焦点:側近重用の党・改造人事、改憲・解散・都知事選で異論も

2019/09/11
更新: 2019/09/11

竹本能文

[東京 11日 ロイター] – 11日に公表された自民党役員人事と内閣改造は、安倍晋三首相が側近を重用し憲法改正に向けた強い意気込みをアピールした格好となった。これを踏まえ、与党内では早期の衆院解散や首相4選も取り沙汰される。もっとも党内で交代論もあった二階俊博幹事長の続投は東京都知事選への対応などで党内にしこりを残す可能性があるほか、憲法改正や早期解散を巡っては、党幹部の間でも温度差があり、今後の政権運営に影を落としそうだ。

〈汗かいた人が報われる人事〉

萩生田光一幹事長代行が文部科学相、衛藤晟一首相補佐官が1億総活躍担当相、西村康稔官房副長官が経済再生担当相として初入閣したほか、党人事でも下村博文憲法改正推進本部長を選挙対策委員長、稲田朋美筆頭副幹事長を幹事長代行に据えるなど、今回の人事は首相と近しい議員の登用が目立つ。二階幹事長は会見で「党役員人事も、内閣改造も、安倍首相の考えがしっかり反映されている」と表現。多くの与党関係者から「首相のために汗をかいた人が報われる人事だ」(幹部周辺)とみられている。

安倍首相は11日の臨時総務会で、7月の参院選を受けて「国民からいただいた負託にしっかり応えていかなくてはならない」と強調。国民の支持を背景に、政策運営を前に進める意志を強調した。「首相は2021年の(党総裁)任期から逆算すると、最後の内閣改造となる可能性もあり、自分の理想の布陣にした」(与党)とされ、憲法改正に向けアクセルを踏み込む姿勢が鮮明だ。

また早期の衆院解散も視野に入る。側近の下村氏を選対委員長に起用したのは、「早期解散に一歩近づいたメッセージ。安倍4選の可能性も高まった」(政府高官周辺)とされる。小泉進次郎氏の閣内起用も「選挙を重視する安倍首相の戦略だろう」(与党関係者)とみられる。

与党内では10月の消費増税を踏まえ、早ければ11月の衆院解散もささやかれる。衆院議員の任期は2021年秋で、20年前半は東京五輪で難しい上、五輪後は経済状況が不透明なため、自民党内では選挙基盤の弱い若手議員を中心に早期解散論がある。衆院選で一定の勝利を収めれば、党内で安倍首相の「4選支持」の声が高まる可能性がある。

すでに安倍首相の4選に支持を表明してきた二階幹事長は11日、「もし安倍総裁がそのような決意を固めたときは、おそらく国民の皆様の意向に沿う形で党を挙げて支援したい」と改めて強調した。

〈党役員人事にも「波乱要因」〉

もっとも、自民党内には解散や改憲を巡り異論も多い。消費増税後は一定の需要減は免れないとして「年内の解散は現実的でない」(与党中堅)、「結局、来年の通常国会まで憲法改正議論を進めるのは難しい」(幹部周辺)との声も相応にある。岸田文雄政務調査会長は11日の会見で「国民が憲法について議論することで憲法改正が進んでいく流れをしっかりつくっていく」と述べたものの、「憲法は国民のもの」とあえて指摘。世論調査でも国民の関心が決して高くはない憲法改正について、必要であれば時間をかける姿勢をのぞかせた。

立教大学の砂川浩慶教授(メディア論)は「憲法改正は現実的には難しく、一度国民投票で否決されてしまえば、二度と議論できなくなる可能性がある。このため、憲法改正は衆院解散とセットで、来年のいずれかの時期になるのではないか」と指摘する。

党役員人事も波乱要因を含んでいる。二階幹事長は就任3年にわたり、高齢などを理由に自民党内でも交代論が一定の広がりを持っていた。特に来年夏に予定されている東京都知事選を巡っては、再選を目指す小池百合子知事を支持する姿勢を鮮明にしており、自民党を飛び出し、2017年衆院選では安倍首相に対抗した小池氏に感情的に反発している多くの自民党関係者の頭痛の種となっている。

「来年の都知事選までには幹事長は交代が必要」(幹部)との声があり、今回の人事を巡っても、「菅義偉官房長官が幹事長、加藤勝信氏が官房長官」とのシナリオが広範にささやかれた時期があった。

二階氏続投は「本人の強い意思の結果」(幹部)とされるものの、安倍首相や麻生太郎財務相が、菅氏の幹事長就任で「さらに(菅氏が)影響力を拡大することへのけん制の意味もあったのだろう」(政府関係者)と推測する向きもある。

*本文7段落目の余分な文字を削除しました。

 

(編集:内田慎一)

Reuters
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