大紀元時報
掛谷英紀コラム

新型コロナ問題を拡大させた左翼と新自由主義の共存共栄

2020年04月28日 21時00分
1997年10月6日、カリフォルニア州で開かれたブラット・ピット主演の映画「セブンイヤーズ・イン・チベット」映画試写会に詰めかけた、チベットの自由を訴える人々(GettyImages)
1997年10月6日、カリフォルニア州で開かれたブラット・ピット主演の映画「セブンイヤーズ・イン・チベット」映画試写会に詰めかけた、チベットの自由を訴える人々(GettyImages)

前回述べた通り、新型コロナウイルス問題において最も大きな責任があるのは、情報を隠蔽するとともに、他国による中国からの入国制限に反対して感染者を海外に旅行させ、ウイルスを世界中にばら撒いた中国共産党であることは間違いない。しかし、中国共産党には重要な共犯者がいることを忘れてはならない。それは新自由主義(※1)を掲げるグローバリストである。彼らが推進してきたグローバリズムが、ウイルスの世界的拡散を容易にするとともに、医療物資不足で被害を拡大させたことも見落としてはならない事実である。

そもそも、中国の急速な経済成長の裏には、新自由主義者の多大な貢献があった。中国の安い労働力を使って利益を上げようと考えた新自由主義者たちは、資本の国際的移動の自由を推進してきた。1990年代、天安門事件やチベット弾圧など、中国を巡る人権問題に対する国際世論の関心が今より高かったことは、1997年に映画『セブン・イヤーズ・イン・チベット(Seven Years in Tibet)』がヒットしたことからも分かる。同様に、中国の知的財産権軽視も世界から問題視されていた。東西冷戦の余韻も残っており、独裁的な政治体制に対するアレルギーも今より大きかった。にもかかわらず、2001年の世界貿易機関(WTO)加盟に象徴されるように、中国が国際社会の中に取り入ることができたのはなぜか。それは、「国際秩序に取り込めば、中国はルールに従うようになる」という新自由主義者のウソに人々が騙されたからである。

米国の政界では、民主党に中国のシンパが多い。クリントン財団と中国との癒着、今年の大統領選の民主党候補になったジョー・バイデンの息子と中国との蜜月関係などは有名である。バラク・オバマも大統領の任期を通じて中国には一貫して融和的で、それが中国の南シナ海軍事要塞化を許す結果となった。一方、共和党には中国シンパはほとんどいない。これが日本の保守勢力との大きな違いである。私は共和党の中心に宗教右派がいることが、この違いの背景にあると考えている。前回も述べた通り、中国、ソ連をはじめとする共産主義勢力は昔からハニー・トラップを好んで用いるが、性の戒律を守る宗教右派には効かない。これが性にだらしない日本の保守政治家との大きな違いである。(もちろん、日本の左翼政治家がもっと性にだらしないことは、昨今の不祥事から明らかである)

ただし、中国が国際社会に取り込まれていったのは、共和党のジョージ・W・ブッシュが大統領だった8年間である。なぜ、共和党政権下でそれが可能だったのか。その最大の理由は、2001年の9.11同時多発テロ以降、米国がイスラム過激派を最大の敵と考えるようになったからである。歴史的に、共和党には敵の敵を味方にして後々禍根を残す政治家が多い。ソ連に対抗するために中国と手を結んだニクソンと同様に、ブッシュもイスラム諸国に対抗するため中国と手を結んでしまった。当時、共和党の政治家の多くも、新自由主義者のウソに騙されていたようである。元米国下院議長のニュート・ギングリッチ(共和党)は、近著『Trump vs. China : Facing America's Greatest Threat (原題、日本語訳未出版)』のなかで、「私も他の人々と同様に、中国をWTOに加盟させることが大きな前進になると信じていた。それで中国共産党の指導者たちは法に基づいて行動することを学ぶと甘く考えたのだ」と告白している。

しかし、トランプ政権になって、米国は大きく方針転換をした。中国の国際的野心が明らかになった今、共和党の政治家の中国に対する見方は非常に厳しいものになっている。上述のギングリッチ氏も、中国に世界の覇権を握らせることの危険に警鐘を鳴らしており、今後米国は中国との対決姿勢を強めるべきと主張している。もともと親中的だった民主党の議員もそれに追随せざるをえないようで、昨年末に米下院はウイグル人権法案を超党派で可決した。ジョー・バイデンも、民主党大統領候補予備選の討論会では、中国の全体主義を批判するコメントをせざるをえなくなっている。とはいえ、米国の民主党支持者のなかに、新型コロナウイルス問題は中国よりもトランプの責任が大きいと答える人が6割もいる点は、重く見ておく必要があるだろう。米国の民主党支持者の左傾化はそこまで深刻な状況である。その背景に、チャイナマネーで汚染された米国大手メディアの影響がある。

