欧米諸国、中国の鉄鋼生産の独占に対抗か 新たな関税交渉へ

2023/09/16
更新: 2023/09/15

米国と欧州連合 (EU) は、中国や他の国々からの過剰な鉄鋼生産に対して新たな関税を導入するための合意に取り組んでいる。

評論家は、これによって中国共産党(中共)による鉄鋼ダンピングを阻止できる一方、欧米諸国が自国の鉄鋼サプライチェーンを再構築できると分析している。

ブルームバーグは関係者の話を引用し、米国とEUは中国および他の国からの過剰な鉄鋼生産に対して新たな関税を導入する協定を策定していると報じた。

課税対象は主に非市場慣行の恩恵を受ける中国からの輸入品となる。具体的な措置や関税のレベルについては、まだ議論中。

2018年、トランプ政権はEUからの鉄鋼輸入に25%の関税を、アルミニウム輸入に10%の関税を課した。トランプ氏の行動は、中国の生産能力の過剰を制限することを目的としていた。

米商務省は2018年に、2001年以降、特に中国からの鉄鋼の輸入が増加し、その結果、米国の鉄鋼工場の半分が閉鎖され、鉄鋼産業の雇用が35%減少したと述べている。

過剰の生産能力 世界に影響を

中国は世界最大の鉄鋼生産国だ。ベルギーに本拠を置く世界鉄鋼協会の統計によると、2022年の中国の粗鋼生産量は10億1800万トンで世界総生産量の約54%を占め、世界各国の生産量の合計を上回る。

2000 年以来、世界の粗鋼生産は 122% 急増し、そのほとんどが中国で生産されている。同じ期間に中国の生産は 735% 急増したが、北米の生産は減少した。中国と北米を除いて、世界のその他の地域における生産の伸びは平均して 30% 未満だった。

中国の鉄鋼生産量は年々急増しており、鉄鋼輸出も増加している。2015年、中国の鉄鋼輸出量は1億トンを超えた。中国の過剰生産能力と輸出ダンピングはさまざまな国に影響を与えている。

世界鉄鋼協会は2015年6月の共同声明で、世界の鉄鋼の半分は中国で生産されているが、中国の生産能力は深刻に過剰であると述べた。

グローバル経済と需要がともに低迷する中で、すべての地域が「不当な輸入急増」に見舞われ、共同声明にはアジア、米国、欧州の鉄鋼業界 8協会が参加した。

2011年~2015年にかけて、中国の鉄鋼生産の急増により世界の鉄鋼価格が57%急落し、世界中で数千人の労働者が職を失った。中国の鉄鋼産業の急成長は、中共の支援政策に起因している。

ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は2018年12月27日、中国の鉄鋼メーカーは、中国政府からのさまざまな補助金により、米国市場よりも20~40%低い価格設定が可能だとアナリストが述べたと報じた。

2006年、米国の規制当局は初めて中国鉄鋼輸入に対して措置を講じたが、調査の結果、中共政府の鋼管補助金が製品価格の30~45%に達していたことが判明した。

中国では、製鉄所、特に大規模製鉄所は基本的に国有企業である。これらの企業は、無償の土地、低価格のエネルギー、政府資金、低金利融資などの支援を受けることができる。これに対し、西側企業の大多数は民間企業で、これは中共が国全体の力を使って外国の民間企業と競争していることを意味している。

コストをさらに削減するために、中共は近年、一連の大規模な統合を実施してきた。

2016年9月、中国国務院・国有資産監督管理委員会は、上海の宝鋼集団と湖北省の武漢鋼鉄集団の統合を実施し、中国宝武鋼鉄集団と改称したことを通知した。

その後、宝武集団は安徽省の馬鞍山鋼鉄、山西省の太原鋼鉄、重慶鋼鉄、北京の中山鋼鉄、新疆の八一鋼鉄、雲南省の昆明鋼鉄を吸収合併し、世界最大の鉄鋼大手となった。

2021年8月、遼寧省国有資産監督管理委員会は本鋼集団の株式51%を、鞍鋼集団に無償譲渡する契約に調印した。統合後の鞍鋼の粗鋼生産能力は世界第3位にランクされた。

2022年の世界の鉄鋼企業のランキングのトップ10は、中国が6社を占めている。

ノースイースタン大学財政学部の邱万鈞(きゅう・ばんきん)教授は9月12日、エポックタイムズに応じ、通常のビジネス競争とは異なり、中共の最終目標は単に「利益の追求」ではなく、競争相手を「排除」することだと語った。

商業活動はコストを削減して利益を追求するものだが、多くの産業における中共の戦略はそうではない。「中共のやり方は、相手の製品はいくら品質が優れていても、すべての潜在的な競合相手を何とかして排除することを目指している。中共は低価格で市場からすべての競合相手を消し去り、業界を独占する」

欧米が交渉している中国鉄鋼に対する関税協定に関して、邱氏は欧米各国は中共に対し、警戒感が高まっていると指摘した。関税の引き上げは、中共による鉄鋼ダンピングを事実上阻止し、これらの国々が自国の鉄鋼サプライチェーンを再構築することを可能にする。

「自国の鉄鋼サプライチェーンを再構築することは価格上昇につながるが、国家安全保障の観点から、西側諸国は一時的な経済的利益を放棄し、脱中国依存に伴う損失を受け入れなければならないことを理解すべきである」と邱氏は述べた。

易凡
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