超党派議員が中共の招待で訪中へ 9年前も中連部トップと会談 欧米は影響力工作を警戒

2026/08/19
更新: 2026/08/19

中国共産党(中共)中央対外連絡部(中連部)の招待を受け、日本の超党派議員団が中国を訪問する。参加が報じられているのは、中道改革連合の伊佐進一衆院議員、自民党の橋本岳衆院議員、立憲民主党の小西洋之参院議員ら。滞在中、中連部トップの劉海星部長らとの会談を予定している。

今回名前が挙がった3氏は、中共との議員交流に以前から関わってきた。

2017年8月、3氏は超党派の若手議員でつくる「日中次世代交流委員会」の訪中団にそろって参加した。当時、橋本氏は副団長、伊佐氏は事務局長を務め、小西氏もメンバーとして参加。北京では当時の宋濤・中共中央対外連絡部長らと会談している。訪中団には計10人が参加していた。

3氏と中連部 交流は10年以上前から

日中次世代交流委員会は2013年に発足した。

同年の第1次訪中団は公明、自民、日本維新の会、みんなの党の4党から9人が参加。議連は「両国関係がどんな状態にあろうとも交流を継続する」ことを基本方針の一つに掲げ、訪中の定例化を決めた。

第1次訪中の日程を調整した窓口も中連部だった。当時の公明党の報告によると、一行は中共幹部と会談している。伊佐氏はこの第1次訪中団にも参加していた。

中連部は民間の友好団体ではない。中共中央委員会の直属機関で、外国の政党や政治家との関係構築を担う。外務省も「中共の対外連絡窓口として政党間交流を担当する中央組織」と説明している。

一方、中連部の活動について、欧米の安全保障機関は警戒を強めている。

ドイツ情報機関「中共の情報機関のように活動」

ドイツの情報機関、連邦憲法擁護庁は2023年、中連部に関する安全上の注意喚起を公表した。

同庁によると、中連部はドイツ国内で政党や議員との関係を構築し、「中共の価値観」への理解を求めている。現職や元職の議員を中国に招待し、中国に対する見方を中共の方針に沿う方向へ「修正」することも一般的な手法だと指摘した。

特に、中共当局に比較的批判的でない議員らに接触し、関係を維持するとともに、中共政権に好意的な意思決定者を見極め、中共側の利益を支持するよう働きかけるとしている。また、個人的な交流を通じ、政治的に敏感な問題について情報や意見を収集する場合もある。

同庁は、中連部が政党間外交にとどまらず、外国の意思決定者への影響工作や人脈を通じた情報収集を行っていると分析。「事実上、中国の情報機関のようにも活動している」と警告した。

アメリカ 中連部を対外影響工作の一角と位置付け

アメリカ国務省も2020年、中共による海外での影響工作について、中連部を中央統一戦線工作部、中央宣伝部、国家安全部、外交部、教育部、人民解放軍政治工作部門などと並べた。

国務省は、これらの組織が外国の世論形成や外国政府関係者への影響に関与していると指摘している。

近年の米上院公聴会の資料では、中連部を中共の「外交部門(diplomatic arm)」と表現。世界の600を超える政党や政治組織、主に政治分野の有力者との関係を担っていると説明している。

中連部長 国家安全保障部門出身

今回、日本の議員団との会談を予定する劉海星中連部長の経歴も特徴的だ。

劉は1985年に中国外務省入りし、駐フランス中国大使館公使、外務省欧州司長、外務次官補などを歴任した。

その後、中央国家安全委員会弁公室に移り、2018年には副主任を務めていたことが中共の資料でも確認できる。後に同弁公室の常務副主任を務め、2025年9月、中連部長に就任した。中連部の公式サイトも現在、劉を部長として掲載している。

つまり劉は、約30年にわたる外交部門での経験に加え、中共中央の国家安全保障部門を経て、外国政党や政治家との関係を担う中連部のトップに就いた人物である。

政治家だけでなく若者も中国へ

中国側が外国人を中国に招く交流事業は、政治家に限らない。

米教育団体「Defending Education」は8月13日、報告書を公表し、中共がアメリカの若者を対象とした訪中交流を拡大していると指摘した。

中心となるのが「青年使節奨学金(Young Envoys Scholarship、YES)」だ。

中共駐米大使館はYES参加者について、5年間有効の数次訪問ビザを発給し、査証申請手数料も免除している。Defending Educationの報告書によると、事業によっては国際航空券、宿泊費、授業料などを中国側が負担する。航空券を参加者が負担するケースでも、中国到着後の学習、視察、宿泊、食事、移動費などを提供する場合があるという。

CEAIEは英語版サイトで、各国の人々の相互理解と友好を深めることを活動目的としている。一方、中国語の関連資料では「党の全面的指導を協会の活動の全過程に貫く」との方針を示している。

2025年には米下院中共特別委員会のジョン・ムーレナー委員長が、CEAIEなどが資金を提供するアメリカの生徒の訪中について、真の文化交流ではなく「宣伝・影響工作」だとして警戒を呼びかけた。

日本でも広がる交流事業

中国側が費用を負担する青少年・教育交流は日本でも行われている。日中友好会館は2025年、外務省の「JENESYS」の一環として日本の大学生・大学院生を中国に派遣。募集要項では、航空運賃や中国滞在中の宿泊費、食費、移動費などを中国日本友好協会が負担するとしていた。

教育機関同士の交流も続いている。ユネスコ・アジア文化センター(ACCU)も中共教育部やCEAIEと連携し、日本の教職員を中国へ派遣している。CEAIEは対外的には教育交流を目的に掲げる一方、中国語の内部規定では「共産党の全面的指導」を活動全体に貫く方針を明記している。

こうした政府間交流や教育交流を一律に影響工作とみなすことはできない。一方、中共が政治家だけでなく、学生、教員、教育機関など幅広い層との人的関係を重視し、費用負担を伴う訪中事業を長期的に進めていることは、日本でも確認できる。

今回訪中する伊佐氏、橋本氏、小西氏は、少なくとも9年前から同じ議員交流の枠組みを通じて中連部と接触してきた。欧米当局が中連部による情報収集や外国政治家への影響を警戒するなか、中共が今回の訪中で日本の議員に何を働きかけるのか注目する。

清川茜
エポックタイムズ記者。経済、金融と社会問題について執筆している。大学では日本語と経営学を専攻。