中国当局に封じられたネット配信者の写真が、思わぬ形で世界に広がっている。各国のアップルストアに並ぶ最新iPhone17の展示機で、来店した華人客が壁紙をその配信者の顔写真に設定し始めたのだ。
話題となっているのは、中国の人気配信者・戸晨風(と・しんぷう)氏
戸氏は、街で高齢者の買い物を手助けしたり、庶民の購買力を検証する動画で注目を集めた。貧困や格差を映し出す内容や、検閲ぎりぎりの発言で現実を突く姿勢が特徴で、当局にとっては厄介な存在とされ、過去にもアカウント停止や配信禁止を繰り返し受けてきた。
近ごろは、戸氏は中国の産業を正面から批判する発言が相次いだ。「国産アンドロイドはやがて消滅する」と断言し、「iPhone17が高級市場を独占する」と予測。さらに国産EV技術に疑問を投げかけ、「ガソリン車ならトヨタ、電気車ならテスラを選ぶべきだ」と語った。こうした挑発的な言葉は、当局にとって一線を越えるものだった。
そして「iPhone17が高級市場を独占する」との発言を行った直後、戸氏のアカウントはウェイボーや抖音(TikTok中国版)、ビリビリ動画など大手SNSで相次いで更新停止となり、ライブ配信機能も閉鎖された。「戸晨風封殺」の話題はネット上で大きな議論を呼び、中国のSNSで一時トレンド入りするほど注目を集めた。

戸氏は以前からアップル製品を高く評価し、「(中)国産スマホはアップルに勝てない」と公言していた。そのため今回の「壁紙現象」は、彼自身の発言とも重なり、皮肉を帯びた広がり方を見せている。
ニューヨーク、パリ、ロンドン、東京、シンガポールなど世界各地のアップルストアで、華人客が展示機の壁紙を彼の写真に差し替え、北京や杭州の店舗でも同様の動きが確認された。
SNS上では「これは中国当局への草の根の抵抗だ」との声が上がり、「アップルの最高経営責任者(CEO)ティム・クック氏が、彼を世界的な広告キャラクターにすべきだ」と揶揄する投稿も拡散している。
権力の検閲を越えた今回の「デジタル抗議」世界のアップルストアに並ぶ展示機は、いまや封殺に抗う声を映す「自由の掲示板」となった。


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