高水準の概算金でも農家の85%「厳しい」 米価変動で生産・流通に二重の危機

2026/08/19
更新: 2026/08/19

2026年産(令和8年産)米の集荷に向け、JAグループ各県が農家に支払う概算金(仮渡金)を相次いで示している。

農業協同組合新聞によると、新潟県産コシヒカリは1万8500円、魚沼産は2万1千円、福井県産コシヒカリは1万7千円、愛知県産コシヒカリは1万6800円に設定されるなど、過去と比べれば高い水準になっている。しかし、現在、店頭での米価上昇や概算金の引き上げとは裏腹に、生産者や米卸、小売業者の経営には深刻な問題が生じている。

現役の米農家を対象とした意識調査では、85%が現在の概算金水準でも経営は「厳しい」と回答した。25%は「経営継続に強い不安を感じる」としており、概算金の上昇が農家の経営安定に直結していない実態が浮かぶ。

資材高騰で農家の利益圧迫

農家の経営を圧迫している大きな要因が、肥料や燃料、農業機械などの生産費の上昇である。

農林水産省の調査によると、2023年の農業用資材価格は、2020年平均と比べて1.2倍に上昇した。品目別では、輸入依存度の高い肥料が1.5倍、ガソリンや軽油などの光熱動力が1.2倍、農業薬剤が1.1倍となった。

また農業協同組合新聞によると、米作農家の2023年度決算では、25.8%が最終赤字となり、29.4%が減益だった。合わせて55.2%が業績悪化に陥っていた。利益を確保できず、翌年の苗床やトラクターなどの機材調達、修繕に必要な資金を捻出できないことから、米作りを断念する事例も相次いだ。

2024年に発生した米作農業の法的倒産と休廃業・解散は計42件となり、前年の35件から2割増加した。年間では過去最多である。

廃業した農家の代表者は70代以上が6割を超え、60代を含めると約8割を占める。生産費の上昇に加え、農家の高齢化と後継者不足が離農を後押ししている。

仕入れ価格上昇、米屋にも打撃

一方で、農家から米を集荷し、精米や販売を担う米卸や米穀店も、急激な仕入れ価格の上昇に直面している。

農水省によると、2024年度に休廃業・解散した米穀類の卸売・販売業者は88件に達し、コロナ禍以降の5年間で最多となった。損益状況では22.4%が赤字、25.2%が減益となり、合わせて47.6%が業績悪化となった。

在庫米が高値で取引されたことで売上高が増加する一方、新米の仕入れ価格は想定以上に上昇した。スーパーや消費者の価格抵抗が強く、仕入れ価格の上昇分を販売価格へ十分に転嫁できなかったため、利益幅が縮小し、採算割れに陥る業者が相次いでいる。

農業協同組合新聞によると、大手米穀卸のヤマタネも、米販売事業で1億9500万円の営業赤字を計上し、在庫圧縮を進める事態となった。

帝国データバンクの調査では、2025年度の米屋の休廃業・解散は75件となり、3年ぶりに減少した。企業の8割が増益となり、赤字企業も1割未満に低下した。

ただし、業績改善の背景には、米価が上昇する前に安値で仕入れた在庫米による一過性の販売益や評価益があった。こうした利益の押し上げ効果がなくなれば、経営環境が再び悪化する恐れがある。

民間在庫72万トン増、販売量は減少

高値が続く中、米の需給は品薄から在庫増加へと変化している。

農水省によると、2026年6月末時点の全国の民間在庫は、出荷・販売段階の合計で194万トンとなった。前年同月の122万トンから72万トン増加している。一方、同月の精米販売数量は前年同月比94.7%に減少した。小売店向けは93.7%まで落ち込んでいる。

農業協同組合新聞によると、高い店頭価格を背景に、消費者が米の購入を控え、パンや麺類などへ切り替える動きが広がっており、こうした販売減少と在庫増加を受け、先行して出回る宮崎県や徳島県などの2026年産早期米では、概算金や買い取り価格が前年より2~4割引き下げられた。徳島県産米では前年比45%安となった。

 高値と値下がり、双方に経営リスク

米価の下落は消費者の負担軽減につながる一方、生産者にとっては収入減少を意味する。肥料や燃料、農業機械などの費用が高止まりする中、概算金だけが大幅に下がれば、農家の採算は再び悪化する。

米卸や米穀店も、米不足の時期に高値で仕入れた在庫を抱えている。市場価格が下落すれば、販売価格が仕入れ価格を下回る「逆ざや」が生じる可能性がある。

エポックタイムズの記者。東京を拠点に活動。政治、経済、社会を担当。他メディアが報道しない重要な情報を伝えます