令和8年度の機構・定員改革 防災庁の新設と安全保障・DXへの重点配置

2025/12/27
更新: 2025/12/27

政府は、各府省から提出された令和8年度の機構・定員要求に対し、内閣人事局による審査結果をまとめた。今回の改編では、「防災庁」の新設や国家情報会議の設置、内閣情報調査室の「国家情報局」への改組など、近年の社会情勢の変化に対応するための大規模な組織再編と、重要課題への重点的な人員配置が鮮明となっている。

主な機構改革の柱:危機管理と安全保障の強化

今回の審査結果において最も注目されるのは、相次ぐ自然災害や複雑化する安全保障環境に対応するための組織新設・改編である。

  • 防災庁の新設: 防災大臣や事務次官、4名の統括官らを擁する「防災庁」が新たに設置される。これに伴い、内閣府本府からは223人が防災庁へ振り替えられる予定である。
  • 情報・安全保障体制の刷新: 内閣官房では、国家情報会議の設置とともに、内閣情報調査室が「国家情報局」へと改組される。また、サイバー安全保障分野の対応能力向上に向けた体制整備も行われる。
  • 防衛・サイバー分野の再編: 航空自衛隊が「航空宇宙自衛隊」へと改編されるほか、新たに「サイバー通信情報監理委員会」とその事務局が設置される。

定員管理の現状:増減の明暗とワークライフバランス

定員管理においては、重要課題への増員を図る一方で、既存業務の整理による減員も進められている。

  • 全体の増減: 全体で4,966人の増員に対し、業務改革等により3,744人を減員する。差引では1,222人の純増となる。
  • 重点配置分野: 外交・安全保障、治安、デジタル改革、経済安全保障、こども・子育て支援などが優先されている。
  • 人事管理の配慮: ワークライフバランス推進のため、産休・育休等の代替職員として352人を確保するほか、超過勤務縮減のための定員(100人、5年時限)も措置された。また、定年引上げに伴う新規採用確保のための特例定員として、別途885人が措置されている。

内閣の重要課題への集中投資

今回の改編の背景には、令和7年8月に内閣総理大臣が決定した「令和8年度内閣の重要課題を推進するための体制整備及び人件費予算の配分の方針」がある。

政府は、限られたリソースの中で「危機管理投資」と「成長投資」を戦略的に進めることを目指している。例えば、デジタル庁におけるAI活用環境の整備や、金融庁における資産運用・保険監督体制の再編などは、経済成長を支えるための布石といえる。また、物流の「交通空白」解消や、食料安全保障の強化といった国民生活に直結する課題への対応も急務となっている。

デジタルトランスフォーメーション(DX)の加速

審査結果を分析すると、今後の行政運営はさらなるDXの進展と業務の省力化が軸になると予測される。

多くの省庁で、デジタル化による業務の高度化が要求項目に挙がっている。例えば、警察業務のデジタル化、医療・介護分野のDX、行政のDX推進などがその例である。労働力不足が深刻化する中で、定員を単純に増やすことは難しくなり、今後はAIによる業務自動化や、府省をまたいだ横断的な組織運用がより一般化していくだろう。

大紀元日本の速報記者。東京を拠点に活動。主に社会面を担当。その他、政治・経済等幅広く執筆。