AIが人間の仕事を奪う未来は、もう始まっている。
中国では不動産不況や消費低迷で企業が採用を減らすなか、AIの普及が若者の就職をさらに難しくしている。
中国当局が発表した16~24歳の若者失業率は17.9%。しかも、在学中の学生は含まれていない。ただし、これはあくまで当局の公式統計である。実態を十分に反映していないと国内外で広く受け止められており、若者失業は公式発表より深刻だと考えられている。さらに今年は、約1270万人の大学卒業者が就職市場に加わった。
米金融大手シティグループは、中国の仕事の約9.6%、およそ7000万件がAIに代替される高いリスクにあると推計する。20代では、その割合が13.6%に上る。
特に危ないのが、プログラマーや翻訳、事務、顧客対応、動画制作など、若者が最初に就く仕事だ。企業はAIを使って数人分の作業を1人に任せ、新卒採用や外注を減らしている。ある40歳のプログラマーは同僚約160人とともに解雇され、翻訳者の報酬は数年前の半分以下に落ちたという。
影響はさらに広がっている。郵便局では人型ロボットが荷物を仕分け、配達ロボットは数百万人の配達員の仕事を脅かす可能性がある。生成AIの利用が進む映像業界では、短編作品の数が今年1~3月、前年より約75%減った。
国際労働機関(ILO)は、電子機器の組み立てなど自動化されやすい仕事に女性が多いため、女性の方がAI失業の危険が高いと指摘する。
その一方で、AI関連の求人は増えている。しかし、職を失った事務員や翻訳者が、すぐにAI技術者になれるわけではない。高度な技術を持つ一部の人に仕事が集まり、多くの会社員は賃下げや失業に追い込まれるおそれがある。
中国で2025年に行われた調査では、無職の若者の48.4%が、AIによって仕事を失うことに不安を感じていた。そして今、その不安は現実のものになっている。AIはすでに、若者の雇用と生活を脅かし始めている。
中国政府は米国との技術競争を意識し、AIを製造業や医療、教育などあらゆる分野に取り入れる「AI+」政策を進めている。しかし、AIで生産性が上がっても、新しい雇用が十分に生まれるとは限らない。仕事を失う不安から消費が冷えれば、中国経済と社会の安定にも響く。
将来、少子高齢化で働き手が減れば、人手不足が失業を和らげる可能性はある。だが今、若者が経験を積むための「最初の仕事」が消え始めている。この変化は、中国だけの問題ではない。
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。