備えなくして友好なし 中国との付き合い方 田母神俊雄元航空幕僚長インタビュー 1

2022/10/08
更新: 2022/10/09
コメント

国交正常化50周年の節目の今年、日本と中国の間では安全保障面で緊張状態が続く。元航空幕僚長で保守系評論家の田母神俊雄氏は大紀元のインタビューで、価値ある外交関係には抑止力ある軍事力の土台が必要だと語った。

ーー日中国交正常化50年、今後の日中関係はどうあるべきとお考えか。

中国は軍事力を行使して日本を圧迫している。周辺国を威圧している。戦っても無駄だと思わせるほどの軍事力強化を図っている。こうした中で、もし日本が中国と一戦交えるようなことがあっても勝てるような体制をとらなければならない。つまり自衛隊の軍事力強化だ。日本が戦える体制をとって、日本の政治指導者が戦っても国を守るという意思を示していくなかで、友好を追求すべきだと考える。

ーー日本が軍事力を備えた上で中国との友好を探ると。

つまり外交とは、軍事力を備えた上で成り立つということだ。これを理解している政治家も多くはないだろう。「話し合いで解決」というが話し合いで解決しない場合は軍事力の使用に至る。そこに至らないように、軍事のバランスが取れた状態で外交は進めていかなければならないだろう。

ーー故安倍晋三元総理が訴えた「台湾有事は日本有事」という言葉が米国、中国、台湾含め国際的にも広まった。日本では有事に対して国民の認知は高まったように見受けられる。

日本国民の多くは台湾有事となった時に、日本も危機的な状況になると理解している人が多いだろう。台湾有事は日本有事という安倍総理の認識は正しいし、国民もそれを理解していると思う。

もし中国が台湾侵攻となると、沖縄などにいる自衛隊は排除したいと考えるだろう。自衛隊戦闘機が飛行することを、中国は想定するだろう。中国の戦闘機が日本の空域にどんどん入ってくることが考えられる。必然的に有事になるという状況が生まれる。

ーー日中国交正常化50年、すなわち中華民国、台湾断交50年。今後の日台関係をどうみるか。

台湾との関係は強化していくべきだ。TSMC(台湾積体電路製造)を代表とする台湾の半導体事業は世界的なシェアを誇る。産業、経済は結びつきを強化していくべきだ。

日本は中国にODA(政府開発援助)で投資を続けてきた。1989年六四天安門事件の時も、欧米が手を引いた時、日本だけが「世界から孤立させないように」と手を差し伸べてしまった。「国際社会に取り込めば、中国はやがて開かれた社会と豊かな国になるだろう」と期待してきた。しかし、今日の中国を見ても(自由民主主義に移行するような)変化の兆しは見えない。このため、当時の融和的な判断は間違っていたと考える。

その判断には政治家やマスメディアの報道もあるだろう。「中国は人口が多いから、よいビジネスができるだろう。モノが売れるだろう」という情報に取り込まれていった。しかし、中国は一向に開かれた社会にはならない。香港は典型的な事例だ。一気に体制変化を強いられるようなことが起きた。

このため、日本は軍事力をさらに強化してしっかりと構えていなければならないだろう。中国に武力で脅され、服従させられてしまうようなことにならないように。そのうえで、日中関係を維持していくべきだ。

しかし、中国は軍事力を拡大したとしても、戦争で勝ったことがない国だ。台湾に侵攻したとしても勝てるかどうかは不安を抱いていると思う。中国は「戦力を10倍にすれば戦わずとも相手は屈する」と言っている。確かに統計で見れば台湾との軍事力の差は10倍あるとされる。このため、中国は「そろそろ台湾は屈服するだろう」とは考えているだろう。

戦争を仕掛けて台湾を落とす、ということに対しては相当慎重になっていると思う。勝てるかどうかは不安だろう。

ーー先日、バイデン米大統領は台湾有事の際に米軍を派遣するのか、という質問に対して「そうだ」と明言した。この発言の影響は。

中国による台湾侵攻を躊躇させる、抑止力になる発言だ。ウクライナには米軍は参戦しないと明言したら、ロシアは侵攻した。しかし、台湾有事の関与を明言するということは、中国に対して「台湾に手を出すな」という米国のサインだと思う。

ーー米国がウクライナよりも台湾を重視する理由は。

台湾の半導体事業に米国も依存していることが理由だろう。台湾が失われると米国益にも影響を及ぼす。台湾がウクライナのような状態なってしまわないようにしたい。ウクライナが失われても米国の影響は限定的だ。米国は自国で食糧も賄える。

いっぽう米国はウクライナ侵攻によりロシアが弱体化、疲弊してほしいというのは常に考えているだろう。

ーー中露艦艇の日本周辺「共同パトロール」やガス田開発推進など、中露の連携が深まっている。日本の外交、安全保障の影響は。

外交では、敵対国家が複数で肩を組んで向かってくるという状況を阻止しなければならない。

米国は常にそうだ。分断統治(ディバイド・アンド・ルール)である。アジアで言えば、例えば日本、台湾、韓国が団結して米国に立ち向かうというような状況は絶対に許さないということだ。国益を守る外交とはそういうことだ。

この点から言えば、日本としては中国とロシアが共同して日本に向かってくるような状況は非常にまずい。

今回のウクライナ侵攻でも、ロシアに対する批判は日本が急先鋒に立たなくてもいいだろう。ロシア批判の是非で日米同盟が揺らぐということは考えにくい。

何よりロシアは日本の隣国だ。日露関係が悪化すれば、北海道の漁業従事者らはとても困るだろう。サハリンなどへの投資も無駄になるかもしれない。

中国は明確な敵だ。この場合においてロシアにも明白に敵対的位置にいるのは好ましくない。

ーーなんらかの段階で(日露)関係の修正を図ると。

西側諸国と協調して批判しなければならない立場にあるとしても、日本の国益の観点からうまく立ち回らなければならないと思う。

(聞き手・佐渡道世)

日本の安全保障、外交、中国の浸透工作について執筆しています。共著書に『中国臓器移植の真実』(集広舎)。