「我が子はどこへ?」失踪した子供を探す親たち 街頭で警察に強制排除される=中国 福建

2023/07/16
更新: 2023/07/18

福建省福州市で11日以降、失踪した我が子を探す親たちが街頭で写真や横断幕を掲げ、市民に情報提供や協力を求めていたところ、警察によって暴力的に排除されている。

なかには、警察のひどい暴力によって命を落としたとされる父親もいた模様。警察は、目隠し用の「青いカーテン」を現場に広げ、スマホを向ける市民には「撮るな!」と恫喝した。その様子を捉えた動画が数多くネット上に流出し、物議を醸している。

「捜索しない警察」が、泣き叫ぶ親を強制排除

自分の子供がある日、突然行方不明になった。

警察は口ばかりで、本気で対応しようとしない。中国の街を埋め尽くす監視カメラは、交通違反の「罰金とり」にはフル活用するが、なぜか行方不明者の捜索には全く活用されていないのだ。

親たちは毎日毎夜、気が狂うほどの悲しみにくれ、大声を上げて泣いた。そしてわずかな手がかりでも得たいと思い、街頭に跪いて、通行人に頭を下げている。「どうか子供の捜索にご協力ください」と、泣きながら懇願しているのだ。

そうした「失踪児童の親」があふれているのが、今の中国の実態である。

子供が何の理由もなく失踪することは、最近に始まったことではない。そのため、20年以上も前から我が子を探し続けている親もいる。当時は若かった親も、すっかり白髪頭になった。人生の大半を悲しみと絶望のなかで過ごしてきたため、まだ中年ながら、やつれた老人のような風貌になってしまったのだ。

こうした必死の思いの親たちを強制排除した理由について、警察は「街中で子供を探すのは、市民に迷惑をかける行為だから」という。

警察がいう「市民に迷惑な行為」とは、失踪した子供の顔写真や氏名などの情報が記された横断幕を街頭に広げたりする行為であるらしい。

それならば、警察が失踪児童の捜索に全力を上げることが第一であるはずだが、それを全く実行せず、警察は「悲しんで泣き叫ぶ親」を暴力的に排除しようとするのだ。

これが「あの人物」のいう、繁栄の世なのか?

中国に限ったことではないが、言うまでもなく警察は、強大な公的権力をもつ組織である。全ては命令によって動くものであり、命令がなければ絶対に動かない。

したがって、中国警察が失踪児童を捜索しないのは「組織としての命令がないから」であり、その親たちを強制排除するのも、そうせよと命じられたからに他ならない。

この一事からしても、中国の警察がどちら側の立場であるか、すでに明白である。

強制排除の現場動画を投稿した市民は、「この冷血非情な役人どもは、誘拐された子供を探す親を助けるどころか、子供を探してはダメだという。正義はどこにあるのか? あの人物の思う通りの(見せかけの)繁栄の世になったものだ。メンツのためなら、どんな悪事もやってのけるのだ!」と書いた。

「あの人物」とは国家主席、習近平氏を指しているのだろうか。

動画のなかには、親たちの持ち物である「失踪児童の情報を載せた長い幕(地面に広げて展示されていたもの)」を、私服警官および黒服の警官など大勢の男たちが乱暴に奪い取る様子も映っていた。

親たちは取られまいとして、幕の上に寝転ぶなどして必死の抵抗を試みたが、最終的には没収された。

 

 

         

(我が子を探す親たちが、警察に強制排除される様子。SNS投稿動画)

志半ばで命を落とした父親は、元軍人だった

かつて中越戦争(1979)に従軍したことのある元軍人、陳育信氏の姿も福州市で子供を探す親グループのなかにいた。

陳氏は22年前に失踪した息子(当時5歳)を訪ねて、国内をあちこち歩き回ってきた。陳氏夫妻はこれまでに、関連部門に何度も助けを求めたが、全く相手にされなかったという。

陳氏は、市民のライブ配信に応じて「私は、砲声が轟轟と鳴る戦場でも死ななかった。だから子供を探す途中である今、死ぬわけにはいかない。(我が息子よ)早く出てきてくれ」と呼び掛けた。

ところが、別の動画を投稿した市民によると、12日に行われた「城管」や現地警察による強制排除の際に、抵抗した陳育信氏は複数の警察官によって、安定維持用(目隠し)の「青いカーテン」のなかへ引きずり込まれた。

陳氏の妻が後で見つけた時には、すでに夫は意識を失って仰向けに倒れていた。

周囲の警察は、ただ見ているだけで、倒れている陳氏に救命措置などはしていない。医師や救急車を呼ぶこともなく、路上に放置したままである。現場の状況から、すでに死亡しているようにも見える。

