうと決意しているかのように見える。

例えば、中国によるネット上の盗難行為やスパイ行為に対しても、より厳しい行動を取ることを米国政府が検討している、と関係者は語ったが、詳細な説明は避けた。

米軍は今週、南シナ海上空でB52戦略爆撃機を飛行させ、同海域の領有権を主張する中国を改めてけん制した。台湾への3億3000万ドル(約375億円)相当のF16戦闘機の部品などの売却も今週承認しており、台湾を自国の一部とみなす中国を立腹させた。

また、中国が対北朝鮮制裁を完全に履行しなくなっている可能性があるとして米政府関係者は懸念を深めており、この分野でも中国に圧力をかけ続けるとしている。

他方、米国側の「やり過ぎ」を懸念するアナリストもいる。

「衝突や影響力は、賢明に使われるならば、国際関係における便利な道具だ。 特に中国の問題行動に対してはそうだ」。昨年まで米国務省で東アジア政策担当幹部を務め、現在はアジア・ソサエティのポリシー・インスティテュートに所属するダニエル・ラッセル氏は語る。

「だが、特に中国のように巨大で強力な国に対しては、攻撃的に正面から全面攻撃を仕掛けても、成功する可能性は低い」

(翻訳:山口香子、編集:下郡美紀)

Reuters
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