中国 集団中傷のあとに

中国の五輪金メダリスト全紅嬋が欠場 いじめ騒動後に残る疑問

2026/05/02
更新: 2026/05/02

「報奨金は、お母さんの治療費に使いたい」
「遊園地に行ったことがない。動物園にも一度も行ったことがない」

そんな言葉で多くの人の心を動かした少女が、いま競技の舞台から離れようとしている。

中国の飛び込み選手、全紅嬋(ぜん・こうせん)が2026年上半期の大会をすべて欠場することになった。理由は「けがの回復が不十分なため」と説明している。

全紅嬋は、中国南部・広東省湛江(たんこう)市の農村出身。貧しい家庭に生まれ、幼い頃から家族を支える思いで競技に打ち込んできた。

7歳で親元を離れて寮生活に入り、厳しい練習を重ねた末、14歳で東京五輪の金メダルを獲得。決勝では満点に近い高得点を2度記録するなど圧倒的な演技を見せ、一躍スターとなった。

その後も世界トップレベルの成績を残し、素朴で飾らない人柄から「応援したくなる選手」として高い人気を集めてきた。

ただ、この欠場発表の直前に起きた出来事が、今回のニュースに影を落としている。

今年4月、全紅嬋をめぐり、飛び込み界の関係者や中国国営中央テレビ(CCTV)の記者、国際審判らが関与したとされる集団中傷問題が明るみに出て、大きな波紋を呼んだ。

問題の発端は、200人以上が参加するチャットグループだ。報道によれば、「(全紅嬋を除く)他の選手への攻撃は禁止」といった内容が掲げられ、特定の選手(全紅嬋)だけを標的にする異常な状態が続いていた。

4月10日、警察当局は、全紅嬋を繰り返し中傷したとして、このグループを作成した31歳の男性に10日間の行政拘留と罰金の処分を科したと発表した。しかし、ネット上では「処分が軽すぎる」「一人に責任を押し付けて幕引きを図ったのではないか」といった批判が噴き出している。

全紅嬋が2026年上半期の大会をすべて欠場するという今回の発表では、その理由について「あくまでけがの回復が不十分なため」と説明している。だが、直前に明らかになった中傷騒動との関係には触れられておらず、競技の外での強いストレスの影響は、多く語られていない。

トップ選手であっても守られない現実。その違和感は、いまも消えていない。

李凌
中国出身で、日本に帰化したエポックタイムズ記者。中国関連報道を担当。大学で経済学を専攻し、中国社会・経済・人権問題を中心に取材・執筆を行う。真実と伝統を大切に、中国の真実の姿を、ありのままに、わかりやすく伝えます!