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ノーベル経済学賞受賞者のポール・クルーグマン氏 (PAUL J. RICHARDS/AFP/Getty Images)

金融危機後の銀行の有り方、「カナダに習うべき」=米経済学者

 【大紀元日本2月10日】2008年のノーベル経済学賞を受賞した米国経済学者のポール・クルーグマン氏はこのほど、米紙「ニューヨークタイムズ」に寄稿し、金融危機後の金融機関のあり方について、カナダのような「何の変哲もない銀行システムがいい」とし、「何の変哲もないシステムのため、リスクが低く、金融危機の中で銀行や金融機関が打撃を受けることがない」と指摘した。現在、金融改革を進めようとする米国およびその他の国にとって、カナダの銀行システムは重要なモデルであるとの見解を示した。

 過去十年において、国際環境に置かれた米国とカナダの境遇は似通っていた。両国は共に、アジアからの安価な商品と低金利資金の氾濫に直面しているが、カナダの金融機関は金融危機の中で存続することができた。これに関して、クルーグマン氏は「政府の政策金利とは無関係だ」とし、「多くの人が、連邦準備制度理事会(FRB、中央銀行)が設定した金利水準が低く、実施期間があまりにも長いことが、今回の住宅市場バブルと金融危機の発生の主な原因だと指摘しているが、カナダの政策金利は長期的には米国の金利と連動しているにもかかわらず、金融危機の影響を受けていない」事実を指摘した。

 また、同氏は米国の金融機関の規模が大きくなりすぎて潰せない(too big to fail)との論調にも賛成できないとした。シティグループやバンク・オブ・アメリカのような規模が大きく知名度の高い投資銀行や商業銀行を多く有する米国と違って、カナダの金融業界は主に5つの主要銀行(カナダ・ロイヤル銀行、トロント・ドミニオン銀行、ノバスコシア銀行、モントリオール銀行、カナディアン・インペリアル商業銀行)に支配されている。カナダ全国で合わせて8千以上の支店、全国各地に設置するATMが1万8千台で、従業員総数30万人を抱えるこの5大銀行は、ほとんどのカナダ国民の生活と深く関わっており、米国の金融機関よりも「規模が大きくなり過ぎて潰せない」金融機関に十分相当する。

 しかし、金融危機で相次いで破たんの状況に追い込まれ、国から援助を受ける他の欧米など大手金融機関と違って、国からの救済を必要とするカナダの銀行は一つもなかった。そこで多くの金融専門家に注目されたのはカナダの銀行経営の健全さだった。2008年10月に開催された「世界経済フォーラム」において、カナダの銀行は「銀行の健全度評価」で最高の点を獲得した。タイムズ誌も2008年11月10付の記事「Why Canada’s Banks Don’t Need Help」(なぜカナダの銀行は助けを必要としないのか?)で、カナダの銀行の経営状態は世界一だと報道している。

 経営が健全なカナダの銀行は、下記の2点で、米国の銀行とは大きく相違する。まず政府は金融機関に対して「銀行の総資産は自己資本の20倍を超えてはならない」と定めている。バーゼル規制(BIS規制)では、カナダの銀行の自己資本比率は13%に達している(※)。言い換えれば、カナダ政府は銀行のレバレッジ(銀行が借入資本に依存する程度のこと)規制を非常に厳しく設定している。

 また、住宅ローンにも厳しい規制がある。住宅購入資金の80%以上の担保が保証されなければならない。住宅ローンの3分の2は、特殊法人であるカナダ住宅金融公庫(CMHC)が保証する。CMHCの審査は非常に厳格で、返済可能なローンしか組ませてもらえない。米国のサブプライムローンのような、信用度の低い人向けのローンは存在しない。ローンの証券化も許可しない。住宅取得には税制面の優遇は全くないので、一般の人々は、できる限り早くローンを返済したいと感じている。

 クルーグマン氏は、レーガン政権前の米国の銀行システムも「何の変哲もない」ものだったと振り返る。レーガン前大統領が大統領に就任した当時、米国経済はスタグフレーション(景気が下がり物価が上昇すること)の状態にあった。景気回復を図るために、レーガン政権は減税や投資を促進するための金融規制緩和などの経済政策を打ち出した。クルーグマン氏はレーガン政権の金融規制緩和のおかげで、米国の銀行システムは「危険なほどに興味深いものになった」と語る。しかし、この銀行システムは、金融危機に瀕して住宅ローンの焦付き件数が急増するとともに、深刻な打撃を受けることになる。

 一方、クルーグマン氏は「昨年12月に米国で可決された金融改革法案は、実際のところ、米国の銀行システムをカナダ化することになる」とし、「しかし、この法案が上院で通過するには60名の議員の同意を得なければならないが、現在通過が難しいと思われる。共和党は断固として反対の姿勢を示している。民主党の一部の議員はまだ態度を決めかねている。同法案が上院で可決しない場合、将来の金融危機の防止のために、われわれは何もしなかったことになるだろう」とクルーグマン氏は懸念している。

(※)バーゼル規制(BIS規制)では、国際決済銀行(BIS)は銀行の経営健全性強化を目的とし、国際業務を行う銀行の自己資本比率を8%以上に維持しなければならないと定められている。同規制は1988年に主要10カ国で導入された。

(翻訳編集・張哲)


 (10/02/10 08:21)  





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