選択的夫婦別姓制度をめぐり、自民党は今国会での独自法案提出を見送る方針を固めた。複数の党幹部が5月9日に明らかにしたもので、立憲民主党がすでに導入に向けた法案を提出しているほか、国民民主党や日本維新の会も個別に法案提出を予定している。しかし、野党間でも法案内容や提出時期で足並みがそろっていないのが現状である。毎日新聞など複数メディアが報じた。
自民党内では、夫婦別姓制度の導入に対して賛否が分かれており、党内議論がまとまらなかった。党幹部らは8日に国会内で対応を協議し、党としての法案提出を見送ることを決定した。関係者によると、野党が提出した法案が審議入りした場合の対応についても意見交換がなされたという。
協議の中では、党内から反対意見が相次ぎ、野党案が可決される事態を避けるため、党として「基本姿勢」を明確にし、立憲民主党などの法案に反対する党議拘束を設ける案も浮上した。党議拘束とは、党の方針に従って議員が投票するよう義務づけるものである。こうした動きから、今国会ではいずれの法案も成立しない可能性が高まっている。
立憲民主党は4月30日に選択的夫婦別姓制度導入のための民法改正案を衆議院に提出した。この法案は、結婚の際に夫婦が同じ姓にするか、それぞれの旧姓を名乗るかを選択できる制度を設ける内容であり、子どもの姓についても婚姻時に決めることとしている。
一方、国民民主党や日本維新の会も独自の法案提出を予定しているが、野党間での協力体制は整っていない。与党である自民党内では、制度導入に慎重な意見が根強く、家族の一体感を重視する立場から反対が多い。党幹部は「急いで法案をまとめることはできない。家族観に関わる問題なので、時間をかけて議論すべきだ」と述べているという。
こうした政治の動きに対し、経済界の最大団体である経団連が今後どのような働きかけを行うかも注目される。経団連は2024年6月に選択的夫婦別姓制度の早期実現を求める政策提言を発表し、政府に対して民法改正案の一刻も早い提出を要望している。経団連は、改姓によるキャリアの分断や旧姓使用に伴うトラブルが企業経営の課題であり、女性活躍や多様性推進の観点からも制度導入が不可欠だと強調している。経団連会長は「当事者個人の問題として片付けられず、企業にとってもビジネス上のリスクとなっている」と述べており、今後も政府や国会に対し積極的な働きかけを続けるとみられる。
今後については、各党が夏の参院選に向けて政策の整理を進めていく見通しだが、今国会での法案成立は極めて難しい情勢となった。選択的夫婦別姓制度をめぐる国会の議論とともに、推進派である経団連の今後の動きも引き続き注目される。
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