「日本に住んでいるし、中国人でもない。だから関係ない」
その感覚は、もはや通用しないかもしれない。
中国当局が公表したネット新法の草案は、国外にいる個人の発信や資産にも及ぶ内容を含んでいる。日本人にとっても、決して他人事ではない。
中国当局が公表したネット新法の草案は、国外にいる個人の発信や資産にも及ぶ内容を含んでいる。日本人にとっても、決して他人事ではない。
1月31日、中国当局は新たな「ネット犯罪防止法」の草案を公表した。
表向きは犯罪対策を目的としているが、実際には人々が何を閲覧し、何を発言するかを徹底的に管理しようとする法律であることが分かる。
中国ではこれまで、国内で閲覧できない海外ニュースやSNSに接続するため、政府の検閲を回避する通信手段(VPN)を利用する人が少なくなかった。こうした行為は政治活動ではなく、外の世界の情報を得るためのごく日常的な手段であった。
しかし、新しい法案「網絡犯罪防治法(徵求意見稿)」では、そのような接続行為自体を違法とする。さらに、それを支援した人物やサービスも処罰の対象となる。
この法律の最も注目すべき点は、対象が中国国内に限られていないことである。
たとえば、日本に住む人がSNSやブログで「中国の人権状況はおかしい」「中国政府のやり方には問題がある」と発信した場合でも、当局がそれを「虚偽情報の拡散」や「国家安全に対する脅威」と判断すれば、以下のような措置が取られ得る。
・中国にある預金や不動産の凍結
・中国への入国禁止
・中国国内での投資やビジネス活動の制限
つまり、日本に住んでいるか、外国人であるかという点は本質ではない。
中国と何らかの関わりを持つ人が、当局の判断で「問題のある発信をした」と見なされた時点で、制裁の対象となり得るという考え方が、この法案に組み込まれている。
罰則も極めて重い。個人には最大50万元(約1千万円)の罰金や身柄拘束、組織には1億元(約20億円)を超える罰金や営業停止などが科される可能性がある。
中国ではこれまでにも、海外情報を遮断する大規模なネット検閲が行われてきた。近年は地域単位でさらに厳しい監視を強化しているとの指摘もある。
今回の法案は、その検閲体制を法律として固定し、警察が前面に立って取り締まる制度へと移行させるものだ。
北京のネット利用者からは、「何が違反で、どこまでが安全なのか分からない」との不安の声が上がっている。学者や知識人の間でも、発言を控える傾向が強まっているという。
専門家は、この法律の狙いを次のように分析している。中国を世界からさらに孤立させると同時に、中国国内に資産や家族を持つ海外在住者を間接的に拘束し、国外の批判的な言論を封じることにある。
この法案が示しているのは、単なるネット統制ではない。国境を越えて、人々の言葉と行動を管理しようとする発想そのものである。
中国国内では今、怒りとともに、「何を言えば安全なのか分からない」という静かな息苦しさが広がっている。
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