インドと中国に挟まれたヒマラヤ山脈に位置するブータンは、豊かな仏教文化で知られており、村々には今でもその伝統が息づいている(AFP PHOTO/Roberto SCHMIDT (Photo credit should read ROBERTO SCHMIDT/AFP via Getty Images)

ブータン領で軍事インフラ整備する中国 専門家「狙いはインド」

インドの地政学専門家ブラマ・チェラニー氏が22日、日経アジアレビューに寄稿し、中国政府がブータンの領土に村を作り、中国人を移住させ、軍事インフラを整備していると明かした。

インドの元国家安全保障顧問でもある同氏は、ブータンの国土に村落や軍事施設などを作るという中国の戦略は、南シナ海に人工島を作り領有権の既成事実を作ることに似ていると指摘し、インドに対する軍事的優位性を高めるためだと分析した。

ブータンは日本の九州地方より少し広い小さな国であり、 ヒマラヤ山脈の最東端に位置している。今、国境問題に端を発した中印の緊張関係から影響を受けている。

2015年以降、中国はブータン領内に村落、道路、軍事施設などを次々と建設してきた。

同年10月、中国当局はチベット自治区の南部に新しい村を作ると発表した。チベット語でギャラプグ(Gyalaphug)と呼ばれる同地区は、1980年代に入ってから中国が領有権を主張しはじめた地域に入っているが、国際的にはブータン北部のルンツェ地区の一部だと認識されている。

2020年4月、チベット自治区の中国共産党書記である呉英傑氏はこの新しい村を訪問し、「明るい五つ星の赤い旗(中国の国旗)をこの地域に高く掲げる」と宣言した。国際社会はこれらの動きにほとんど関心を寄せていない。

ギャラプグ村には現在、道路、小規模な水力発電所、中国共産党の行政施設2カ所、通信基地、災害救援基地、検問所などの軍事施設5カ所などが設けられている。

米国営放送ラジオ・フリー・アジア(RFA)は建設が始まった当初、「これは中国とブータンとの間で締結された条約に明らかに違反している」と評した。

1998年12月、中国とブータンはこれまでの両国間で唯一の条約を結んだ。中国はブータンの主権と領土保全を認め、「国境の現状を変えるような一方的な行動をとらない」ことに合意した。

中国当局の公式発表や官製メディアの報道によると、2015年以降、中国はベユル(Beyul)とメンチュマ(Menchuma)の山間部に3つの村、7本の道路、5カ所以上の軍事施設を建設した。2018年10月から、これらの村に中国人が移住しはじめた。

ブータン領であるため、いずれも両国が結んだ条約に違反しているとされる。

今年7月、中国はブータン東部にある「サクテン野生生物保護区」の領有権を主張し出した。 面積は650平方キロメートルで、インドが実効支配し中国も領有権を主張するアルナチャルプラデシュ州と隣り合わせで、中印にとって敏感な地域だ。

米国のフォーリン・ポリシー誌は、ブータンは中国に妥協していると評した。ブータンの政治評論家テンジン・ラムサン(Tenzing Lamsang)氏は、「2つの巨国に板挟みされた小さな国」であるブータンの戦略は、「どちらとも不必要な対立を避ける」と述べた。

(翻訳編集・叶子静)