2020年7月8日、中国中部の湖北省武漢市で、全国大学入学試験を終えて学校から出ていく学生たち。(STR/AFP via Getty Images)

中国の高齢化危機、日本との比較で深刻さが浮き彫りに

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中国が高齢化危機から脱するには、若年労働者の数を増やすか、既存の労働力の教育と生産性を向上させる必要がある。いずれもコストが非常に高く、効果が見られるまで何十年もかかる可能性がある。

2016年、少子高齢化に直面した中国共産党は、一人っ子政策を廃止した。しかし、期待された出生率の爆発的な上昇は実現しなかった。

中国では、育児や教育にかかる費用が非常に高く、若い夫婦が複数の子どもを育てるのは難しい。上海では、2LDKの中古マンションが150万ドル(約1億7000万円)以上するのに対し、平均月給は1700ドル(約19万円)、最低賃金は374ドル(約4万円)に過ぎない。このような生活費・住宅費比率では、ほとんどの夫婦が両親や祖父母の援助なしには生活できず、2人以上の子供を持つのは全く論外である。

2020年の中国の出生数は1200万人にとどまり、1978年以降最低となった。これを受けて、中国共産党は今年5月末、1組の夫婦が3人までの子供を持つことを認めると発表した。この「三人っ子政策」も、2016年の「二人っ子政策」と同様、高齢化危機を抑制する効果は期待できない。

中国の驚異的な成長は、農村部から都市部への労働者の移動によってもたらされた。急速に進んだ都市化が、国内総生産(GDP)の数字を押し上げた。農地を離れて工場で働く出稼ぎ労働者は、GDPに2倍も貢献する。しかし、現在では人口の64%が都市化している。農村から都市への人口移動によるGDPの劇的な伸びは、もはや起こりえない。

中国が高齢化に上手く対応出来ていない理由は、日本の状況を見れば理解できる。

日本と中国は、経済発展の面で似たような経験をしてきた。両者とも急速な経済成長、高水準の債務、活況を呈する不動産部門を経験した。経済が大幅に減速したとき、両国は高齢化危機に直面することになった。日本政府は、この危機を緩和するためにいくつかの措置を講じた。今のところ、中国共産党には計画がないようだ。

高齢化社会を迎えた日本では、医療や教育など家庭での育児負担を軽減するための取り組みが始まった。中国共産党は同様の措置をとっていない。また、日本には、すべての国民が加入する国民年金制度が設けられている。

ジニ係数とは、国や社会の所得格差を表す指標である。数値が高いほど、格差が大きい。中国のジニ係数は46.5、日本は29.9。人口の約4割にあたる6億人の中国人の月収は1000元(約1万7千円)以下と推定される。中国の一人当たりGDPは年間1万500ドル(約120万円)、月875ドル(約10万円))程度である。これは、人口の半分が残りの半分よりもかなり多くの収入を得ていることを示している。

日本では、市町村が3人目の子供を持つ人を優遇し、出産祝い金から保育料の無料化、車の無償貸与、住宅取得の支援など、総合的な子育て支援を推進している。3人っ子政策を導入したばかりの北京が同様の措置をとることはなさそうだ。その結果、昨年の日本の出生率は1.369となり、中国の1.3を上回った。

日本では、現在は65歳定年制が原則だが、政府は70歳への引き上げを計画している。中国では、数十年前から女性は50歳(女性幹部55歳)、男性は60歳で定年を迎えることになっている。今後、この状況が変わるかどうかは不明である。

日本の労働人口は、人口減少のピーク時に1年間で100万人も減少した。戦争を除けば、これほど極端に労働力が減少した国は他にない。しかし、中国と日本の大きな違いは、日本はG7諸国の中で最もGDP成長率が低いにもかかわらず、一人当たりGDP成長率は最も高いということである。つまり、日本はより少ない労働者でより多くのGDP成長を維持しているのだ。

労働時間当たりのGDPは、各国の労働生産性を示す指標である。日本では、1時間あたりに生み出されたGDPは41.9ドル。これに対し中国の1時間あたりの労働生産性は約15ドル。中国の労働者は日本の労働者に比べて効率が悪く、さらに中国の労働生産性も低下している。中国の労働生産性は、2010年から2011年にかけて急激に低下し、2018年まで比較的横ばいで推移した。それ以降、減少傾向にある。

労働生産性を向上させる方法のひとつに、教育がある。より良い教育を受けた労働者は、バリューチェーン(価値連鎖)の上位で働くことができ、より多くのGDPに貢献することができる。日本、韓国、シンガポール、台湾、香港は、労働人口が減少しても、教育の充実によりバリューチェーンを向上させ、豊かさを維持することができた。しかし、中国はこれらの国、特に日本に大きく遅れをとっている。成人の平均就学年数も、日本が12.8年なのに対し、中国は7.8年。

国連の人間開発指数(HDI)は、その国や地域における平均寿命や、教育指数(識字率と平均就学年数)、生活水準(1人当たり国民総所得)を調べることで、その国の非経済的能力を測定するものである。HDIの高さは、その国の豊かさや労働生産性の高さと密接に関係している。2020年、日本のHDIは0.919、中国は0.761にとどまっている。

経済人口動態マトリックスでは、年齢と資産の人口統計に基づいて国を分類している。日本は富裕な高齢国、中国は貧困な高齢国に分類される。両国とも高齢化が進んでいるが、日本の一人当たりGDPは年間4万802ドル(約466万円)強であるのに対し、中国は1万243ドル(約117万円)に過ぎない。

中国の高齢化危機は、中国経済が下降トレンドから脱却することを困難にしている。日本が高齢化に対応し、GDPを維持するために行ってきた施策の多くは、費用や時間がかかるものだった。日本が経済の絶頂期にあった1989年と比較すると、中国の人口の大部分は著しく貧しく、教育水準も低い。政権70年、市場経済化40年ほどの経験を持つ中国共産党が、日本などの先進国にない解決策を見出せるかどうかは未知数である。

執筆者プロフィール

アントニオ・グレースフォ(Antonio Graceffo)

博士号取得後、20年以上をアジアで過ごす。上海体育大学を卒業し、上海交通大学にて中国MBAを取得。経済学教授、中国経済アナリストとして、さまざまな国際メディアに寄稿している。中国に関する著書に「Beyond the Belt and Road: China’s Global Economic Expansion」(仮邦訳:一帯一路を越えて=中国の世界的な経済拡張)などがある。

オリジナル記事:英文大紀元「Worse Than Japan: China Unable to Deal With Aging Crisis」

https://www.theepochtimes.com/worse-than-japan-china-unable-to-deal-with-aging-crisis_4127399.html

(翻訳:王君宜)