たった一度の交通違反の取り締まりが、生活を支える仕事を続けられなくなるきっかけになるかもしれない。
中国・上海で、交通警察に呼び止められた配達員が突然、川に飛び込む騒動が起きた。背景には、厳しい競争の中で働く配達員たちの苦境があるのではないかと、ネット上で議論が広がっている。
11月3日、上海市の蘭溪路付近で、料理を配達中の男性が交通警察に停止を求められた。しかし男性は応じず、そのまま通り抜けようとした。
警察官は応援を呼び、男性の電動バイクを取り押さえた。すると男性はバイクを置いて徒歩で立ち去り、警察官2人が後を追った。その直後、男性は突然、道路脇の川へ飛び込んだ。
幸い、川はそれほど深くなく、水位は男性の首元ほどだったため、溺れることはなかった。しかし男性は川の中に立ったまま、岸に戻ろうとしなかった。駆けつけた消防隊員が救命浮輪を投げ入れても受け取らず、最後は消防隊員によって強制的に引き上げられた。
なぜ、そこまで抵抗したのか。
中国のフードデリバリー業界では、配達員は厳しい時間制限と競争にさらされている。配達が遅れれば罰金を科され、次の注文を受ける機会も減り、収入がさらに減ってしまう。
配達を急がなければ稼げない。しかし、急いで交通違反をすれば罰金を科され、バイクを取り上げられれば仕事さえ続けられない。そんな板挟みの中で、配達員たちは働いている。
今回の男性が実際にどのような事情を抱えていたのか、川に飛び込んだ直接の理由は明らかになっていない。
それでも、救命浮輪さえ拒み、川から上がろうとしなかった姿は、多くの人に衝撃を与えた。
ネット上では「ラクダの背骨を折る最後の一本のわらだったのでは」との声も上がった。どんなに小さな負担でも、苦労が積み重なった末の最後の一押しになり得るという意味だ。
以前にも、取り締まりを受けた配達員が警察官の前でひざまずき、地面に頭をつけて見逃してほしいと懇願する動画が拡散されている。大の大人が人前でひざまずき、頭まで下げて許しを請う。その姿からは、仕事を失うことへの切実な恐怖と、生活に追い詰められた人々の苦しさが伝わってくる。
今回、川に飛び込んだ男性も、ひざまずいて許しを請う配達員も、何をそこまで恐れていたのか。
一日の稼ぎを失うことさえ、生活を揺るがしかねない。そんな厳しい現実が、中国の配達員たちを取り巻いている。
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