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中国など4か国を対象に不動産取得を制限する法案を下院で可決=テキサス州 

2025/05/10
更新: 2025/05/10

米テキサス州下院は5月8日、中国・イラン・北朝鮮・ロシアの国民が州内で不動産を購入することを禁止する「上院法案第17号(Senate Bill 17)修正案」を、賛成85票、反対60票の賛成多数で可決した。

法案は、アメリカの土地と天然資源を敵対国の手から守ることを目的とするものとして、共和党議員を中心に支持を集めた。一方で、民主党議員やアジア系アメリカ人からは、差別や偏見を助長するおそれがあるとして反対の声が上がっている。

法案を提出した共和党のコール・ヘフナー下院議員は、「我々に危害を加えようとする抑圧的な政権に、我々の経済やサプライチェーン、そして日常生活を支配され、好き勝手に操られるような事態を決して許してはならない」と述べ、国家安全保障の観点から必要な措置であると強調した。

禁止措置は、ギャバード国家情報長官による2025年の脅威評価報告書で名指しされた敵対国(中国、イラン、北朝鮮、ロシア)を対象としている。

法案では、これらの国の政府機関、企業、そして国民が、テキサス州内の土地や建物などの不動産を取得することを禁じている。また、州司法長官の事務所に対し、敵対国による不動産保有の状況を調査・報告するよう義務づけており、裁判所の命令に基づき、民事手続きを通じて資産を没収することも可能になる。

法案には、学生ビザや就労ビザ、庇護制度などを通じて合法的に入国した非市民については例外を認める修正が加えられた。さらに、州知事には、必要に応じて新たな国を対象国に指定できる権限も付与される。

議論の中心は主に中国をめぐって展開された。幼少期に中国から渡米した民主党のジーン・ウー下院議員は、法案に強く反対。「この法案は、アジア系アメリカ人に対する人種的な攻撃の始まりとなりかねない。多くの人々は中国人と台湾人、日本人、ベトナム人の違いを見分けることができず、差別や憎悪犯罪が起きれば、アジア人全体が標的にされる」と訴えた。

これに対し、法案の支持者からは、「中国共産党政権を明確に対象とすることで、アメリカに住む中国系住民が、恐怖や抑圧から解放され、より自由に暮らせるようになる」といった意見もあがっている。

台湾出身の共和党議員、アンジー・チェン・バトン氏も法案に賛成の立場を示した。

「私自身、人種差別を経験してきたので、アジア系コミュニティの不安は理解している」としながらも、「国家安全保障のために必要な措置であり、多くの人々はいまだに中国共産党に対する恐怖を感じている」と述べた。

同じく共和党のアンディ・ホッパー下院議員は、「有権者が私たちに託したのは、アメリカの敵が、我々の先人が血を流して守ったこの土地を組織的に買い占めるのを防ぐという、シンプルで重要な任務だ」と語った。

この法案は、上院に送り返される前に、下院でさらに1回の採決を経る必要がある。上院はすでに法案の一部を承認していたが、下院は8日の審議で複数の重要な修正を加えた。

当初の上院案では、100年未満の不動産リースは規制の対象外とされていたが、下院はこの免除対象を「1年以下のリース」に限定するよう改めた。

なお、テキサス州では外国法人が所有する土地の面積について、農地を除き詳細な追跡が行われていない。米農務省の2021年のデータによると、全米において中国の投資家が保有する外国人所有の土地は総面積の1%未満にとどまり、ロシア、イラン、北朝鮮の投資家による所有地は合計で3千エーカー未満とされる。

それでも、テキサス州共和党委員長のアブラハム・ジョージ氏は「1%でも多すぎる」と述べ、この法案を党の優先課題として掲げてきた理由を強調した。

高杉