中国発表の臓器提供数 実際よりはるかに少ない=国際人権弁護士

2022/09/20
更新: 2022/09/24

中国臓器移植発展報告によれば、2015年から2020年までに2万9000超の臓器が提供され、パンデミック期間となる2020年にも5200の臓器が提供されたという。中国臓器乱用問題に長らく調査に取り組んできた国際人権弁護士デービッド・マタス氏は、この公式発表の数字は、実際の臓器提供数よりも「はるかに少ない」と指摘する。

特集:中国の臓器狩り

中国の公益時報6月14日付が臓器提供に関する同報告について報じた。記事は「中国の臓器提供と移植事業は大きな進歩を遂げた」と、中国人体臓器提供・臓器移植委員会の黄潔夫主任委員の発言を伝えた。

ドナー登録数も増加していると中国官製メディアは報じている。チャイナデイリーは臓器提供センターのデータを引用して、6月時点では450万人、9月は500万人を超えた。2015年には2万5000人程度だったという。

マタス氏は7月27日、ポーランド首都ワルシャワで開催された「欧州医学及び保健哲学会議(the European Conference on Philosophy of Medicine and Healthcare)」に登壇し、こうした中国側の報道内容に疑問を呈した。15年あまり前から中国臓器移植問題を調査するマタス氏は、公式発表の提供数は「実際の移植件数よりもはるかに少ない」と指摘した。

中国では「オンデマンド(需要に応じて)」移植臓器が提供され、日本や欧米などと比較して手術までの待機期間が極めて短い。マタス氏は元収監者の証言や移植病院の情報などから、多数の臓器の供給源は囚われた法輪功学習者やウイグル人など「無実の囚人」であると主張してきた。

ワルシャワの会議の中で、マタス氏は「(脳死判定を含む)臓器供給源では、中国で広く臓器移植がオンデマンドで行われていることを説明できない」と述べた。

会議に先立ち、マタス氏は26日、大紀元の取材に対し「(ドナー登録者数の)衛生部の統計は、現実を反映した形で作成されておらず、独立した検証もされていない」と指摘した。また、ドナー登録者数が増加しているとの公式発表について「捏造であり、目的は政治的パフォーマンス」だと述べた。

マタス氏とカナダ政府元アジア太平洋地域担当大臣で人権活動家の故デービット・キルガー氏は長年、中国政府側に国際的な独立組織による調査、検証を求めてきた。しかし、調査が受け入れられたことはない。

移植件数の多さを豪語する中国医師

先進国が臓器提供不足の課題を抱えるいっぽう、中国移植医たちは移植件数の多さを豪語している。

国家衛生健康委員会医政医管局の郭燕紅・副局長は、2018年7月中旬吉林省長春市で開催された「第9回全国臓器提供および移植フォーラム」において、近年国民による臓器提供の増加で、中国の臓器移植事業が大きく発展したとし、「2017年、中国における臓器提供件数と移植件数は世界2位となった」と述べた。

臓器移植数の最大都市の北京では、衛生部の移植認定を受けている病院だけでも20施設で、実際の移植件数は驚異的な数に上るとされている。北京大学人民病院の朱継業・泌尿器科主任は、「中国経済週刊」の取材に対し、同病院が「1年間に肝臓及び腎臓移植を4000件行ったこともある」と語っている。

中国ではドナー登録制度が2010年に試験的に開始した。2015年に本格整備されたと公式発表があるものの、臓器提供システムは未整備であったと、医療関係者側からの声が聞かれる。

2015年、国際NGO「法輪功迫害追跡調査国際組織(WOIPFG)」が中国の病院に行った電話調査では、次のような発言を記録している。

「臓器提供は準備段階であり、まだ提供は行われていない」(北京赤十字社の当番職員)」「臓器提供は中国人にとって不可能に近い。見つけるのもほぼ不可能だ。親族でもないのに、誰が提供したいと思うのか」(河南省人民病院の劉忠華・泌尿器科主任)

南京市は、2010年から臓器提供プログラムの試行を開始した10の主要都市のうちの一つ。2011年2月、中国メディアは、南京市は自発的な臓器提供が1件もなく、過去20年間で臓器や器官を提供した件数はわずか3人であると報じた。

強制的な臓器摘出は「相当な規模」

(左から)カナダ政府元閣僚で人権活動家のデービッド・キルガー氏、カナダの人権弁護士デービッド・マタス氏、中国専門アナリストのイーサン・ガットマン氏。2014年11月25日撮影 (Simon Gross/The Epoch Times)

中国の臓器移植問題は2006年、マタス氏とキルガー氏の調査報告書で公にされた。両氏とジャーナリストのイーサン・ガットマン氏により、中国の年間移植手術数は病床数や稼働率などから「最低でも年間6万~10万件」と推計されている。

2019年6月、英ロンドンで開廷された独立民衆法廷「中国民衆法廷」の最終裁定で「強制的な臓器摘出が、相当な規模で行われている」と結論付けられた。また、同法廷では主な犠牲者は法輪功学習者だとし、2015年から公的な臓器提供しかしていないとする中国政府側の主張を否定した。

法輪功(ファルンゴン)は法輪大法(ファルンダーファ)とも呼ばれ、「真・善・忍」の理念に基づく心身修養法である。中国の江沢民元国家主席は党員数約9000万人に迫るほどの国民各層で人気を博した法輪功を共産党政権への脅威と見なし、1999年7月20日に迫害を敢行した。

ガットマン氏らは、飲酒やタバコをせず、健康状態が良好であるため、臓器収奪の対象になったのではないかと推測する。

マタス氏は27日の国際会議で、「欧州議会、米国下院、チェコ上院、およびカナダ議会の外交委員会の国際人権グループは、中国にいる『良心の囚人』に対する決議を通過し、主な被害者である心身修養法・法輪功学習者に対する臓器摘出に関する継続的かつ信頼性の高い報告を受け、懸念を表明する」と述べた。

また、「2021年6月、国連の人権専門家11人が、中国で法輪功学習者、ウイグル人、チベット人、イスラム教徒、キリスト教徒に対する臓器狩りが行われていると報告し、深い懸念を表明した」と述べ、国際社会で中国の臓器移植に対する懸念が広がっていることを強調した。

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