台湾人の中国大陸への渡航を巡り、安全上の懸念が強まっている。台湾の大陸委員会によると、2024年1月1日から今年8月27日までに、中国で台湾人が行方不明になったり、留置・取り調べを受けたり、身体の自由を制限された疑いのあるケースは累計426人に上った。前週から7人増えた。
大陸委員会が今月29日に公表した中国、香港、マカオへの渡航者の安全状況をまとめた週間報告「国人赴中港澳安全動態週報」によると、426人の内訳は、行方不明が160人(前週155人)、留置・取り調べが36人、中国当局側に拘束された疑いがあるケースが230人(同228人)だった。大陸委員会は、中国、香港、マカオへの渡航を予定する台湾人に対し、十分注意するよう呼び掛けている。
中国当局が公表した出入国管理に関する新たな規定は来月15日に施行される予定だ。台湾側によると、中国各地の空港では最近、出国者に対する審査も強化されているという。
大陸委員会は、新規定について、出入国管理当局に広範な裁量を認め、国境管理の権限を中央政府から地方当局にも広げる内容だと指摘している。規定の定義が曖昧で、恣意的な運用につながる可能性があるとして警戒を呼び掛けている。
また、中国当局が、台湾住民が中国大陸への渡航や滞在に利用する「台湾居民来往大陸通行証(台胞証)」の所持者も管理対象とする可能性があると指摘。中国への渡航に伴う台湾人の安全上のリスクが高まるとしている。
こうした中、台湾人の家族を名乗る人物が交流サイト「スレッズ」に、中国への出張中だった息子が上海の空港で当局に呼び止められ、長時間にわたって尋問を受けたとする投稿を行った。
投稿によると、息子は最近、上海への出張のため入国しようとした際、上海の税関当局に呼び止められ、その後、別室に連れて行かれた。税関職員同士の会話から「政治に関係している」ことが理由だったと本人は受け止めたという。
家族によると、息子は大学卒業後、国際人権団体「アムネスティ・インターナショナル」でアルバイトをしていた。中国当局は同団体を、中国の新疆ウイグル自治区やチベット、香港などの人権問題を批判してきた団体として警戒している。
投稿では、中国当局側の情報機関がNGOでのインターンやアルバイト経験者に関する情報を把握し、入国審査で重点的に確認している可能性があるとの見方を示している。
息子は別室で3人の私服当局者から尋問を受け、携帯電話のロック解除を求められたほか、通信履歴や写真、電子メール、LINE、WhatsAppなどの通信アプリの内容を確認されたという。過去の勤務に関する資料ややり取りについても質問を受けたとしている。
尋問では、団体内で担当していた業務や資金源、台湾や海外で接触した政治家、人権活動家、団体について聞かれたほか、過去の業務が中台間の人権問題に関係していないか、入国の本当の目的は何か、秘密裏に調査を行ったり、現地の敏感な人物と接触したりする意図がないかなどを問われたという。
家族によると、息子は恐怖を感じながらも冷静に対応し、すでに退職していることや、生活のために働いていた一般の従業員であり、意思決定や人権活動の中核を担っていたわけではないと説明した。「政治的な意図は一切ない」とも強調したという。
その後、息子が自ら「入国を放棄する」と申し出たところ、同日夜の航空便で台湾に戻ることを認められたとしている。尋問は約6時間に及んだという。
家族は投稿で、空港に息子を迎えに行った際、本人が疲労困憊し、精神的にも追い詰められた様子で経緯を説明したと明らかにした。「何事もなく帰宅できたことが幸いだった」と振り返っている。
また、中国では当局による認定次第で事態が大きく変わり得るとして、2018年に中国当局に拘束され、その後、懲役5年の判決を受けた台湾人の人権活動家、李明哲氏のケースにも言及した。
家族は「息子が別の李明哲にならずに済んだ」とし、「今も心が落ち着かない。息子の精神的な負担は言うまでもない」と訴えた。
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