安倍元首相暗殺、真相究明に圧力 いまだ消えない「スナイパー説」、割れた議員バッジの謎

2023/03/21
更新: 2023/06/26

安倍元首相の暗殺から半年以上が経った。しかし、事件にまつわる数々の疑惑はいまだ晴れない。長尾敬前衆議院議員はエポックタイムズの取材に対し、「(捜査活動に)圧力が加わっていると見た方が自然だ」と明かした。真相究明を試す議員には圧力がかかり、国民の関心事であるにもかかわらずワイドショーは一向に取り上げない。

複数回に及ぶ現地調査を行なった長尾氏は、犯人特定が拙速ではないかと疑問を呈した。山上容疑者以外に犯人はいるという仮説を完全に否定できない以上、裁判で真相が究明されることを望むと語った。

ーー昨年7月8日に安倍元首相が銃撃され、亡くなった。捜査は続いているが、事件に関する不可思議な点はいまだ残っている。

奈良県立医科大学が発表した傷の状態と、司法解剖による結果の相違が真相究明で一番のポイントだと思う。奈良県立医科大学の発表では、弾が右頸部から射入して心臓にまで達する傷があり、それが致命傷になったと言っている。いっぽう、司法解剖によると、左肩から入り込んだ弾が、右左の鎖骨下の動脈を傷つけて、その出血が死因になっている。真実は一つだ。

まず、どちらが正しいのかが全く究明されていない。左から撃つということになれば、山上が立っていた側だ。しかし右から撃つということになれば、山上はその方向から撃つことはできないので、やはり真相究明は全くされていない。大手週刊誌も一時期は特集を組んでいたが、最終的に真相にたどり着くことはなかった。

安倍元首相は日本の憲政史上最も長く総理大臣を務めた方だ。その暗殺事件の真相究明に対し、日本のメディア全く追及をしていないのは不思議でならない。

ーー銃撃された方向がもし違っていた場合、どのような可能性が考えられるか。

左側から撃たれたのであれば、山上の側だ。しかし右側から撃たれたとすると話が違ってくる。

私も現場には4回行った。事件現場は私の地元と山を隔てて隣町なので、経済圏・文化圏は同じであり、土地勘もある。現場に立つと、周辺には多くのビルが立ち並んでいることがわかる。向かって右側のビルの窓は開かないが、向かって左側のビルの窓は開く。開いている写真も私が撮ってきた。仮に、そこにスナイパーなる人たちがいてもおかしくはない。

捜査に際しては、あらゆる仮説を精査し、スナイパーのような者がいたのではないかという仮説も立てていたと私は信じたい。だが、いきなり犯人は山上容疑者だということを決めつけている。あれだけの大きな事件で、おそらく容疑者と思われる人物が複数人浮上し、最終的に真犯人は山上だということであれば私も納得はいく。

しかし、事件の直後から山上以外に犯人はいないと発表された。ちょっと待てと思った。右側から撃たれている可能性があるならば、ビルの上から窓を開けて撃てる。これは素人が見てもわかることし、そのような仮説も成り立つ。こうした議論が全く行われていない。テレビのワイドショーにとって格好のネタのはずだ。視聴率も取れるだろう。報道が行われていないのは非常に不自然だ。

ーー安倍元首相の暗殺事件の捜査に政治的な力は働いているのか。

私は圧力が加わっていると見たほうが自然だと考える。実際に、青山繁晴参議院議員が警察官僚から、「先生のためにならないよ」と言われた。また、とある警察OBが安倍元首相暗殺事件の真相究明についてネット番組でコメントをしたら、OBの先輩から「この件については、あまり深く突っ込むと自分のためにならないよ」と言われたこともある。

少なくともそのような事例があるならば、一般論として、上層部からこの問題については「動くな」と言われているから誰も食いつかない、マスコミも食いつかない、と思うほうが、残念ながら自然になってしまう。

ーー総理大臣経験者の暗殺はテロ行為に等しい。その捜査に圧力をかける理由とは何か。

たぶん、死因が特定されると、犯人が分かってしまうからだと思う。そして、それを隠したい人たちがいるのだろうなと思う。多くの人々もこのように思うだろう。

私は、事件が起きた瞬間を境として、事件発生前にいろいろなシナリオがあったのかもしれないが、どちからと言えば事件が起きた後のことばかり考えている。仮に事件発生前にいろいろなシナリオがあったのであれば、かなり用意周到だ。だけど私は、事件が起きた瞬間、それ以降にこの事件の真相が分からないように仕向けていく力があるような気がする。

ーーすでに半年以上経つが、事件の全容が明らかになることはあるか。

裁判で明らかになることを祈るしかない。裁判では山上が被告人となるが、本当に山上が犯人なのかどうかを証明する場でもある。そして、山上が自作で作った銃が、果たして人を殺めるだけの威力があるのかどうかを検証する。

週刊誌にも出ていたが、安倍元首相が当時つけていた議員バッジが6つに割れていた。私はその議員バッジの存在を昨年から既に知っていた。それがどこにあるかということも知っていた。

議員バッジはものすごく硬い。どのような威力のピストルで、どれだけ硬い弾で、どれだけのスピードでぶつかっていけば、バッジが6つに割れるのか。私は実験しなければならないと思う。

個人的な興味となるが、割れたバッジの断面が本当にピストルの弾によって割れたものなのか、または違う形で割れたものなのかについて、私は知りたい。奥歯に物の挟まった言い方にはなるが、6つに割れた議員バッジが存在しているという事実が必要だったのだろう。

議員バッジ1つを挙げても、パーンと弾かれたものをよく6つも集められたものだ。いっぽう、体の中に入った弾は見つかっていない。本当に弾によって6つに割れたのかと考えると、そこから先には色々な仮説が成り立ってしまうため、一つひとつ消していかねばならない。

ーー安倍元首相が暗殺された地点は保存されず、アスファルトが剥がされ、記念碑も建てられていない。

事件現場は当初から都市開発で道路ができることが決まっていた。しかし事件が起きた以上、一旦工事を中止して、他の選択肢を模索することもできたのではないか。例えば、銃撃された場所に慰霊碑を建てて慰霊の場として残すか、あるいは今まで通り工事を進めるのかについて議論を交わすこともできたはず。しかし奈良市長には立ち止まるという考えを持ってないようだ。

事件現場に花壇や慰霊碑をおこし、二度このようなテロを起こしてはならないことを世に伝え、そして魂を慰める。これくらいのことはできるのではないかと思う。奈良市長にその気持ちがないのは極めて残念でならない。

ーー再び安倍元首相のような政治家が誕生することはあるか。日本の政治の行く末はどうなるのか。

安倍晋三回顧録』を何度も読み返しているが、リーダーは育てるものではなく、出てくるものだと考えている。確かに内閣総理大臣のレベルになると、なりたい意欲を持っていてもなれるかどうかわからない。そのポストにたどり着くまでに巡り合ったご縁の合致の仕方、タイミングなど全てが関係している。そのようなリーダーは時代が呼ぶものだと思っている。

安倍元首相が亡くなったいま、残された私たちは自分の血肉をエネルギーに、いただいた種をしっかりと芽吹かせ、花を咲かせ実をつけなければならない。そうする中で、安倍元首相のような性質の政治家を、きっと時代が呼んでくれるだろうと期待している。

政治・安全保障担当記者。金融機関勤務を経て、エポックタイムズに入社。社会問題や国際報道も取り扱う。閣僚経験者や国会議員、学者、軍人、インフルエンサー、民主活動家などに対する取材経験を持つ。
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