大紀元時報

中国海警法 海洋法秩序を揺るがしかねない=参議院調査会

2021年4月27日 16時28分
2020年1月、マニラ港に寄港する中国海警局船(STR/AFP via Getty Images)
2020年1月、マニラ港に寄港する中国海警局船(STR/AFP via Getty Images)

4月14日、参議院・国際経済外交に関する調査会が開かれ、海洋法に詳しい3人の専門家が参考人として出席。その中の1人で明海大学外国語学部教授でシンクタンク・日本国際問題研究所主任研究員の小谷哲男氏は、中国海洋法について安全保障の観点から分析を示した。

小谷氏は、今年の2月1日に施行された中国海警法から中国の海洋進出は拡大していくとみなし、「国際的な連携を深めて、国際海洋法条約の精神と逆らうような形で運用しないよう、圧力をかけていくことが必要だ」と語った。

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モデルは日本の海上保安庁

小谷氏は、中国海警法の背景について紹介した。

中国はかつて5つの海洋部局があり、この5つの部局は「五竜」と呼ばれていた。2013年にそのうちの4つが統合されて、中国海警局となった。当時の胡錦濤国家主席が「海洋強国を目指す」というスローガンを掲げたことが背景にあり、予算編成のうえで、統合が必要になったという。

実際に中国海警局の関係者から話を聞いた小谷氏によれば、海警局のモデルは日本の海上保安庁であるという。海上保安庁は、海洋法執行機関として日本の海における海洋管轄権をしっかりと行使しており、国際協力の枠組みも拡大している。このため、中国が海洋強国になるためにはこのような組織を持つべきだと考え、中国海警局を創設したと分析している。

中国海警局が設立された当初、船の改名はせず、制服や訓練も統一されない状態だった。組織上、中国海警局は国家海洋局の下に置かれたが、武器使用を認めることから公安部の指揮を受ける形だ。また、中国は国家海洋海警局を設立したが、省庁間協力という形で運用されており、その根拠法は存在しなかった。

中国海警法の目的は、海警局の根拠法を制定することだという。4つの部局を統合する形で法律をまとめるのが困難であるため、海上保安庁法がないまま海上保安庁が存在するような状態が7年以上続いていた。

小谷氏は「海警法が制定された一番大きなきっかけは、2018年に海警局が武警の下に移管されたことだ」と説明。中国海警局が武警に移管された理由は、武器を使う組織は中国共産党が指導すべきということだ。中央軍事委員会の下にある武警、その下に海警を入れたことで、今の習近平体制をさらに強化するという流れの中に位置づけられる。

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中国海警法がもたらす変化は長期的

小谷氏の分析によれば、海警は7年以上も法的根拠のないまま活動してきた。この中で、武器の使用も行われたことがある。周辺国との摩擦を引き起こすような事案もあった。このため、海警法ができても、急速に海警の行動が変わるとは見ていないという。

しかし、長期的に見れば、海警の管轄権があいまいで武器使用を辞さないと明示した海警法に基づいて、海洋進出の役割を拡大する可能性は否定できないという。小谷氏は、短期的に急激に海警の行動が変わるとは思っていないとした。実際、施行して2カ月以上たっているが、海警の行動が大きく変わったとの公の情報はないと指摘した。

中国海警法12条を見れば、国家主権の防護がその役割に含まれており、海警局は軍に近い存在となった。中国海警局は軍の一部という性格がさらに強まったと言わざるを得ないとした。

海警法において、武器の使用は「必要最小限そして合理的な水準で使用する」となっており、国際的な基準を大きく逸脱したところは見られない。しかし、中国海警法の一番の問題は、管轄海域、管轄水域の定義が非常に広く取られる可能性があることだという。

小谷氏は、海警法が武器の使用も含めて適用されれば、海洋法秩序を大きく揺るがしかねない事態を引き起こす可能性があるという。同法25条には「海洋臨時警戒」体制を中国が主張する管轄地域の中に設けられるとしている。一般的にも領海で警戒体制を限定的に制定することはあるが、中国はこれに加えて、21条で外国の軍艦および政府が「違法な行為」を行っている場合、強制措置を取るとの規定もある。場合によっては武力行使に当たる可能性がある非常に大きな問題と考えられるという。

小谷氏は、この措置が日本に対して使われた場合、自衛権の発動につながるような事態を引き起こす可能性もあると述べた。

2011年、尖閣諸島周辺を巡航する航空自衛隊機(Japan Pool/AFP/Getty Images)

海警が尖閣上陸なら 日本はどう対応すべきか

小谷氏は「日本は何よりも冷静かつ、国際法に基づく対応を考えていくべきである。中国海警法には多くの問題を含んでおり、これを過剰に評価して、こちら側が過剰に反応することは日本の国益に繋がらないだろう」と述べた。

中国海警法に基づいて、海警局が尖閣諸島に上陸することがあった場合、日本は海上保安庁法に基づいて対応できる。いっぽう、中国政府組織で、なおかつ軍の一部とみなす海警局が尖閣諸島に上陸する場合、組織的かつ計画的な力の行使だと十分みなせる。そのような場合、現場の判断に任せるのではなく政治がその責任においてきちんと武力攻撃事態だと認定できるものであれば認定する。そのように日本側もきちんとした対処を議論していくべき。

中国海警法は草案の段階では管轄水域、EEZや大陸棚などが明記されたが、最終的に文面から削除した。中国側の専門家によると、それは周辺諸国が懸念を示したからである。

小谷氏は「国際的な連携を深める」「周辺諸国が一丸となって懸念を伝える」ことを強調し、中国が海洋法をその精神と逆らうような形で運用しないよう、圧力をかけていく必要があると述べた。

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(蘇文悦)

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