仕事がないのに、毎朝出勤する。給料はもらえない。それどころか、会社に行くためにお金を払う。
冗談のような話だが、今の中国では、こんな奇妙な「出勤ごっこ」が話題になっている。
なぜ、そこまでするのか。
理由は単純で、そして切実だ。失業したことを家族に知られたくないからだ。
中国では、不動産不況や消費の低迷、企業の人員削減などで雇用環境が厳しさを増している。
仕事を失っても次の職がなかなか見つからず、家族に心配をかけたくない、失業した自分を知られたくないという思いから、毎朝いつも通り家を出る人たちがいる。
行き先は会社ではない。公園や図書館、カフェ、ショッピングモールだ。そこで一日を過ごし、夕方になると何事もなかったように帰宅する。
中国のSNSでは、こうした「出勤ごっこ」が大きな共感を集め、関連動画の再生回数は中国版TikTok「抖音」だけで6億回を超えたという。
さらに驚くのは、この苦しい現実が商売にまでなっていることだ。
浙江省杭州市では2025年、失業者らが1日30元(約600円)を払って利用する「偽の会社」が話題になった。
室内には机や会議室、プリンターがそろい、遅刻禁止、居眠り禁止、社内恋愛禁止といった規則まである。本物の会社と違うのは、仕事も給料もないことだ。
朝になれば家を出る。夕方になれば帰ってくる。家族には「今日も仕事だった」と言う。しかし、その一日を乗り切っても、明日の仕事が見つかったわけではない。
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。