アングル:都が休業要請の対象公表、補償支援求める自治体 国は慎重

2020/04/10
更新: 2020/04/10

竹本能文

[東京 10日 ロイター] – 東京都は10日、新型インフルエンザ対策特別措置法に基づく緊急事態宣言を受け、ネットカフェやパチンコ店など休業指定業種を公表した。休業事業者には「感染拡大防止協力金」の名目で補償を行う。他の自治体も休業要請に伴う補償に国の支援を求めているが、政府は慎重姿勢を崩していない。すでに外出自粛で打撃を受けている飲食・小売業は資金力も弱く、支援が手遅れとなれば雇用問題につながる可能性もある。政府は7日に緊急経済対策を打ち出したが、次の対策を求める声が早くも出てきている。

<知事会の要請、膨大な財政措置必要に>

東京都の小池百合子知事は国が緊急事態宣言を発令した7日時点で、できるだけ幅広い業種に休業を求め公表する方針だったが、国が経済活動などへの影響を理由に難色を示し、発表が10日にずれ込んだ。

都の補償支給を受けて、今後は他の道府県の動向が焦点となってくる。全国知事会が8日に行った緊急対策本部では、休業補償の必要性を訴える声が上がり、店舗閉鎖やイベント自粛で事業者が負った損失の補償を国に求めることなどを提言することを決めた。

千葉県の森田健作知事は「都と足並みをそろえるというのは簡単だが、都と千葉県の財政には雲泥の差がある」と述べ、休業要請に伴う支援は国のサポートが不可欠との認識を示している。

休業要請の見返りとなる事業者への補償について、国は慎重姿勢を維持している。対象の線引きが難しく、不正受給の可能性があるうえ、財政負担が巨額になるのは必至なためだ。

安倍晋三首相は7日の衆院議院運営委員会で「そこ(飲食店)に納入している人たちも、大きな影響を受ける。自粛要請している人に限って、その額を補償するのはバランスを欠く」と答弁。飲食店に補償しても、納入業者は補償されず、バランスを失するとの考えを示している。

民間エコノミストの間でも「休業補償が本来必要だが、莫大な財政が必要なうえ不正受給の可能性がある」(ニッセイ基礎研究所の上野剛志シニアエコノミスト)として一定の理解を示す声もある。

<政府の対応>

政府は、休業補償に代わり、資金繰りの悪化が懸念される中小企業に対し、地方銀行や信用金庫など民間金融機関経由でも無利子・無担保融資を実施することを決め、事業継続に向けた給付金の創設も打ち出している。売り上げが前年比50%以上減少した中堅中小企業は最大200万円、フリーランスを含めた個人事業主は最大100万円補填される。

ただ、政府の中堅・中小企業や個人事業主・フリーランス向け給付金は、売り上げ半減の証明など手続きが煩雑で、支給は最短で5月中以降が見込まれている。

第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミストは「法人企業統計などを参考にすると、小売業の手元流動性は売り上げの1カ月分、飲食業は1.5カ月分。休業には1カ月から1.5カ月しか耐えられない。休業補償がないと存続が難しい」と指摘する。

<追加対策求める声>

菅義偉官房長官は8日、休業要請とセットでの補償の必要性について「直接の自粛要請の対象となっていない分野でも発注が減るなどの影響がある」とし、「むしろ事業者の資金繰りを徹底的に支援し、収入が大幅に減少した事業者を幅広く給付金の対象とすることで、事業の継続を支援していきたい」と政府の考え方を説明した。

これに対し、国民民主党の玉木雄一郎代表は、経済対策は事業規模108兆円をうたいながら、現金給付は6兆円にとどまっているとして「衣ばかり大きな天ぷら」と批判し続けている。政府内でも「有事と平時を混乱した議論がみられ、支給が届いたときには企業の香典になっている恐れがある」(経済官庁)との懸念が出ている。

公明党の山口那津男代表は9日の中央幹事会で、緊急事態宣言の発令を踏まえ「必要な対応策もこれから考えていかなければならない」と述べ、追加の経済対策が必要だとの認識を示した。自民党内でも、窮乏する事業者救済のため「粗利補償は必要不可欠」との声が青山繁晴参院議員らから提案されている。青山氏は8日、岡田直樹官房副長官に次の経済対策に盛り込むための提言書を手渡した。

 

 

(編集:石田仁志)

Reuters
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