中国共産党(中共)による国民の出国管理が、空港や国境での出入国審査から、居住地を管轄する派出所にまで広がっている。最近、海外で働く複数の中国人が、一時帰国した際に海外での勤務状況や保険、写真、住所などの提出を求められ、応じなければその後の出国に影響すると明かした。一方、有効な渡航書類や航空券を持つ大学生が、出国時に足止めされる事例も起きている。
8月24日、シンガポール在住のネットユーザーは、現地で働く中国人の同僚が出張で中国に戻った際、地元の派出所から7種類の資料を追加提出するよう求められたと投稿した。
投稿には次のように書かれていた。
「同僚が今日、中国に出張で戻ったところ、地元の派出所から次の資料を求められた。1.パスポート、2.海外での雇用証明、3.医療保険の証明、4.職場で撮影した写真、5.勤務先の入口や看板の写真、6.現地のランドマークで撮った本人の写真、7.具体的な居住住所。提出しなければ出国に影響すると言われ、本人も困惑している」
また、居住地域の担当者や派出所が中国国内にいる家族に連絡し、海外に住む家族に資料を提出するよう促したケースも報告している。
学者「海外華人の分布把握を狙う」
遼寧省の劉さんは大紀元に対し、8月25日に北京からロサンゼルス行きの航空券をインターネットで購入したところ、翌日には地元の派出所から電話がかかってきたと話した。
「担当の警察官からアメリカに行く目的を聞かれたので、親族訪問だと答えた。すると、氏名、目的地、便名、訪問先の人物の氏名と職業を用紙に記入するよう求められ、さらにその人の家が持ち家なのか賃貸なのかまで書くよう言われた。なぜ私の親族の個人情報まで調べるのか、不思議に思った」
劉さんによると、これまでにも何度かアメリカを訪れているが、2年前の渡航時には同様のことはなかった。
「今回は、警察官は私自身よりも、親族の身元や住居について詳しく知りたがっていた。なぜアメリカに住む華人の住宅事情にまで関心を持つのか分からない。親族が住んでいるのは、特に敏感とされる地域でもない」
中国の研究者、尹丹さん(仮名)は、中共が通信詐欺対策を名目に、通常の海外渡航者や海外就労者まで調査対象に含めており、集めている情報は、海外で実際に働いているかを確認するために必要な範囲を超えていると指摘した。
「中国国内の友人から聞いた話では、帰国後、派出所からアメリカの勤務先の入口や看板の写真、現地のランドマークで撮った写真、具体的な住所まで調べられたという。中共はビッグデータを使い、アメリカ国内の華人がどこに住んでいるかを把握し、個人の海外での行動まで追跡しようとしているのではないか」
広東省の女性ネットユーザーも、コメント欄で以前に同様の登録を求められたと明かした。
「提出しないと、本当に出国に影響が出る。私も以前、提出するよう言われたが、忙しくてそのまま忘れていた。その後、香港へ行こうとしたら、香港・マカオ通行証は自動端末で手続きできず、有人窓口に行くよう求められた。ちょうど出発日が休日で担当者がおらず、予定が狂ってしまった。今後、海外出張の際に足止めされたら困るので、すぐ地元に戻って資料を提出した」
上海市の元公務員、馮さんは記者に対し、8月初め以降、自身が住む住宅地では、出国前に地域の管理担当者から書類への記入を求められる住民が少なくないと語った。
「団体旅行でなければ、出国前に書類への記入を求められる。それだけでなく、『日本は治安がよくないので、できれば行かない方がいい』『アメリカもなるべく避けた方がいい』と口頭で言われた。私は『それならベトナムやラオス、カンボジア、ミャンマーへ行けというのか。腎臓を取られに行けというのか』と聞いた。すると担当者は、『そういう意味ではない。出国前の登録は安全を守るためだ』と答えた。私は『今の中国では、どこに行っても安全とは言えない。むしろ西側諸国の方が安全だ』と返した」
大学生 有効な渡航書類があっても出国できず
8月中旬、ネット上に拡散したチャット画面の画像によると、航空券を購入し、海外旅行に出ようとしていた大学生2人が、出国審査で足止めされた。
理由について、関係者は「大学生なので安全ではない」と説明したと伝えている。
ただ、画像には空港名や渡航先、その後の対応については記していない。
8月16日には、広西チワン族自治区の南寧空港で、女子大学生が出国を止められたとする動画がネット上に投稿された。
女性の説明によると、15日に自動化ゲートから出国しようとした際、赤いランプが点灯し、その後、別室に連れて行かれた。そこで携帯電話、チャット履歴、銀行口座の取引記録、帰国便の航空券、ホテルの予約記録、荷物などを調べられたという。
女性は、同じ大学の学生がスペインに渡航後、中国に戻っていないことを理由に、「約6万人いる同大学の学生全員が出国を制限されると説明した」と話した。
動画には、女性が別室に連れて行かれる様子や、所持していた渡航書類を無効化する場面も映っていた。
中共 海外在住中国人への監視拡大
中共国務院は7月22日、「出入国管理に関する国務院規定」を公布した。9月15日に施行する。
ただ、新規定には、海外で働く中国人が帰国後、地元の派出所に前述のような資料を提出しなければならないとの規定はない。また、一部の学生が海外に滞在したまま帰国していないことを理由に、大学全体の学生の出国を制限できるとも定めていない。
時事評論家の尹丹さんは、中共の公安当局が詐欺対策を名目に、中国国内で行ってきた地域単位の管理を海外在住の中国人にまで広げていると指摘した。中国を離れた後も、当局が海外での行動を把握できる仕組みになっているという。
「銀聯(クレジットカード)を使って買い物をしたり、現金を引き出したりすれば、こうした利用データをビッグデータに集約する。氏名を調べれば、当局はその人がどこにいるのか把握できる。帰国した際には、当局がすでに把握している情報をもとに本人に質問し、答えが事実と違えば再び出国はさせない。最終的な狙いは、やはり人を管理することにある」
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