論評
中国共産党(中共)は、尖閣諸島、台湾海峡、さらには南シナ海と東シナ海において支配を強めようとしている。まもなく就役するとされる空母「福建」は、その海軍力拡大の大きな一歩を示すものであり、アメリカや同盟国との対立のリスクを一段と高めている。
9月14日朝、東シナ海の係争地・尖閣諸島の南小島付近で、砲を備えた中国船2隻が日本の領海に侵入した。海上保安庁は午前7時ごろにこれを確認し、直ちに退去を警告しつつ監視を続けた。尖閣諸島は日本が実効支配しているが、中国(中国共産党、中共)も領有を主張している。しかし日本政府は、尖閣諸島は歴史的にも国際法上も固有の領土であり、領有権に争いは存在しないとの立場を堅持している。
中共による尖閣諸島への脅威は、アメリカを巻き込む軍事衝突に発展しかねない。1951年に署名され、1960年に改定された日米安全保障条約の第5条は、日本が施政下に置く領域に対する武力攻撃があった場合、アメリカは日本を防衛する義務を負うと定めているからだ。
アメリカは領有権の是非には立場を示していないが、日本の現行の施政権を認めている。米政府高官は繰り返し、尖閣諸島も第5条の適用対象に含まれると明言しており、中共政権が武力を行使すれば、アメリカは条約に基づき日本を支援することになる。
わずか数日前、中国の最新空母「福建」が、今年中の就役を前に試験航行を続けながら初めて台湾海峡を通過した。防衛省も9月11日、福建が駆逐艦2隻とともに係争中の尖閣諸島近海を航行しているのを確認した。
中共は、同艦が南シナ海へ向かう途中で訓練や科学的試験を実施するものだと主張し、この航行は「特定の国を狙ったものではない」と強調した。しかし、台湾海峡および台湾への領有権主張を誇示する狙いが明白だった。
同じ頃、米駆逐艦「ヒギンズ」と英フリゲート艦「リッチモンド」が台湾海峡を通過し、中共は「地域の安定を損なう」と強く非難し、海空軍を出動させて監視に当たった。これに対し米英は「航行は国際法に基づく合法的かつ定例のもの」と反論し、台湾海峡はどの国の領海にも属さない国際水域であり、航行の自由は守られるべきだと訴えた。
今月初めにも、カナダとオーストラリアの軍艦が海峡を通過しており、アメリカやイギリス、フランスといった同盟国は月1回程度のペースで通航を繰り返している。アメリカは長らく、台湾海峡は中国の領海ではなく国際水域であるとの立場を取り、インド太平洋での「航行の自由作戦(FONOPS)」を定期的に実施してきた。前政権によると、国防総省は過去4年間に「十数件の過剰な海洋権益主張に異議を唱え」、南シナ海を中心に二国間・多国間の軍事演習を行い、自由で開かれたインド太平洋の維持に努めてきたという。
国連海洋法条約では、沿岸国は12カイリの領海を設定できると定められている。中国も同条約の締約国である。中共はこの領海を本土だけでなく台湾周辺にも及ぶものと主張している。それは台湾の主権を認めない立場に基づくものだ。しかし台湾海峡には、いずれの領海にも属さない国際水域と国際空域が存在し、すべての国が航行や飛行、その他の合法的活動を行う権利を持つ。
中共は接続水域やEEZに一定の管轄権を有するが、主権を持つわけではない。さらに領海内であっても、海洋法条約は外国船舶の「無害通航」を認めており、沿岸国の平和や秩序、安全を害さない限り通行は合法である。
過去5年間、中共は台湾に対する軍事的圧力を強め、定期的な軍事演習や領海・領空侵犯を繰り返してきた。台湾の大陸委員会は「中共は侵攻に備えている」と警告している。
EUやルビオ米国務長官も、中共が台湾海峡や南シナ海で領土主張を拡大し、スカボロー礁を「自然保護区」に指定しようとしている動きを非難した。
中共は、尖閣諸島、台湾海峡、東シナ海と南シナ海、そして最終的には台湾に対する支配力を強めようとしているように見える。空母福建の最近の航行は、2024年5月以降9度目の試験航行であり、就役が近いとの観測を呼んでいる。これは2019年に「山東」が就役直前に台湾海峡を通過した経緯を想起させる。
中国共産党政府は、3隻目の空母となる「福建」で、「遼寧」「山東」と並び三空母体制を形成することになる。3隻を擁すれば、中共は一隻を整備に回し、一隻を南シナ海での訓練に、もう一隻を西太平洋での哨戒に投入できる。これにより台湾東方への戦力投射が可能となり、台湾の防衛を直接脅かすことになる。
この体制によって、台湾は中共空母打撃群の迎撃が一段と難しくなり、台湾軍は長距離攻撃の脅威にさらされる。さらに中共は、グアムと台湾の間の太平洋において、海上封鎖や接近阻止作戦を展開する能力を手にする可能性がある。

ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。