10月にフランスの数百のスーパーで冷蔵設備がハッカーに遠隔操作され、使用できなくなる被害が発生したのに続き、欧州各地で冷蔵・冷凍設備を狙った新たなサイバー攻撃が相次いでいる。
11月2日までに、欧州の少なくとも7か国で数十のスーパーや小売店が被害を受けた。ハッカーが夜間に設備の設定温度を50度近くまで引き上げたため、大量の生肉や乳製品、冷凍食品が傷み、廃棄を余儀なくされた。
フランス警察と同国の国家情報システムセキュリティー庁によると、ハッカーは10月、フランス国内の最大700店舗のスーパーで冷却設備を乗っ取った。被害を受けた店舗には、アンテルマルシェ、コーペラティブU、カルフール、ルクレール、モノプリなどの大手チェーンの店舗も含まれる。
ハッカーは遠隔操作で設定温度を最高50度に変更し、霜取り運転の時間を延長した。その結果、大量の食品が傷み、火災も発生した。一部の店舗では、数万~十数万ユーロの損失が出た。
今回の攻撃はさらに、スウェーデン、オランダ、ベルギー、アイルランド、ルクセンブルク、フィンランド、エストニアにも広がっている。
欧州7か国に被害拡大 スーパーや小売店に影響
ベルギーとルクセンブルク
デレーズの親会社のアホールド・デレーズは11月2日、「IT関連の問題」が発生したことを認め、ベルギーとルクセンブルクの約40店舗で冷蔵・冷凍設備が被害を受けたと明らかにした。
ベルギーのホーイラールトにある店舗では、食品だけで10万ユーロ相当の損失が出たという。これには休業による損失は含まれていない。
カルフールはベルギー国内の700店舗以上のうち、15店舗が被害を受けたと発表した。
また、コルロイトグループがフランチャイズ方式で運営するスーパー「Spar」の5店舗も攻撃を受けた。
このほか、ガソリンスタンド「Q8」に併設された複数のコンビニエンスストア「Shop & Go」や、小型スーパー「Proxy Delhaize」でも被害が確認された。
イケアはロイター通信に対し、ベルギーのモンスにある店舗の冷蔵設備が影響を受けたことを認めた。他の店舗にも被害が及んだ可能性を排除していない。
スウェーデン
ICAチェーンでは、外部業者が提供する独立したネットワークを利用していた一部店舗は被害を免れたものの、多くの店舗が不正アクセスを受けた。スウェーデン南部のショーボにあるICA KvantumはSNSで、夜間に冷凍設備がハッカーに乗っ取られ、設定温度を50度に変更されたと明らかにした。大量の食品が傷み、廃棄を余儀なくされたという。
スウェーデンのCoopはBBCなどのメディアに対し、国内約800店舗のうち6~7店舗が被害を受けたと説明した。現在は状況を制御できているという。
アイルランド
食品卸売大手マスグレーブグループは、傘下のスーパー「SuperValu」の13店舗で、特定の機種の冷蔵ショーケースがサイバー攻撃の影響を受けたと認めた。一部の冷蔵・冷凍食品を売り場から撤去した。
オランダ
デンマークの冷却設備用制御装置メーカー、ダンフォスの広報担当者によると、オランダでは少なくとも17社で、冷蔵・冷凍設備が夜間に攻撃を受けた。被害を受けた事業者には、精肉店や地域の小規模店舗も含まれている。
エストニア
エストニア公共放送によると、スーパー大手「Selver」やほかの企業でも、冷蔵設備を制御するコンピューターが不正アクセスを受け、設定温度が強制的に引き上げられた。
フィンランド
フィンランドの小売大手ケスコは、傘下の一部の「K-store」で冷蔵設備の異常を検知したと発表した。現在、セキュリティーの専門家が調査を進めている。
冷蔵設備を遠隔操作 「霜取り運転」で温度上昇
デレーズの冷蔵設備システムを運用するベルギーの設備施工会社サブコベルのステファン・モーランスCEOは、ベルギーメディアに対し、ハッカーがネットワークに侵入し、冷蔵・冷凍設備の蒸発器を強制的に霜取り運転に切り替えたと説明した。
これによって設備内の温度が急激に上昇した。技術者らは午前1時から対応に当たり、被害を受けた設備をネットワークから強制的に切り離した。
欧州の多くのスーパーでは、遠隔保守や故障時の警報を行うため、冷蔵設備をインターネットに接続している。ハッカーは主に、デンマークのダンフォスなどが製造する制御装置のセキュリティー上の脆弱性を悪用した。警報システムを無効化したうえで、温度設定を改ざんした。
ダンフォスは、関連する脆弱性を昨年把握しており、顧客にセキュリティーパッチを適用するよう継続的に呼びかけてきたと説明した。
一方、サブコベルは、この脆弱性を完全に修正するには、ソフトウェアの更新だけでは不十分で、設備の物理的な構造にも変更を加える必要があると指摘している。
欧州各国が調査 米軍基地の設備故障との関連も確認
欧州委員会は11月2日に声明を発表し、サイバーセキュリティー上の脅威が一般市民の日常生活にもますます大きな影響を及ぼしていると警告した。
ベルギーとスウェーデンの国家サイバーセキュリティー機関は、すでに事態の監視を始めている。
スウェーデン国家サイバーセキュリティーセンターのヨハン・ビロウ責任者は、ここ数週間で、インターネット上に露出した多数の運用技術機器が見つかり、早急に更新する必要があると強調した。
BBCによると、英国の国家サイバーセキュリティーセンターも海外の関係機関と連携して調査を進めている。ただし、現時点で英国内では同様の被害は報告されていない。
一方、米国当局は、8月に複数の米軍基地で発生した冷蔵設備の故障原因も調査している。フランス当局と協力し、これらの故障と欧州のスーパーへのサイバー攻撃に関連があるかどうかを調べている。
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