自民党秋本議員スキャンダル…国民に損をさせる、再エネ利権と汚職

2023/08/13
更新: 2023/08/11

自民党の再エネ議連事務局長の秋本真利衆議院議員が、収賄の疑いで、東京地検特捜部の捜査を受けている。彼は在職中の外務政務官を辞任し、自民党も離党した。

彼は以前から、再エネ問題で業界に肩入れする行動が異様で、事業者からの金の動きも露骨に見えた。彼が再エネと政治を、自分の金儲けのために利用していたとすれば、非常に恥ずかしい。問題を指摘しよう。

秋本真利衆議院議員

意外と知られていない数字を示してみる。日本の電力会社の売上高はどの程度か。10電力会社とJパワー、そして新エネ最大手のイーレックスの各グループの売り上げを合計すると、22年度は約19兆4000億円になる。

国は再エネに補助金を提供している。2012年からのF I T(固定価格買取制度)、22年からのF I P(補助金提供制度)による再エネの補助金の総額は22年度の予想で4兆2200億円になる。これは電気料金に上乗せされる。電力の市場規模に比べて、その補助金の総額はあまりにも大きい。これは一般にあまり知られていない。福島第一原発事故の後で、原発の代替などという誤った考えから再エネが過剰に優遇された。

電力市場の規模に比べた補助金の大きさを考えると、電力ビジネスを一生懸命行うよりも、その補助金を操作して、自分の懐に入れようという誘因が働くだろう。再エネ利権が存在している。それに絡んだのが秋本議員だ。

入札実施後に政治介入でルールが変わった

秋本議員の疑惑は、洋上風力発電の入札ルール変更に干渉したというものだ。再エネの中で、風力発電はコストで競争力がある。経産省は、風力を増やして再エネ価格を下げようとしている。陸上風力は、日本で適地が限られており、しかも大部分が開発されてしまった。そのために、洋上風力の開発に期待が集まった。

洋上風力は海面の利用、漁業権などで、さまざまな権利関係者、また省庁間の調整が必要だ。経産省はそれを行なった。2020年から合計4500万kW、総事業費予想15兆円分の海面が開放され、入札で事業者を集めることになった。

2021年12月に最初の3件、秋田沖2つ、千葉沖の公募入札の結果が発表された。それが予想外の結果になった。事前の予想では早くから参入を表明していたレノバや日本風力開発などが落札するとみられていた。ところが、結果は三菱商事グループが11.99円~16.49円/kWhと他社に5円以上の差をつけ、3件すべてを落札した。外国製の安い機材の使用などの工夫をした。

上場していたレノバの株価は2018年には200円台だった。洋上風力が行われる動きがあって2020年には6000円台に上昇した。ところが、この入札結果を受けて暴落し現在は1300円台になっている。

ここに介入したのが自民党再エネ議連だ。経産省の担当者や業者を呼んで入札について聞き取りを行った。関係者によると、その中心になったのが秋本議員だった。

経産省は21年5月に入札ルールをいきなり変更した。同年6月に行われる予定だった第2回の入札は2023年6月に延期され、審査方法も変更された。新しい審査方法では、評点で価格の割合を下げ、事業建設の迅速性などの評価を高くした。これは三菱商事に不利になる。第2回の審査は今年6月30日が応募締め切りだった。結果はまだ公表されていない。ここまでが制度変更の経緯だ。

変更を主導した秋本議員に金が流れる

そこで秋本議員がこの制度変更にどのように関わったかが問題になる。秋本議員は第4次安倍政権(2017年11月から2018年10月まで)で国土交通政務官だった。これは洋上風力に関わる部署だ。今年2月の議会答弁で、秋本議員は国会で「安倍首相に洋上風力の制度を作るために、国交省に政務官として行かせてもらった」と発言した。

そして役職についていなかった21年12月から、自民党再エネ議連の制度見直しの議論を仕切ったことに加え、22年初頭に国会で複数回、洋上風力をめぐる質疑を行った。

立憲民主党は秋本議員の政治資金を調査し、今年(23年)2月に源馬健太郎衆議院議員が、国会で外務政務官だった秋本氏に質問をしている。秋本氏はレノバ社の株を売買している。その時期と売買の数量、利益を出したかどうかは明確にしていないが、国交政務官の就任の前に買い、退任後に売ったと認めた。ただし秋本議員は在職中の株売買ではないので違法ではないとしている。この間にレノバの株価は上昇した。原因は洋上風力の規制緩和であり、その制度変更に秋本議員は関わっていた。事業者に便宜を図り、株で利益を出したと指摘されても仕方がないだろう。

またこの質疑で、秋本議員は風力発電事業者5社から、21年までの3年間で1800万円の政治献金を受け取っていたことを認めた。

秋本議員は「制度改正は経産省の所管で、私は一議員であるから職務権限はない。政治献金は問題なく処理している」と主張した。しかし、風力発電事業者に有利な活動をしていた以上、批判を当然受けるだろう。

さらに報道によると、時期は不明だが、秋本議員は、日本風力開発から競走馬を購入するためとして3000万円の融資を受けたという。これは実際に馬を買ったのか、馬の売買をめぐる政治資金ロンダリングかは不明だ。政治資金報告書には掲載されていないようだ。

秋本氏は職務に関わる事業者から献金や利益供与を受けている。この捜査の進展を注視したい。

自民党の再エネ推進は利権がらみか

私は、この洋上風力の入札制度の突如の変更を、当時からおかしいと思っていた。再エネ賦課金の膨張が問題になる中で、価格の安さが入札の中心にするという経産省の当初の考えのどこがいけないのか。また露骨な秋本議員の介入があると聞いていた。

これは秋本議員の個人的な疑惑にはとどまらない。自民党再エネ議連、同党全体の問題になる。また秋本議員は、河野太郎デジタル担当大臣との親しさを常に強調していた。また見直しには議連会長の柴山昌彦、メンバーの河野太郎、小泉進次郎の各衆議院議員も熱心だったという。こうした政治家は秋本議員と自らの行動に説明責任がある。

電力料金が上昇しているが、その一因は再エネへの補助金だ。1世帯あたり、月2000円近く支払い、電力料金の1割以上になっている。過剰な再エネ優遇を自民党が続ける理由に「利権」があるとしたら、国民感情的にも、倫理的にも許されない。

この秋本議員をはじめ、再エネを騒ぐ人たちは、なぜか「うさんくさい」。秋本議員は「反原発・再エネ重視」と自らの政治姿勢をPRし、電力会社を、「利権」「時代遅れ」など口汚く罵っていた。また反政府色の強い反原発派とも交わっていた。ところが、自らが金にまみれていた。

私は再エネを応援してきた。再エネには二酸化炭素を出さない、国産エネルギーであるなど、多くのメリットがある。それを適切な形で増やすべきであったが、大量に無計画に補助金で増やしたために、エネルギーシステムが混乱している。

秋本議員のような、再エネを金で汚しおかしな制度づくりを進めた人を、これを契機に排除したい。健全な再エネ発展のための議論を始め、制度を再構築してほしい。

ジャーナリスト。経済・環境問題を中心に執筆活動を行う。時事通信社、経済誌副編集長、アゴラ研究所のGEPR(グローバル・エナジー・ポリシー・リサーチ)の運営などを経て、ジャーナリストとして活動。経済情報サイト「with ENERGY」を運営。著書に「京都議定書は実現できるのか」(平凡社)、「気分のエコでは救えない」(日刊工業新聞社)など。記者と雑誌経営の経験から、企業の広報・コンサルティング、講演活動も行う。
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