中国製の低価格商品の世界への衝撃波、各国に迫られる対策

2024/04/25
更新: 2024/04/25

中国当局が低価格商品を大量に輸出することが、過去20年以上にわたり世界の製造業に与えてきた影響の新たな波を形成している。今回は世界各国が対策を立て、積極的に対抗している。

中国当局が大量に輸出する低価格商品は、世界各国の製造業に再び大きな衝撃を与えている。世界の経済大国から新興国まで、中国製品の流入に対抗するための新たな戦略が模索されている。本記事では、中国当局の経済政策が国際市場に与える影響と、世界各国が取り組む対策を深掘りする。

中国経済の成長の牽引役となってきた不動産市場が停滞している中、中国当局は製造業支援に迅速に方針転換し、経済の新たな活力源とすることを目指している。そのため、過剰生産の問題が現れた。中国共産党は、これらの低価格商品を世界の市場に積極的に輸出し、中国の製造業が世界にリスクをもたらしている。これに対応する形で、世界各地で対抗策が講じられている。

中国製の格安商品の世界市場への影響と各国の対策

中国国内の需要が減少する中、中国企業は新たな海外市場を模索し、国内で処理しきれない過剩生産の商品を販売している。これが、自国の製造業を育成し経済発展を目指す国々にとって、大きな妨げになっている。

米紙ウォール・ストリート・ジャーナルの報道によれば、中国からの輸入品が増えた結果、ブラジルの化学産業の生産量が過去最低の水準にまで落ち込んだ。昨年のブラジルの化学工場の稼働率は64%にとどまり、業界団体Abiquim(ブラジル化学工業協会)が統計を取り始めて以来の最低記録を更新した。同会の経済担当ディレクター、ファティマ・コビエロ・フェレイラ氏は、工場の閉鎖や大量解雇を避けるために、中国製品に対する緊急関税を提案している。

アメリカと欧州連合(EU)は、中国製の電気自動車(EV)や再生可能エネルギー関連機器に対する貿易規制を強化する方針を明らかにした。EUは中国の新エネルギー車を含む製品に関して複数の貿易調査を開始し、ホワイトハウスも、中国製EVが国家安全保障に与えるリスクを検証すると発表した。

バイデン大統領は、中国当局が不正な手段を使って自動車市場を支配しようとしていると批判し、そのような行為がアメリカの安全保障にとって脅威であると指摘。自身の任期中にはこれらの行為を許さないと強く宣言した。

ブラジルやインド、メキシコ、インドネシアなどの新興国は、鋼鉄や陶器、化学製品といった中国製品に対して、市場価格よりも低いダンピング価格で販売されているとして対策を打ち出している。

例えば、インドでは中国からのボルト、スクリュー、フレームレスミラー、真空ボトル、ステンレス容器、工業用部品、硫化黒などに対して反ダンピングの調査を開始。

インドネシアも、中国製の合成繊維フィラメント糸に反ダンピング調査を実施し、陶磁器製の溶けた塊には新たに反ダンピング税を課すことを決定した。

アルゼンチンでは、中国製ヒーターに43.47%の反ダンピング税を課し、エレベーターに関しても反ダンピング調査を実施している。

イギリスでは、中国製の掘削機やEVに対して、不公正な価格設定や補助金に関する調査が行われている。英国の大手建設機械メーカーJCBは、中国の不動産市場の長期的な不振により、国内での掘削機需要が減少していると指摘。これが原因で、中国のメーカーが海外での価格を大きく下げていると分析している。JCBはこの価格競争に巻き込まれ、掘削機の価格を下げざるを得なくなり、結果として赤字に陥り市場シェアも落ち込んでいるという。このような状況が、イギリスが中国企業に対して反ダンピング調査を開始する動機となっている。

中国製品の輸出増加は、世界中の産業に影響を及ぼしている。チリ最大の鉄鋼メーカー、キャップは、3月に製鉄所の運営を停止すると発表した。同社の幹部は以前から、40%も安い中国製の鉄鋼に対抗することはできないと吐露していた。

製造業保護のための国際的な動きと戦略

チリ政府の委員会は、中国からの鉄鋼輸入に対して15%の関税を提案しているが、キャップ社はさらに厳しい25%の関税を求めている。

独立系の通商政策監視機関グローバル・トレード・アラート(GTA)が発表した統計によれば、昨年初め以降、世界の国々は70件以上の中国向け輸入規制措置を打ち出している。

昨年から今年にかけては、中国製品に対する介入措置が300件を超えると予測されており、これには反ダンピング調査、輸入関税、割り当て制限などが含まれている。

アメリカを含む西側諸国は中国製品への依存を減らし、中国に関連するリスクを縮小することを目指している。

中国の格安商品が海外市場に進出する現象は、1990年代末から2000年代初めにアメリカと世界経済が経験した「チャイナショック」が再来しているようだ。その際、中国製の安価な商品が市場に溢れ、外国製造業の雇用が減少した。経済学者らは、1999年から2011年の間に、中国からの輸入を増やすことによってアメリカは200万以上の雇用を失ったと指摘している。

米財務省長官、中国経済モデルに批判

4月5日、訪中した米ジャネット・イエレン財務省長官は、格安商品の輸出に頼る中国の経済モデルは持続可能ではなく、急速な成長は見込めないと警告。また、供給に一方的に焦点を当て、需要の創出をないがしろにする政策は、世界経済に負の影響を与えると強調した。

さらに、イエレン氏は、中国の過剰生産が世界経済に与える影響に対する懸念が高まっていると指摘。

イエレン氏をはじめとする米高官らは、中国のEV、太陽光パネル、半導体などの製品の世界市場への大量流入に深刻な懸念を示している。イエレン氏によれば、これは中国当局にも不利であり、世界の他の製造業者にも害を及ぼしているとのことである。

ブルームバーグは過去に、中共(中国共産党)が製造業の支援策を変更することで、新たな貿易戦争が起こる可能性があると報じていた。

ビジネス・インサイダーの報道によれば、経済調査会社のキャピタル・エコノミクスのチーフエコノミストであるニール・シアリング氏は、11月に行われる米大統領選挙で、勝者がトランプ前大統領であれバイデン大統領であれ、中共の現行の経済政策が将来的に貿易戦争を招くリスクがあると述べた。

張婷
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