中国のICBM核弾頭数は400発以上 米国より多く 戦略軍司令官が議会に報告

2022/12/19
更新: 2022/12/19

中国は長距離ミサイル搭載可能な核弾頭を米国よりも多く保有している可能性が高い。公開された米戦略司令部による議会への機密報告で明らかになった。

この報告は2022年度国防権限法(NDAA)に基づく。同法は、大陸間弾道ミサイル(ICBM)の数、ICBM用の発射機、ICBMに搭載する核弾頭の数のうち、中国がいずれか1つでも米国を上回った場合、戦略司令部が議会に報告することを義務付けている。

米国の核兵器管理を担当するチャールズ・リチャード戦略軍司令官は5日、核兵器の配備に関する3項目のうち少なくとも1項目において、中国軍が米国を上回ったと議会に報告している。

上院軍事委員会の共和党トップのジェームズ・インホフ上院議員がツイッターで報告を公開した。インホフ氏は書簡に添えたツイートで「繰り返し述べているが、中国の軍事力の増大に関して氷山の一角を見たに過ぎない」と強調した。

そのうえで「バイデン政権は、中国共産党が世界秩序と我々の生活様式にもたらす脅威について米国民に対しオープンで正直であるべきだ」と述べ、国民に情報を開示する必要性を訴えた。

米国を脅かす中国の核弾頭数

以前の米国防総省の報告から分析すれば、中国が前述の3項目のうち上回った1項目は核弾頭の数と推計される。

先月29日に公表した中国の軍事・安全保障分野の動向に関する年次報告書の推計では、ICBMは300基、ICBM用の地下格納庫は300カ所、運用可能な核弾頭数は400発を超えた。

一方、米国は11年に発効した米ロの核軍縮枠組みである新戦略兵器削減条約(新START)により核弾頭の配備数を1550発以内に制限されており、核弾頭1発を搭載可能なICBM「ミニットマン3」は400基保有している。

そのため、中国が米国のICBMが装備する核弾頭400発を上回ったため、米戦略司令部の機密報告は議会に提出されたと考えられる。

ICBMの数は中国が下回っているが、核弾頭の数で米国を上回ったとする理由は、中国のICBMの多くが複数独立標的型再突入機(MIRV)であり、複数の弾頭を装備しそれぞれの弾頭が異なる目標に攻撃ができるためだ。

米国防総省の報告書によれば、弾頭1発を搭載可能な米国のミニットマンミサイルに対し、中国のICBMのほとんどはMIRV化している。そして、中国は「東風41(DF-41)」を収める地下式格納施設を新たに数百基建設中であるとされる。

一部のアナリストは、東風41には10個の核弾頭が搭載されていると考えている。また米学術誌「原子力科学者会報」は、東風41は3個の核弾頭と敵の防御を突破するためのいくつかの追加弾頭を搭載している可能性が高いという研究報告を発表している。

これについて、米中経済安全保障検討委員会(USCC)が公表した2021年の報告書では、中国のMIRVの急速な拡大により、米国本土を攻撃できる核弾頭の数が増加していると明らかにした。

報告書は「中国のICBMミサイルのサイロ、ICBM旅団に割り当てられた発射台およびMIRV技術の向上により、米国を脅かすICBMに搭載できる弾頭の数は拡大している」とした。

懸念される不透明な核軍拡

中国は近年、核戦力近代化を急ピッチで進めている。米国防総省は先月公表した報告書の中で、中国が保有する核弾頭の数は現時点でおよそ400発だが、30年までに少なくとも1000発、35年までに保有数がおよそ1500発に上るとの見通しを示した。

これを受け、中国外務省の趙立堅報道官は30日、記者会見で「中国は核の力を安全保障上必要最小限にとどめ、いかなる形の軍拡競争にも加わったことはない」と強く反発した。

米中両国は軍事衝突をはじめとする不測の事態を回避する必要性を強調し、意思疎通を継続する方針で一致しているが、核兵器をめぐる問題は平行線をたどっている。アンガス・キング上院議員は、中国共産党は核不拡散に無関心だと非難している。

中国の軍事には不透明感が強く、米欧のアナリストが中国の核兵器の規模や技術を測定することは依然難しい。例えば、中国共産党は核ミサイルと通常ミサイルを同じ格納庫に収めているため、核ミサイルか通常ミサイルのどちらがサイロに格納されているのか常時確認することは困難だ。

USCCの2021年版報告書によると、中国はICBMの発射台数を一部の部隊で倍増させており、40あるミサイル旅団のうち半数が核武装しているとみられる。

米保守系シンクタンク、ヘリテージ財団の政策アナリストのパティ・ジェーン・ゲラー氏は、中国共産党の核増強とプーチン政権下のロシアの関係強化は、米国の安全保障にとって前例ない程度に脅威となっていると指摘し、米国はほぼ同レベルの核大国を同時に抑止しなければならず、二正面作戦を迫られていると述べた。

エポックタイムズ特派員。専門は安全保障と軍事。ノリッジ大学で軍事史の修士号を取得。
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