陳氏の妻は地面に横たわる陳氏のそばに跪き、泣きながら「警察が私の夫を殴り、殺した!」「これがかつて(祖国のため)戦場へ赴いた老兵に対する警察の態度か!」などと叫んでいる。(関連動画はこちら

 

通行人によるライブ配信に応じる陳育信さん。(SNS投稿動画よりスクリーンショット)

 

画像左は、陳育信さんが探す息子の情報。画像右は、陳さんが倒れている現場の様子。すでに亡くなっていると見られ、妻や周囲の人々が大声で泣いている。(SNS投稿動画よりスクリーンショット)

 

「毎年、警察に騙され続けている」

SNSに投稿された動画のなかには、ハンドマイクを手に警察に向かって訴える女性の姿があった。

「毎年ここ(福州)に来ているが(警察は)いつも『我々を信じてください』と言うばかり。しかし結局、また1年が経つだけだ。10年、20年、なかには30年経つ人もいる」

女性はそう言って「私たちは毎年(警察に)騙され続けている」と訴えた。

子供が理由もなく失踪した多くの親たちは、それぞれの悲しみを共有し、倒れそうな体を支え合って、この場所で抗議の声を上げている。それは、子供を拉致した犯人に対してだけではなく、全く捜索しようとしない役所や警察に対して向けられた激しい抗議に他ならない。

ハンドマイクの女性はさらに、こうも述べた。

「あなたたちに、1つ聞きたい。素姓がはっきりしない(どこから来て、誰であるかも知らないはずの)子供の戸籍を、あなた方(警察)はどうやって作成したのか?」

ここで女性が警察にぶつけた質問は、役所の戸籍部門や警察など、政府ぐるみで人身売買を黙認し、ひいては手さえ貸していることをストレートに指摘し、非難したに等しい。

つまり、人身売買によって「買い取ってきた子供」を(買い手が)実子だと偽って自家の戸籍に入れる場合、当然、警察や档案(個人情報の全記録)の管理部門に知られてしまう。そのような不正がまかり通る場合、中国では、極めて通常のこととして賄賂が使われる。ただし、これは人身売買の目的が「臓器収奪」でない場合である。

ともかく「警察は子供の失踪に関与している」。ハンドマイクの女性は、そう明言した。

だからこそ、この女性は警察に向かって「私たちは、自分の子供を取り戻したいだけだ。子供を返しなさい!」と続けたのである。

女性の前に並ぶ警察官たちは、おそらく苦笑いしながら手出しもできず、こう思ったはずだ。「この女。本当のことを言いやがったな」。

(関連動画はこちら

ハンドマイクを手に、警察に訴える女性。(SNS投稿動画よりスクリーンショット)

中国のどこにでもある「悲しみの光景」

こうした光景は、福建省の福州ばかりではない。街中で「尋ね人」の看板を掲げ、横断幕を広げて、地面に膝をつき、失踪した我が子の情報提供と捜索協力を泣きながら呼びかける親たち(とくに母親)の姿は、いまや「中国のどこにでもある光景」になっている。

失踪者は、確かに乳幼児をふくむ子供が多いが、若者や大人である場合もある。

親たちは、希望の少ないなか、まさに「藁にもすがる思い」で我が子を必死に探している。そのために、写真や動画、ライブ配信などをSNSで拡散してくれるよう、一般市民に懇願しているのだ。つまり中国の役所も警察も、親たちにとっては全く頼みにするべき対象ではないことになる。

そうした親として当然の「人間の叫び」を封殺するために、中国共産党配下の警察が強制排除した。それが、こうした事例の根幹にあると見てよい。

この母親の胸に、子供が再び抱きしめられる日がくるか。

愛する我が子を探す親たちの叫びは、下の動画にもあるように、中国全土に響き渡っている。

街中で「尋ね人」の看板を掲げ、横断幕を広げて、失踪した我が子の捜索協力を呼びかける親たち。地面いっぱいに並ぶのは、失踪児童の写真である(SNS投稿動画よりスクリーンショット)

(下の動画は、福建省晋江市で7月8日、夜の繁華街を歩きながら、失踪児童の捜索への協力を市民に求める親たち。「我が子を返せ!」とマイクで叫んでいる)

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
鳥飼聡
二松学舎大院博士課程修了(文学修士)。高校教師などを経て、エポックタイムズ入社。中国の文化、歴史、社会関係の記事を中心に執筆・編集しています。
関連特集: 中国