中国アルミ各社が海外増産へ 2027年に世界で供給過剰の可能性

2026/10/29
更新: 2026/10/29

中国のアルミメーカーが、国内の生産能力上限を背景に海外進出を加速させている。公表済みの海外製錬事業は、計画段階を含め年間生産能力で少なくとも1500万トンに上る。モルガン・スタンレーは、新設備の稼働などにより、世界のアルミ需給が2027年に供給過剰へ転じると指摘している。

ロイター通信が企業の公表資料や政府への届け出を基に集計したところ、中国の投資家が海外で進めている、または計画を公表したアルミ新地金の製錬事業は、年間生産能力の合計が少なくとも1500万トンに上る。このうち、年間生産能力で約285万トンに当たる設備が建設中か、すでに稼働を始めている。これは、世界の既存設備の年間生産能力7378万トンの約3.8%に相当する。

アルミ新地金は、アルミナ(酸化アルミニウム)を電気分解してつくる金属アルミニウムで、アルミ製品の加工に使う重要な原料である。

国内の生産能力上限4500万トンが海外投資を後押し

海外投資が増えている背景には、中国国内の生産能力を制限する政策がある。中国共産党(中共)当局は2017年、過剰な生産能力を抑え、環境汚染を減らすため、アルミの電解製錬能力の上限を年間4500万トンに設定した。一方、電気自動車(EV)などの製造業ではアルミ需要が伸び続けている。このため、企業の間で海外に生産拠点を広げる動きが強まっている。

インドネシアは、中国のアルミメーカーにとって主要な投資先となっている。中国企業によるニッケル関連の大型投資が相次いだ同国では、アルミ製錬への投資も増えている。

モルガン・スタンレーで中国の素材産業の調査を統括する張鐳(レイチェル・チャン)氏は、インドネシアのアルミ電解製錬設備の年間生産能力が、2026年に86万6千トン、2027年にはさらに120万~130万トン増えると予測する。

山東南山アルミは、インドネシアのビンタン島で年間生産能力25万トンの製錬所を建設している。今後、生産能力を倍増させる計画である。中部スラウェシ州のモロワリ工業団地では、信発集団と青山控股集団が年間生産能力60万トンの製錬施設の稼働に向けて準備を進めている。青山控股集団は、北マルク州のウェダ湾でも年間生産能力80万トンの工場を建設している。

インドネシア以外では、中国企業がカザフスタンとサウジアラビアで製錬事業を計画している。これらの計画により、年間生産能力が合わせて約400万トン増える可能性がある。

主な計画の一つが、山東創新集団の支援を受ける紅海アルミの事業である。サウジアラビアのヤンブーで年間生産能力50万トンの製錬所を建設しており、2027年の稼働を目指している。また、信発集団はカザフスタンのパブロダルに、年間生産能力240万トンの製錬所を建設する計画である。

世界のアルミ需給 2027年に83万トンの供給過剰予測

モルガン・スタンレーは2026年7月、世界のアルミ需給が、2026年の110万トンの供給不足から、2027年には83万トンの供給過剰に転じる可能性があると予測した。新たな製錬設備の稼働と、中東でのアルミ生産の回復が理由である。2028年には、供給過剰の規模が180万トンに拡大する見通しである。

同社は、世界のアルミ新地金の年間生産能力が、2027年に約210万トン、2028年に約220万トン増えると見込む。ただし、実際にどれだけの設備が稼働するかは不透明である。市場価格や事業の採算、現地の電力供給、規制への対応などによって、計画の進み方は変わる。

モルガン・スタンレーは、アルミの平均価格の予想を、2027年は1トン当たり2850ドル(約45万円)、2028年は2800ドル(約44万2千円)に引き下げた。2026年下半期の平均価格は、1トン当たり3150ドル(約49万7千円)と予測している。

中共が対外投資規制を強化 海外計画に遅れの可能性

海外進出には、規制面でも新たな制約が生じている。ロイター通信が関係者の話として伝えたところによると、中共当局は2026年7月、新たな対外投資規則を導入した。所管当局は国家安全保障上の理由から投資を審査し、企業に事業の停止や資産の売却を求めることができるという。

中国有色金属工業協会の范順科党委員会副書記は2026年10月、大規模な海外進出は望ましくなく、実現も難しいとの認識を示した。

アルミ業界の調査・コンサルティング会社CMグループの創業者、アラン・クラーク氏は、大規模な一貫生産事業は今後も進むとみられるものの、計画の遅れが増える危険性があると指摘する。一方、小規模で単独操業の製錬所は、より大きな影響を受ける可能性があるという。

クラーク氏は、ロイター通信が集計した海外事業計画の年間生産能力1500万トンのうち、最終的に設備が完成し、稼働するのは900万~1千万トンにとどまると推計する。その生産能力の約半分は、インドネシアに集中する見通しである。

王君宜
王君宜