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激変する中国 教室内の暴力に怒った市民が立ち向かう――

教師からの「いじめ」を苦に13歳少女自殺 怒れる市民千人が学校を包囲=中国・河南省【動画あり】

2025/05/27
更新: 2025/05/27

5月23日、中国・河南省許昌市(きょしょうし)の第六中学校に通う中学1年生の女子生徒・呉怡佳(ご・いか、13歳)さんが、自宅の16階から飛び降り死亡した。事件後、学校の無責任な対応に対する怒りが爆発し、市民と生徒による抗議で学校を包囲する事態となった。

複数の証言によると、少女は成績優秀で両親は離婚しており、※「留守児童」だった。しかし、新任の担任から半年にわたって体罰や執拗な叱責、冷遇などのいじめを受け続け、心身に不調をきたしていたという。

※「留守児童」とは、両親が都市部へ出稼ぎに行ったため、祖父母や親せきなどの農村に取り残された子供のこと。
 

抗議現場の様子 (スクリーンショット)

 

事件後、学校側は責任を回避し、逆に「家庭の監督不行き届き」を強調し、遺族が公開した治安維持目的の公安が同席する面談の場の映像のなかには、謝罪の意が全く無く、余裕の振る舞いをする学校側の姿が映っており、いじめていた教師に至っては、遺族との面会中にスマートフォンを操作するなど、冷淡な態度に終始した。
 

遺族と学校の面談の席 (スクリーンショット)

 

24日夜、怒りと無力感を抱えた遺族は、校門前で「冤(えん)=無実・理不尽な死」と書かれた亡くなった少女の写真を掲げて抗議をし、周囲民衆に対して涙ながらにその境遇を訴えた。亡くなった少女の同級生たちも、SNS通じて事件の内幕を暴露し、遺族への支援を呼びかけた。

 

学校前で亡くなった少女の写真を掲げて抗議する車いす姿の遺族(祖父)。手前の手書きポスターには「還我孫女(私の孫娘を返して)」と書かれている (スクリーンショット)

 

学生たちは、いじめを行った教師の顔写真を印刷したビラを学校で配布、掲示するなどして事件への注目をよびかけた。学校の外壁や地面に「血債血償(※奪われた命の代償は命で償えという意味)」といったスローガンをチョークやスプレーで書き残した。

 

いじめを行った教師の顔写真を印刷したビラを手に持つ学生 (スクリーンショット)

 

事件を知った地域住民や他校の生徒たちは続々と学校前に集まり、24~25日にかけて抗議は千人規模に拡大した。校門は固く閉ざされていたため、怒りが頂点に達した一部の生徒は石などの硬い物や足蹴りで通りに面した校舎の窓を破壊した。校舎に向かっても爆竹や石を投げ込むなどの破壊活動を続け、学校は見るも無残な状態まで破壊された。

 

校舎の壁に「汚い言葉」の落書きをし、校舎の窓に投石するなどして破壊をしている学生 (スクリーンショット)

 

この事態を受け当局は警察を大量に動員し、催涙スプレーや暴力を用いて抗議する学生たちを力で鎮圧し、一部の抗議者を拘束した。
 

エポックタイムズの取材に応じた地元住民の李さん(第六中学校の隣に居住)はこう語った。「自分が現場に行った時、学校前には真相究明を訴える遺族と、少なくとも100~200人の市民や学生(他校の生徒も含む)が集まっていた。学生たちは学校の事務棟のガラスを次々に割り、現れた校長が生徒保護者によって殴られたが、生徒をいじめていた張という教師は、校内に隠れて最後まで姿を見せなかった。その後大勢の警察が現れ、破壊行為をした生徒を次々と拘束し、群衆を強制的に解散させた」

 

(現場の様子)

 

また、現場に来ていた学生の趙さんもエポックタイムズの取材に応じ、次のように証言した。「亡くなった女子生徒は容姿も良く、クラスでも人気があった。でも、担任の張姓教師から執拗な嫌がらせを受けていた。もしかすると、教師が少女に嫉妬していたのかもしれない。彼女は日常的に罵倒されたり、長時間立たされたり、教室への出入りを禁止されたり、真夏にランニングを強要されたりして、その結果、精神的に追い詰められ5月23日夜、自宅の16階から飛び降りたんだ」

 

混乱する現場の様子 (スクリーンショット)

 

少女の家族も、SNSを通じて中国の人権問題を長年発信している著名ブロガー「昨天/(@YesterdayBigcat)」に対し、少女はいじめの長期化により抑うつ状態に陥り、遠方にいる母親に「転校させてほしい」と泣きながら訴えていたことを明かした。23日当日も、3日連続の罰立ちを受けた直後、帰宅後に飛び降りたという。

翌26日には学校周辺は封鎖され、現場には多数の警察がずらりと並び、一般人の接近を禁止する厳戒態勢が敷かれた。学校は全面的に休校となった。

 

現場で安定維持を行う警察 (スクリーンショット)

 

SNS上の関連投稿が次々と削除される中、遺族(父親)は「すでに妥善(適切)に処理された」とする動画を投稿したが、多くの市民は「当局の圧力によるものだ」と見ている。

「子供を守るはずの学校が、命を追い詰める場所になっている……」

一方、2023年12月、河南省商丘市寧陵県で男子中学生が不審な死を遂げた。遺体の腕には、ドライバーのような工具で開けられたとみられる複数の穿孔があり、一部の傷は骨が露出するほど深かったにもかかわらず、当局は「自殺」と断定。これに怒った市民ら約1万人が、学校や地方政府に抗議し、一時は他省からも支援の人々が駆けつける大規模な騒動となった。



中学生の暴行死 真相を隠蔽し「自殺で幕引きはかる」地元政府=中国 河南

2023年12月28日、河南省商丘市で起きた男子中学生の死亡事件で、地元政府は真相を隠蔽し「自殺」で幕引きをはかろうとしている。

 

2025年1月、陝西省蒲城県の職業教育センターでも17歳の男子生徒が不可解な転落死を遂げた。家族は長期にわたるいじめ被害を訴えたが、当局は「自分で窓を開けて飛び降りた」との説明を発表。この強引な幕引きに対し、現地では激しい反発が起こり、約1万人が抗議に立ち上がった。警察は高速道路を封鎖し各所に検問を設けてデモの拡大を封じ込めた。

 

2025年1月6日、17歳の男子生徒の不可解な転落死がきっかけに起きた陝西省蒲城県で起きた大規模抗議、画像は道路封鎖する警官 (スクリーンショット)

 

中国各地では、学校内でのいじめによる生徒の自殺や不審死が相次ぎ、学校や当局の対応に不満を抱いた市民が学校を取り囲んで抗議する事件が続発していた。しかし、そのたびに当局は力で封じ込め、ネット上の情報も検閲してきた。

だが、「子供が安心して学校に通えない」という現実は、すでに誰にとっても他人事ではなく、抑え込まれてきた怒りは、いつか火山のように噴き出す日が来るかもしれないのだ。
 

2023年5月、河北省で学生の謎の転落事故が起きた。画像はその大学前で真相究明を求め、泣きながら社会に助けを乞う遺族の姿 (中国のSNSより)

 

 

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!