東京・秋葉原にある大型スクリーンは、北朝鮮が9月15日に日本海に向けてミサイルを発射したことを説明する地図を表示した(Photo by KAZUHIRO NOGI/AFP via Getty Images)

北朝鮮、対米交渉のために挑発をエスカレート=専門家 

北朝鮮は最近、相次いでミサイルを発射するなど軍事的な挑発を強めている。北朝鮮の弾道ミサイル発射は3月以来、半年ぶりだ。アナリストは、北朝鮮はバイデン政権に圧力をかけ、将来の対米交渉が有利になるよう、挑発をエスカレートさせようとしていると語る。

米外交問題評議会の米韓政策プログラム局長スコット・スナイダー氏は、北朝鮮は、制裁されていない弾道ミサイルから、3月には国連の安保理決議に違反する短距離弾道ミサイルの発射へと段階的に実験を拡大していると指摘。バイデン政権の反応を探り、米国の出方次第でさらなる軍事的挑発を拡大し続ける可能性もあるという。

北朝鮮は先週、相次いでミサイル実験を行った。11、12日には、新たに開発した長距離巡航ミサイルを、15日には短距離弾道ミサイル2発を発射した。

長距離巡航ミサイルは1500キロ飛行し、北朝鮮の領海に着弾。北朝鮮国営通信社・朝鮮中央通信(KCNA)によると、短距離弾道ミサイルは800キロ飛行し、北朝鮮の東海岸沖に着弾した。

米民間研究機関・CNA研究所の北朝鮮専門家、ケン・ガウス局長は、長距離巡航ミサイル北朝鮮の領海内に着弾したのに対し、短距離弾道ミサイルは同国の領海外に着弾したことは、挑発のエスカレートだと指摘。米国の「注意を引くまで」事態をエスカレートさせるだろうと述べた。

軍事力の誇示

米ナショナル・インタレストの責任者、ハリー・カジアニス氏は、北朝鮮の新型長距離巡航ミサイルの試射は、金正恩体制が窮地に立たされているという印象を払拭し、軍事力を誇示するためだと述べた。同国は、国連などによる経済制裁や中共ウイルス(新型コロナ)、自然災害などで経済的困窮に陥っている。同氏は「より破壊力の増した兵器を発射し、バイデン政権の決意をためすだろう」と指摘する。

米国務省のネッド・プライス報道官は2日、北朝鮮の弾道ミサイル発射を非難するいっぽう、「意味ある対話を求める」とし、北朝鮮との外交を模索する方針を示した。

バイデン政権は4月30日、対北朝鮮政策の見直しを終えたと発表。詳細は明らかにしていないが、米国が朝鮮半島の完全非核化に向けて「実用的かつ調整されたアプローチ」を進めていくと述べた。

北朝鮮の弾道ミサイル発射を受け、米国のソン・キム北朝鮮担当特別代表は14日、東京・霞ヶ関で外務省の船越健裕アジア大洋州局長と韓国の魯圭悳(ノ・ギュドク)朝鮮半島平和交渉本部長と協議した。

船越健裕アジア大洋州局長は、「日米韓協力は北朝鮮の核・ミサイル開発に対処する上で重要性を増している」と強調。ソン・キム北朝鮮担当特別代表は、「北朝鮮が前提条件なしの対話の呼び掛けに積極的に応じることを期待する」と述べた。

米国と北朝鮮の核協議は2019年10月以降、停滞状態にあり、米国の対話には応じていない。

韓国がミサイルを発射

北朝鮮が弾道ミサイルを発射した数時間後、韓国は潜水艦発射弾道ミサイルの水中発射実験(SLBM)を実施したと発表。実験に立ち会った文在寅大統領は、韓国のミサイル戦力の増強は「北朝鮮の挑発に対する確実な抑止力になる」と述べた。

スナイダー氏は、韓国のSLBMの発射実験は事前に計画されたものであり、北朝鮮の挑発に対応したものではないと指摘。少なからず北朝鮮への警告のメッセージが含まれているものの、「文大統領は軍事開発の抑止力の役割を強調し、防衛以外の使用の可能性を示唆していないため、緊張が高まる前触れではない」と述べた。

金正恩総書記の妹の金与正朝鮮労働党副部長は15日、文大統領が「北朝鮮の挑発への抑止力」と述べたことに反発。今後の態度次第では「北南関係は完全破壊へと突き進むだろう」と警告した。

(翻訳・山中蓮夏)