スパイに利用される華人たち 司法統計が示す二極化の背景と中共の統一戦線工作

2026/06/15
更新: 2026/06/15

「中共(中国共産党)から脅迫や圧力を受けたり、統一戦線工作部門などから接触を受けたりした場合は、居住国の法執行機関に通報すべきだ」と独立中文筆会の広報担当、盛雪氏は、米司法当局の統計に関連し、海外在住の華人に呼びかけた。

なぜ一般犯罪が少ない華人が「スパイ事件」に巻き込まれるのか

米連邦量刑委員会の統計によると、2025年に全米で言い渡された連邦刑事事件の判決は6万6662件だった。このうち、中国籍の被告が占める割合は2%未満だった。

また、米国勢調査局のデータでは、アジア系アメリカ人は全米人口の約6%を占める。一方、連邦および州の刑務所に収容されている人のうち、アジア系の割合は1.5~2%にとどまる。統計上、華人を含むアジア系住民は、米社会で比較的法令順守意識の高い集団であることがうかがえる。

しかし、米司法省の統計では、別の側面も示されている。経済スパイ事件の起訴案件では、「中国(中共)の利益になること」を目的とした案件が約80%を占めた。また、営業秘密の窃取事件では、「中国と実質的な関係がある」案件が約60%に上った。

2021年の研究報告によると、1996年から2020年までにアメリカが「経済スパイ法」に基づいて起訴した190件のうち、2009年以降、中国語名を持つ被告が関係する案件の割合が急増し、全体の50%を超えた。

さらに、FBIは2020年、経済スパイ事件のうち中国(中共)関連の案件が、過去10年間で13倍に増加したと明らかにした。当時、FBIが扱っていた約5千件の防諜案件のうち、半数近くが中国(中共)関連だった。

こうした司法統計に見られる華人社会の「二極化」は、何を示しているのか。

本質は「華人の気質」ではなく「中共の組織的介入」

『六四詩集』の編集者で、米議会図書館所蔵作家でもある蒋品超氏は大紀元に対し、中国伝統文化の影響を受けた華人は、自身を律する意識が強く、社会規範をむやみに破ろうとしない道徳観を持っていると述べた。

カナダで約40年暮らす盛雪氏も、多くの華人は安定した暮らしを望み、家庭や子供の教育を重視していると指摘した。争いごとを避ける傾向があり、積極的にトラブルを起こすような人々ではないという。

盛雪氏はまた、多くの華人にとって、民主主義国家で暮らす機会は「容易に得られるものではない」と述べた。「大多数の華人はアメリカでの生活環境を大事にして居るはずだ。自由にくらし、真面目に働き、家族を養い、自らの事業や人生を築いていけることを重視している」との見方を示した。

海外人権弁護士連盟の責任者、呉紹平氏も、中国本土からアメリカへ移住した華人の多くは比較的高等な教育を受けており、アメリカでも教育を重視していると指摘した。アメリカの社会制度を受け入れている人も多く、こうした背景が法令順守の傾向につながっているという。

世界退党サービスセンターは6月8日に発表した報告書で、華人社会に見られる犯罪率の「二極化」について、「中国人が生まれつきスパイ活動に関わりやすいからではない」と指摘した。そのうえで、「在米中国人を組織的かつ制度的に利用し、自らの目的のための駒として取り込んできた組織が存在する。それが中国共産党だ」と分析した。

呉紹平氏は、中共政権がアメリカと競うにあたり、教育や制度の改善ではなく、「国家の力を使ってスパイを育成し、アメリカの軍事技術や商業技術を盗もうとしている」と述べた。

「こうした行為によって、中共の国家戦略上の必要を満たそうとしている」

同氏は、華人社会で一般犯罪が少ない一方、知的犯罪が目立つ背景には中共の介入があると指摘した。中共は金銭、色仕掛け、家族関係、道徳などを利用して高度人材を取り込み、危険な行為に踏み切らせていると述べた。

世界退党サービスセンターの報告書は、過去30年間の華人関連事件を分析し、その背後には中共が国家機関を総動員して主導、計画、または容認してきた「国家レベルの違法活動」があるとした。

報告書によれば、中共国家安全部は海外でのスパイ網の構築や華人人材への工作を担っている。公安部は国外での監視、追跡、嫌がらせ、脅迫などの越境弾圧に関与しているという。また、「千人計画」は高額報酬、肩書きや研究資源を提供し、海外の優秀な華人研究者に技術移転を促してきたと指摘している。

盛雪氏は、中国国内に暮らす家族や親族など中国とのつながりが、海外華人の「弱み」になっていると述べた。中共の「国家テロリズム」が、こうした形で海外の華人社会、アメリカ、カナダなどの民主主義国にも及んでいるとの見方を示した

一方で、一部の華人は中国国内で受けた教育や宣伝の影響により、「愛国」と「愛(中国共産)党」を同一視し、自発的に中共に協力している場合もある。

例えば、カナダ国立微生物研究所(NML)に10年以上勤務していた華人女性科学者の邱香果と、その夫の程克定は、中国武漢ウイルス研究所と非公開で協力していた。邱は規定に反し、エボラウイルスやヘニパウイルスのサンプルを武漢ウイルス研究所に提供していた。後にNMLは夫妻を解雇した。

盛雪氏は、道義よりも利益や金銭を優先する人は、中共に取り込まれやすいと指摘した。

自身を守るために 中共との切り離しが自衛策に

世界退党サービスセンターの報告書は、アメリカの公共安全を脅かしているのは一般の海外華人ではなく、中共が海外華人を利用し、その代償を負わせている構図だと指摘した。

そのうえで、海外華人が自らを守るためには、中共と明確に距離を置く必要があると訴えた。

蒋品超氏は、米カリフォルニア州アーカディア市の元市長、王愛琳(アイリーン・リー・ワン)が5月末、違法な中共代理人として活動したことを認めた事例に言及した。

同氏は、アメリカは法治国家であり、法の裁きを逃れることはできないと述べた。海外華人は中共の本質を見極め、根本から距離を置く必要があるという。

呉紹平氏も、「愛国主義」という名目で中共に利用されてはならないと強調した。中共の統一戦線組織に参加せず、距離を保つことが重要だと述べた。

盛雪氏は、海外華人に対し、まず意識の上で中共と決別し、利用されないことが重要だと指摘した。必要な場合には、居住国の司法機関に支援を求めるべきだという。

また、民主主義国家の社会に積極的に溶け込み、子供たちが地域社会の一員として将来を築ける環境を整えることも重要だと述べた。

盛雪氏は、中共の影響力はすでに衰退の過程にあるとの見方を示し、華人社会に対して普遍的価値を守る側に立つよう呼びかけた。

呉紹平氏は最後に、「切り離すべきなのは中共であり、中国文化や中華文明、中国人ではない。この二つは矛盾しない」と述べた。

易如
程雯