最近、フランス人女性がパリの地下鉄で中国人のパスポート8冊を拾い、持ち主を探すため中国共産党(中共)大使館に電話したものの、何度も電話を切られた。ところが、Googleに「星1つ」の低評価を投稿すると、ようやく大使館から返答があった。
中共はこれまで、海外に暮らす中国人を「祖国の子供」と呼んできた。しかし、中国人が海外で実際に困難に直面した際、積極的に助けようとしているとは言い難い。
今年7月末、フランス人のロレーヌ・ゲルラッハ(Loreline Gerlach)さんは、中共大使館のGoogleレビューに、パリの地下鉄で中国人のパスポート8冊を拾ったと投稿した。
ゲルラッハさんは持ち主を探すため中共領事館に電話したが、職員は彼女がフランス語で事情を説明すると、そのまま電話を切った。その後も何度かかけ直したが、電話には出なかった。
最終的にゲルラッハさんはGoogleレビューに「星1つ」の評価を付け、「これらの中国人観光客たちは本当に運が悪かった」と書き込んだ。
投稿後まもなく、パスポートの持ち主とみられる人物がコメントを寄せ、Facebookを通じて連絡してほしいと求めた。
一方、中共大使館がレビュー欄に返答したのは約2週間後だった。大使館側は、持ち主の氏名を知らせるか、パスポートを大使館へ郵送するよう求めた。それまで電話が正常につながらなかった理由について、「電話回線がつながらなかったり、自動的に切れたりすることがある」と説明した。
イギリスに留学している郭宇軒さんは「本当に技術的な問題だったとしても、領事保護を担う在外公館が、電話回線に障害が起きた際、なぜ有効な代替手段や緊急対応の仕組みを用意していなかったのか。何より不可解なのは、本来なら優先して対応すべき市民の緊急事案について、なぜGoogleマップに『星1つ』のレビューを書かなければ返答が得られなかったのかということだ。中国人を支援するための大使館なのか。それとも看板とは裏腹に、合法的な情報活動機関や海外警察署のような役割を果たしているのか」と述べた。
紛失した8冊のパスポートが最終的に持ち主の手に戻ったかどうかは、現在も分かっていない。
中共は領事保護を提供すると繰り返し強調しているが、これまでも海外で中国人が中共大使館や領事館に助けを求めたにもかかわらず、冷淡な対応を受けたとの声がたびたび上がっている。
2020年の新型コロナウイルス流行時にも、中共の海外在住中国人に対する姿勢は大きく変わった。
感染拡大の初期、中共は海外の中国人を「同胞」「祖国の子供」と呼び、一部の国外滞在者の帰国を支援した。
しかし、欧米で感染が急速に広がると、世論の風向きも一変した。
「祖国の建設にはいなかったくせに、千里を越えてウイルスを持ち込むのは誰よりも早い」
中共官製メディアのキャスターが発したこの言葉は、瞬く間にネット上で広まり、海外から帰国した多くの中国人に大きな心理的負担を与えた。
アメリカ在住の中国人、張さんは、海外の中国人も国内の人々と同様、中共にとっては搾取の対象となる「人間鉱山」にすぎないと語った。
張さんは、「2022年にロシアによるウクライナ侵攻が始まった際、多くの国が自国民の退避を始めたが、中国大使館は退避を実施しなかった。実際に戦闘が始まると、政府はウクライナにいる中国人に対し、自宅の前に中国国旗を掲げるよう求めた。その結果、現地の中国人は非常に危険な立場に置かれた。だから、中国政府には、中国人を助けようという考えなど初めからないのだ」と振り返った。
郭宇軒さんは、こうした事例は、中共が海外の中国人をどう位置づけるかが、政治的な都合によって大きく変わることを示していると指摘する。
「『海外同胞』という立場は、市民としての権利に基づく安定したものではなく、政治宣伝や統制の必要に応じて変わるものだ。
愛国的な姿勢を示すのに都合がよい時には『炎黄の子孫』と呼ばれ、中国政府が海外の華人を動員したい時には『祖国の統一戦線の一部』とされる。しかし、個人の要求が政府にとって負担になると、今度は厄介者や重荷とみなされ、場合によっては『愛国心がない』と非難されることさえある」
中共は対外的に「戦狼外交」と呼ばれる強硬姿勢を打ち出してきた。しかし、一般の中国人が実際に困難に直面した時、必要な領事支援を受けられるかどうかこそ、その姿勢を問う最も直接的な尺度となる。
近年、中国人がカンボジアやミャンマーなどに誘拐され、詐欺に従事させられるケースが相次いでいる。被害者の中には、大使館や領事館に助けを求めた人もいたが、現地警察への通報を勧められるだけで、それ以上の支援を受けられず、長期間にわたって現地から抜け出せない状態が続いたケースもある。
郭宇軒さんは次のように語った。
「『祖国はいつもあなたの後ろにいる』というスローガンは、とても温かく聞こえる。しかし、海外に暮らす多くの中国人が本当に知りたいのは、『自分が助けを必要とした時、本当に支えてくれる人がいるのか』ということだ。
宣伝映像で飛行機を使って国民を救出しているかどうかだけを見てはいけない。外交官が何度強硬な声明を出したかも重要ではない。普通の中国人が予期せぬトラブルに巻き込まれた時、真っ先に『中国大使館は対応してくれるだろうか』『電話すらつながらないのではないか』と思うのであれば、どれだけ威勢のいいスローガンを掲げても意味はない」
電話一本にもまともに応じないかもしれない「祖国」を、海外の中国人は本当に「いつも自分の後ろにいる」と信じられるのだろうか。
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