米国の議員たちが反中姿勢を強める一方、日本の与党議員は新型コロナウイルス問題が起きるまで、一貫して親中的な姿勢であった。中国発のウイルスが世界に蔓延し始めている状況でも、ぎりぎりまで習近平を国賓として来日させようとしていたことは記憶に新しい。日本人の多くは、まだ新自由主義者のウソを信じているように見える。

なぜ、日本人はここまで騙され続けるのか。左翼と新自由主義者は正反対のように見えて、実はウィン・ウィンの関係にあることに多くの人が気づいていないことが最大の問題であると私は考える。日本の保守派は、しばしば朝日新聞、毎日新聞、中日新聞(東京新聞)などの左派メディアを敵視する。しかし、中国にとって最も好都合なメディアは、中国への投資を盛んに奨励してきた日本経済新聞だったということを見落としてはいないだろうか。中国にとって新自由主義者が好都合なのは、彼らが人権に全く関心がないからである。それゆえ、中国共産党が国内で人権弾圧を加速させても、金儲けの機会さえ与えれば、新自由主義者は中国に積極的に投資し続けた。

実は、左翼と新自由主義者は互いを批判しつつも、その価値観には重なる部分が多い。自分の利益だけの最大化を目指すという意味で、メタレベルの価値観を共有しているのである。最も注目すべきは、両者ともにエリート選民思想の持ち主であるという点である。いずれも、一般市民に対する強烈な見下しがある。だから、左翼は市民から政治的な意思決定権を奪おうとし、新自由主義者は労働者の賃金を限界まで減らそうとする。両者とも自分さえよければいいという利己的な価値観の持ち主なので、平気で人権を蹂躙する。つまり、前者は政治的な独裁、後者は経済的な独裁を目指しているという点において、互いに似通っているのである。

先進国の内部に限っても、左翼と新自由主義者にとって、互いの存在は自らの野望の実現に大きなメリットがある。新自由主義的政策で国内の貧富の差が拡大すると、人々の不満が溜まって社会主義革命が実現しやすくなる。だから、左翼にとって新自由主義者は非常にありがたい存在である。一方、新自由主義者も共産主義への嫌悪を自らの支持に転嫁して、人権無視の商売を正当化できる。さらに、グローバリストの新自由主義者は、たとえ自分が住んでいる国で革命が起きても、事前にそれを察知すれば、築いた富を海外に持ち逃げして豊かな生活が継続できる。むしろ、左翼同士は独裁的政治権力という同じものを求めるので、革命後権力の座を争うことになる。

冒頭で述べた通り、新型コロナウイルスが世界全体に急速に拡散したのは、新自由主義者が推進してきたグローバリズムで、国際的な人の移動が大幅に増えたからである。新型コロナウイルスが中国で流行している状況下においても、新自由主義者は目先の商売の利益に囚われて、中国からの入国制限に反対した。さらに、新自由主義者が進めたサプライチェーンの国際化が、マスク不足に代表されるように、必要な物資を調達できないことによる被害拡大につながっている。この事態を見れば、さすがに鈍感な日本人も新自由主義の抱える問題に気づいたのではないだろうか。

これを機に、中国共産党と新自由主義という二つの独裁思想と訣別できるとすれば、新型コロナ後の世界は明るい。そうした希望の未来を想像することで、今の自粛の苦しみを耐え抜く力にしていただければと思う。


執筆者:掛谷英紀

筑波大学システム情報系准教授。1993年東京大学理学部生物化学科卒業。1998年東京大学大学院工学系研究科先端学際工学専攻博士課程修了。博士(工学)。通信総合研究所(現・情報通信研究機構)研究員を経て、現職。専門はメディア工学。特定非営利活動法人言論責任保証協会代表理事。著書に『学問とは何か』(大学教育出版)、『学者のウソ』(ソフトバンク新書)、『「先見力」の授業』(かんき出版)など。


※ 寄稿文は執筆者の見解を示すものです。

※1 新自由主義 (編集者注釈)

新自由主義とは、市場(経済活動)への国家の介入を最小限にするべきと唱える思想で、小さな政府、民営化、規制緩和といった政策を目指す経済思想のこと。1980年代以降、世界主要国に広く採用された。グローバル化以降は、例えば日本では小泉純一郎元首相、竹中平蔵元大臣の政策に見られる。

新自由主義は「民営化」「規制緩和」など企業活動の自由を訴える。しかし、社会保障や公共インフラ、教育、安全保障など公共財も、市場依存させるとの同理論は企業の過度な利益追求を招き、特定の大型企業に権益が偏重する恐れがある。また、国家の役割や旧来の政策を批判するイデオロギーとして用いられることがある。

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