立憲民主党の原口一博議員は16日に開かれた衆議院財務金融委員会で、中国製太陽光パネルの国内設置がもたらす安全保障上のリスクについて強い懸念を表明した。
原口氏は、世界の太陽光パネル市場における中国のシェアが95%に達している現状を指摘した上で、「日本各地に設置されている大規模ソーラーの中には、不正な通信を行うケースがある」と発言。「我が国グリッドに繋がってる場合は送電網をカットされてしまう、もしくはそこから情報を盗まれてしまう」と述べ、「政府は『ガラクタのオスプレイ』を買うのではなく『内なる安全保障』にこそ注力すべきだ」と訴えた。
この懸念に対し、電力機器の専門家は次のように説明する。
「ソーラーパネル自体に通信機能があるわけではない。リスクの焦点は主に蓄電システムやパワーコンディショナにある。これらの機器は、設計によっては外部ネットワークと通信が可能であり、遠隔操作やデータの取得も技術的には実現可能である。国内メーカーの技術者であれば、こうした構成を比較的容易に理解し、構築できると話していた」
また、過去には例外的なシステムとして、ACモジュール型ソーラーパネルが一時期海外で流行していたという。「各パネルにパワーコンディショナを内蔵し、単体で通信や監視ができる構成だったが、現在はほぼ淘汰され、市場では見られなくなっている」と説明した。
こうしたリスクに対する警戒は、欧米各国でも高まりつつある。
アメリカのエネルギー当局は、中国製のバッテリーやパワーインバーター(電力変換装置)に、隠された通信機器が組み込まれていることを発見した。これらの中には携帯通信機器も含まれており、こうした秘密装置には、コンピュータのファイアウォールを回避し、遠隔でインバーターを停止させ、電力網の安定性を損なわせ、大規模な停電を引き起こす可能性があるとされている。
パワーインバーターは、太陽光や風力などの再生可能エネルギーを家庭用電力に変換する装置であり、排出削減目標の達成に向けて重要な役割を果たしている。世界最大のインバーターサプライヤーは中国のファーウェイで、2022年の世界市場シェアは29%を占める。
ヨーロッパでは、200ギガワットを超える太陽光発電容量が中国製インバーターに依存しており、これは原子力発電所200基分に相当する規模である。
この現状に対し、ヨーロッパの専門家からは「もし大量の機器が一斉に遠隔操作されれば、ヨーロッパ全体の電力網に深刻な影響を与えかねない」との懸念が示されている。ドイツの太陽光発電企業「1Komma5°(ワンコマファイブ)」は、こうした安全保障上の懸念を理由に、ファーウェイ製インバーターの使用を全面的に中止する措置を取った。
オーストラリアでも、既に約400万世帯が太陽光パネルを屋根に設置しており、そのうち90%以上が中国製である。インバーターもまた、ほとんどが中国製もしくは中国企業によるものである。英紙デイリー・テレグラフによると、オーストラリア戦略分析センター(SAA)のマイケル・シューブリッジ氏は「これは重大な国家安全保障上の問題であり、技術的に徹底した調査が求められる」と指摘している。
さらに、リトアニアでは2024年に、100キロワット以上の再生可能エネルギー施設において、中国企業による遠隔アクセスを禁止する法案が可決された。エストニアの情報機関もまた、中国製技術の国家インフラへの導入が、政治的圧力の手段となる可能性を警告し、使用制限を提言している。
イギリス政府も現在、国内エネルギーシステムにおける中国製技術の使用状況について包括的な調査を進めており、その結果は数か月以内に公表される予定である。
このように、中国製太陽光機器を巡る安全保障リスクは、日本国内にとどまらず、国際的な問題として広く認識されつつある。
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