詐欺師一人のウソなら見破れるかもしれない。だが、周りにいる人まで全員が「役者」だったらどうだろう。
上海で、そんな映画に出てくるような詐欺事件が起きた。
被害に遭ったのは鉄鋼会社を経営する男性だ。2025年12月、10年以上付き合いのある知人から「大物経営者」を紹介され、もうかる商談を持ちかけられた。
会ったのは五つ星ホテル。相手は高級車で現れ、運転手や企業幹部を従えていた。その後も「上場企業の幹部」「外国人の買い手」などが次々に登場。銀行口座には大金があることまで見せられた。
男性はすっかり信用し、投資や商談のため次々と送金。約半年で被害額は1400万元余り(約3億円)に膨らんだ。
しかし、いつまでたっても最初に約束された取引は進まない。不審に思った男性が警察に届け出ると、驚くべき舞台裏が明らかになった。
事件に関わった9人のうち、6人がプロの俳優だったという。
大物経営者や企業幹部、外国人買い手まで「配役」だった。高級車はレンタル。銀行残高や送金記録の画面も加工して作られていた。積み上げた札束さえ、上の数枚だけが本物で、下は練習用のニセ札だった。
つまり男性は、一つのウソにだまされたのではない。人、車、札束、銀行口座、商談まで、信用させるための「舞台」そのものが作られていた。
この事件の怖さは、そこにある。
主犯格の男や詐欺に加わった複数の俳優は、詐欺容疑で逮捕された。しかし、被害男性からだまし取った約3億の多くは、すでに詐欺グループの借金返済や遊興費などに使われていたという。
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