民族同化、越境弾圧、習氏個人崇拝…中国の人権・政治状況を非難=米報告書

2022/11/26
更新: 2022/11/26
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米議会と政府の合同委員会は16日、中国の人権・政治状況に関する2022年年次報告書を発表した。中国政府による人権弾圧や法の支配に関する政治状況を非難した、行政機関などに中国当局者への制裁強化などを提言している。

「中国問題に関する米連邦議会・行政府委員会(CECC)」の報告書には、表現の自由や信仰の自由、少数民族への非人道的な扱い、中国共産党越境弾圧など中国をめぐる人権状況や政治状況について包括的に記述されている。

CECCの共同委員長を務めるジム・マクガバン氏は報告書について「中国政府が基本的人権を制限し、多数派を社会的に支配するために権威主義的統治ツールを使用し続けている」と声明で述べた。

また共同委員長のジェフ・マークリー氏は、「迫害から逃れたり、越境弾圧に直面したり、強要に抵抗したり、文化の破壊を恐れたりした人々を保護するために、米政府全体で働き続けなければならないという米両党及び政府全体のコンセンサスを反映している」と述べた。

民族同化推進、「宗教の中国化」加速

CECCは報告書の中で、中国における少数民族への扱いや信仰の自由を取り巻く状況が数十年間悪化し続けているとし、「偉大なる祖国、中国共産党、中国の特色ある社会主義」への国内の忠誠を強化するため、文化や信仰より党への忠誠を信仰に優先させる「中国化」を推し進めていると指摘した。

習氏は党大会開幕式で提示した政治報告で、民族政策について「中華民族共同体意識の強化を主軸とする。民族の団結・進歩に向けた事業を全面的に推進する」と強調した。

昨年12月には、「全国宗教工作会議」が開催され、習氏は会議で「わが国の『宗教の中国化』の方向を堅持する」と演説し、当局者らに宗教活動を党の方針に従わせることを強化するよう要求した。

報告書によると、中国当局の同化政策として、中国共産党の歴史を肯定的に捉える形で詳述した教科書や愛国映画の推進、標準中国語の普及などが実施されている。

恣意的な拘禁、性的暴行、臓器収奪…非人道的行為の数々

CECCは、報告書の中で、中国政府による非人道的行為について中国国内における複数の事例を挙げている。

例えば、ウイグル人への人権侵害が懸念されている中国・新疆ウイグル自治区をめぐる問題を挙げた。南部カシュガル地区コナシェヘル県における恣意的な拘禁が多数報告されており、また拘禁されたウイグル人が不当に長期間の禁固刑が下されているという。

また強制不妊手術や既婚女性の人身売買、性的暴行の増加など、女性に対する中国当局の迫害が広範囲に及んでいるとし、女性の人権に関する問題が際立っていると指摘した。

報告書では、近年問題として取り上げられている強制臓器摘出にも触れ、「法輪功学習者などの“良心の囚人”から臓器を摘出して処刑したという多くの証言を確認した」と記述している。

中国共産党の海外における凶手

中国政府は、長年にわたり海外にいる体制批判者らに対する越境弾圧を続けているとした。

報告書によると、中国の情報・治安機関のメンバーや協力者らがインターネット上での攻撃や対面での嫌がらせ、海外にいるターゲットの中国にいる親族への脅迫、海外在住の中国人を超法規的かつ強制的な手段によって帰国させようとする「キツネ狩り作戦」などが行われている。

今年6月、国際NGO団体フリーダムハウスは、2014年以降で中国当局による「物理的な越境弾圧」(拘束、暴行、脅迫、不法な国外追放、移送、暗殺の疑いなど)が229件報告されていると発表した。

また報告書では、中国政府は中国の人権状況や中国当局が敏感とみなす問題に対する批判を封じ込めるために、外国の政府や企業に対して経済的な強制力を行使したと指摘した。

昨年、リトアニア首都ビリニュスに台湾の事実上の大使館「台湾代表処」が開設されたことで同国からの輸入を事実上差し止めた。また、新疆産品の販売を停止したとして米小売り大手ウォルマート系の会員制スーパー「サムズクラブ」の会員からの退会が呼び掛けられた。

習近平氏への個人崇拝の動き加速

報告書は政治状況について、第20回党大会の1年前から、習近平国家主席への個人崇拝が強まり、監視が拡大され、イデオロギーの浸透が強まっていると指摘した。

10月の第20回党大会での3期目続投のため、中国共産党は政治的統制として、自身の権力一元化を強化させるとともに習氏のカルト的な人格形成を市民に促進したとしている。

イデオロギー統制の対象について「いわゆる愛国教育を一般的な市民に強いているほか、弾圧を受ける少数民族や宗教信仰者もターゲットになっている」とした。

党大会前、国営テレビが習氏を称賛する内容の特別番組を放送したり、業績を讃える展示会も開かれるなど習氏への個人崇拝が加速していた。

また報告書は、中国政府による市民団体の動員は、毛沢東時代に行われたスパイ活動のようなものであり、大手テクノロジー企業への弾圧は、経済成長よりも党の統制を優先させるものであると指摘し、共産党の統制強化に懸念を示した。

「抑圧者への制裁を強化し、被迫害者を保護すべし」

報告書は、法輪功学習者やウイグル人、チベット人、香港人、中国系米国人などに対する中国共産党の中国国内弾圧と越境弾圧に対抗するために、FBIと国務省の制裁権限を強化するなどいくつかの提言を強調した。

新疆ウイグル自治区で行われている強制不妊手術や強制中絶に関与している中国当局者や体制批判者の起訴及び拘禁に関与した香港の検察官や司法官に対する現行の制裁を強化することを提言した。また、中国当局による迫害から逃れた人々を保護するために、香港人やウイグル人の移民ルートを確立することを求めた。

中国政府の大規模な監視能力を支援したり、中国における人権侵害を助長したりする中国企業が米国市場に参入するための条件を整えるよう求めている。さらに、ウイグル人やチベット人、モンゴル人、その他の少数民族や宗教団体の文化的・言語的保護を支援するための補助金制度の拡大を推奨している。

マクガバン氏は「我々は国境を越えた弾圧に引き続き関心を寄せており、我々はまた、ウイグル人や他のトルコ系イスラム教徒、チベット人、香港人に対する厳しい弾圧の記録を続ける」と述べた。