農林水産省は2025年6月16日、コメの出来具合を示す「作況指数」の公表を、2025年産から廃止する方針を正式に発表した。作況指数は、10アールあたりの収量を過去30年間の平均収量(平年値)と比較して数値化し、毎年秋に公表されてきた指標である。1956年から現在の方式で発表されており、約70年にわたり農業現場や流通業界にとって重要な目安となってきた。
小泉進次郎農林水産大臣は記者団に対し、作況指数の廃止理由について「気候変動や農業技術の進歩により、過去の平均値と現実の生産状況が合わなくなってきた」と説明した。近年は温暖化の影響や冷害の減少、また農家の経営判断や市場の動向も多様化しており、従来の作況指数では実態を十分に反映できなくなっていたという。
さらに、作況指数が「平年並み」と発表されても、実際には生産現場や流通業者の感覚と乖離しているとの指摘が寄せられていた。特に2024年産米の作況指数が「平年並み」とされた際には、米の供給量が十分であるとする政府の説明に対し、市場では米不足や価格高騰の声も上がっていた。
今後は、人工衛星やAI(人工知能)などの最先端技術を活用し、より正確な収穫量データの収集と分析を進める方針が示された。農家が使用するコンバイン(収穫機)から得られるリアルタイムの収穫量データなども活用し、標本調査に過度に依存しない新たな調査体系を構築する計画である。
また、コメの選別に使う「ふるい目」の基準も、従来の1.7ミリから生産現場で一般的な1.8~1.9ミリへ変更する方針が示された。
農林水産省によると、作況指数の廃止後も収穫量調査は引き続き実施され、今後は前年との比較を中心に作柄の状況を公表するという。新たな調査手法や公表方法の詳細については、今後さらに検討が進められる見通しである。
今回の決定は、長年続いてきた農業統計の大きな転換点となる。
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。