サミュエル・パパロアメリカインド太平洋軍司令官は5月2日、仮に現時点で台湾海峡において衝突が発生した場合、アメリカは中国共産党(中共)を打ち負かすことが可能であると述べた。ただし、パパロ司令官は慎重に、急速に軍備を拡張する中共によって、アメリカが直面する課題は増大していると付け加えた。
2024年5月初旬、パパロ司令官はジョン・アキリーノ氏の後任として、米軍のインド太平洋地域における最高指揮官に就任した。インド太平洋軍司令官として1年を迎えた節目に、パパロ司令官は台湾海峡における潜在的な衝突についての見解を述べた。
『フィナンシャル・タイムズ』が3日に報じたところによれば、パパロ氏はアリゾナ州で開催されたマケイン研究所主催の年次セドナ・フォーラムにおいて、「現有の戦力をもってすれば、もし今衝突が起きても、アメリカが勝利を収めることができる」と語った。
パパロ氏は、アメリカ軍が中共よりも水中戦能力において重要な優位を有しており、宇宙戦力および対宇宙兵器においても優れていると強調した。しかしながら、彼は中共がアメリカよりも速いペースで、軍艦を含む兵器システムの建造を進めていると警鐘を鳴らした。
パパロ氏の警告は、中共が台湾に対する軍事的威嚇を強化する中で発せられた。4月初旬には、中共陸軍・海軍・空軍・ロケット軍が台湾周辺で軍事演習を行い、その中には東シナ海での長距離実弾演習も含まれている。これらの演習は、中共による台湾包囲軍事演習のエスカレーションを示している。
パパロ氏は、自身がインド太平洋軍司令官に就任して以降、中共軍の活動が著しくエスカレートしており、台湾奪取に向けた「全面的な軍事行動」を訓練していると述べた。「君も『ゆでガエル理論』を聞いたことがあるだろう……今は“急速沸騰(rapid boil)”の段階だ」と語った。
また、パパロ司令官は、中共による演習の範囲は、台湾の一つの小島奪取の準備から、海上封鎖、さらには台湾本島への攻撃にまで及んでいると述べた。
前任者からどのような助言を受けたかと問われた司令官は、アキリーノ氏から「最終的には台湾を巡る中共との戦争で、君がアメリカ軍の指揮官となる可能性がある」と言われたと明かした。
「彼(アキリーノ)は、……それは君の任期中に起こるかもしれないと語った」とパパロ氏は述べた。
中共がいつ台湾侵攻を実行に移すかについては、かねてより注目されている。2023年2月、当時のビル・バーンズCIA長官は、アメリカの情報機関が入手した情報によれば、中共党首・習近平が、2027年までに台湾侵攻の準備を完了するよう中共軍とその指導部に命じたと述べた。ただし、それは2027年に必ず侵攻するという意思決定を意味するものではないとも指摘している。
アメリカ国民が台湾を支援するための軍事行動に賛同するかどうか尋ねられた際、パパロ氏は、アメリカはこれまで、脅威にさらされるか、国益が関係する場合にのみ行動を起こしてきたと答えた。
彼は、歴史を振り返れば、アメリカが決して戦争に巻き込まれることはないと言われるが、実際の歴史はそうではないと述べた。
現在、トランプ政権は中共の脅威への対応を最優先事項としている。『ワシントン・ポスト』が3月に報じたところによれば、国防総省内部のメモにおいて、ヘグセス国防長官は、中共による台湾奪取の抑止および本土防衛の強化を最優先課題と定めたという。このメモではさらに、アメリカが中共との衝突を見据えて軍備を集中させる方針を示す一方で、ロシアの脅威についてはヨーロッパの同盟国に対応を委ねるとしている。
『ワシントン・ポスト』は、トランプ政権の第1期およびバイデン政権の双方が、中共をアメリカ最大の脅威と見なしており、太平洋地域での衝突に備えて軍隊を配備してきたが、ヘグセス国防長官の署名したこのメモの特徴は、台湾への侵攻を「他の潜在的な危険よりも優先して対応すべき事態」と位置づけている点にあると報じている。これにより、国防総省はアメリカ軍の広範な軍事体制を本土防衛任務からインド太平洋地域に再配置している。
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