2025年1月、浙江省義烏(ぎう)市で、見知らぬ29歳女性を殺害した男に、このほど一審で死刑判決が下された。男は生活苦から社会への恨みを募らせ、無差別殺人に及んだという。
事件当日、男は女性が働く会社を訪れ、ドアをノックした。女性が扉を開けた瞬間、男は無言で刃物を振りかざし、頭や首、背中を何度も刺した。女性は死亡し、助けようとした同僚も負傷した。
男と女性は面識がなく、勤務先とのトラブルもなかった。
判決書によると、男は無職で収入がなく、家族からも生活費をもらえず、社会への恨みを募らせていたという。男には過去に複数の犯罪歴もあった。
死刑判決を知らされた女性の家族は「胸のつかえはようやく取れたが、残された傷跡は一生消えない」と語った。
中国では今年に入ってからも、無差別襲撃とみられる事件が各地で相次いでいる。
9月には広州市の商業施設で、35歳の男が通行人を刃物で襲った。
3月には武漢市で男が通行人を次々と刺し、4人が負傷。北京市では男がショベルカーで市場の人混みに突っ込み、多数の人が巻き込まれた。
同じ3月、深セン市では学生らが刃物で襲われたとの情報がネット上に流れた。重慶市では車が歩行者に衝突する事件が起き、珠海市でも女子大学生が襲われたとの情報が広まった。
しかし、中国当局による情報統制で、多くの事件は詳細や真相が明らかにされていない。SNSなどを通じて海外に伝わるのは断片的な情報にすぎず、海外からは実際にどれほどの事件が起き、何があったのかを正確に知ることはできない。
ネット上でも「失業者が増えている。もっと気をつけなければ」「今後こうした事件はさらに増える」と、社会の不穏な空気を警戒する声が上がっている。
「人混みには近づくな」「外では他人と口論するな」「知らない人を刺激するな」。中国のネット上では、こうした身を守るための呼びかけも見られる。こうした警戒は親から子どもへも伝えられ、社会全体に不安が広がっている。
生活に行き詰まったのは犯人なのに、命を奪われたのは、ただ職場のドアを開けただけの女性だった。
誰が突然、怒りの矛先を向けられるかわからない。外出するにも、人と接するにも警戒が必要になる。相次ぐ「社会報復」は、人々の命を脅かすだけでなく、社会の安心感や人と人との信頼まで奪っている。
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