中国共産党(中共)が改定した「出境入境管理に関する規定」(以下規定)には、中国国民の出境について「必要な場合には渡航を思いとどまるよう勧告しなければならない」とする条項や、特定の状況では「当事者に通知しなくてもよい」とする条項などがあり、出境の自由、行政権限の拡大、秘密裏の出境規制を巡って広く懸念が生じている。
流出した新疆公安当局の内部文書からは、中共の公安システムがすでに52種類の人員を対象とした出入境管理体制を構築していたことが明らかになった。
分析によると、新疆で既存の出入境規制の仕組みから新版「規定」に至るまで、中共による出境者への管理は、対象範囲の拡大、基準の曖昧化、行政権限の強化といった傾向を示している。
新規定の制定は「緊急性の高いものを先行」
中国共産党国務院は2026年7月末、改定版「出境入境管理に関する規定」を公布し、9月15日に正式施行した。
規定の公布後、中共当局は、出境後に技術を国外へ移転し、輸出規制に違反したり、国家の産業安全や技術安全を脅かしたりする者については、法律に基づき出境を認めないと説明している。
新規定は対象範囲が広く、運用の余地も曖昧であることから、人々の懸念を招いている。
新規定第2条は、出境を予定する中国国民について、リスクと安全の観点から、必要な場合には渡航を思いとどまるよう勧告しなければならないと定めている。
この勧告の根拠と定義には客観的な基準が欠けているとみられており、出入境検査当局の権限が極度に拡大され、一般市民の自由な出境を恒常的に制限する行政手段へと発展する可能性がある。
規定第6条はさらに、出境を認めない者について「当事者に通知しなくてもよい」と定めている。
台湾の国防安全研究院研究員、沈明室氏は、「当事者に通知しなくてもよい」という規定は「秘密裏の出境規制」であると指摘した。
沈氏は「これは法輪功の人々を拘束する場合に少し似ている。当事者に通知する必要も、家族に通知する必要もなく、当局が拘束すべきだと考えれば拘束するということだ。当事者の基本的権利や社会全体に非常に大きな影響を及ぼす」と述べた。
中共による新「規定」の改定・導入は、かなり唐突な印象を与えている。中共国家移民管理局の公式サイトには専門家による解説が掲載され、今回の「規定」の導入は「緊急性の高いものを先行させる」もので、必要な部分を迅速かつ機動的に制度化する手法は、立法技術上の革新だとしている。
大紀元、新疆の出入境規制内部文書を入手
新版規定の導入に伴い、多くの中国国民がパスポート申請や出入境手続きを行う際になって初めて、自分がすでに出入境規制の対象になっていたことを突然知るケースが出ている。中国各地の出入境検査所でも、出入境を阻止された事例が相次いで伝えられている。
自由時報などの報道によると、8月18日、上海から米シアトルへ向かう航空便では、乗客の半数が搭乗を禁止された。また、携帯電話などの情報を徹底的に検査され、問題が見つからなかったにもかかわらず、搭乗を許可されなかった人もいた。ある中国国民は「恐ろしすぎる。プライバシーがまったくない」と驚きの声を上げた。
これは少なくとも、新規定が正式施行される前から、中共の出入境検査当局など関係部門が、関連する出境規制をすでにひそかに実施していることを示している。
しかし現在、外部からは中共当局による具体的な出入境規制の内容を知ることはできない。ただ、関連情報を総合すれば、その管理対象、範囲、論理を大まかに把握することはできる。
2026年8月25日、大紀元時報のウェブサイトは独自記事を掲載し、中共が52種類の人員に対して出入境規制を実施するための内部文書を公開した。
この2017年の新疆公安当局の機密文書「イリ州直属公安機関『再流入防止』業務手冊(2017)」(以下、手冊)によると、中共の公安システムが出境制限対象者を指定する際、自治区レベルから地方の末端機関まで延び、各段階で規制対象を追加していく縦型の管理体制が存在していた。
52種類の人員が出入境規制の対象
この管理体制には、新疆公安庁が設定した35種類の出境制限だけでなく、地方公安部門が管轄地域の状況に応じて追加した17種類の重点警戒対象も含まれている。
手冊によると、最上位のレッドラインに位置付けられているのは、新疆公安庁が定めた35種類の出境制限対象者である。出境制限の基準として、まず新疆公安庁が17種類の出境制限対象者を設定し、その後、新たに18種類の出境制限対象者が追加され、合わせて35項目の出境レッドラインとなった。
新疆公安庁が指定した17種類の出境制限対象者の範囲で最初に挙げられているのは、「重点対象者および特殊集団(国家安全保衛部門の重点対象者、政権転覆・破壊対策分野、キリスト教・カトリック分野、邪教重点対象者を含む)」である。
また3番目に、「国内の『三股勢力』の首謀者、中核メンバー、構成員およびその直系親族(両親、配偶者、子ども、兄弟姉妹。以下同じ)と主要関係者」が挙げられている。当局は三股勢力を、民族分裂勢力(分離・独立を目指す勢力)
、宗教極端勢力、暴力テロ勢力と規定している。
新疆公安庁が新たに追加した18種類の出境制限対象者には、「公然またはひそかに、流行の服装をした市民を追い回し、罵倒し、脅迫する者」などが含まれており、多くの条項で概念の定義が極めて曖昧である。
イリ地方公安当局が追加した条項では、警戒の重点が、いわゆる再流入防止、すなわち国外の人員、思想、資金などが再び国内へ浸透することを防ぐ方向へ移っている。
手冊によると、イリ州当局は再流入防止特別プロジェクトを実施するため、新疆の出境制限に関する規定を執行すると同時に、別途、8大類の再流入防止対象者と9種類の重点対象集団、合わせて17種類の警戒対象を設定していた。
その中心的な論理は、関係者が国外で敵対勢力や宗教組織から寝返り工作や訓練を受けたり、特定の身分を利用して帰国後に情報や資金のルートを構築したりすることを防ぐというものである。
手冊はさらに、イリ当局が定めた「国外のテロ関係者およびその親族、主要関係者」などを含む8大類の再流入防止対象者の範囲を列挙している。
公安当局の主観的判断に全面的に依存
手冊が定める35種類の出境制限対象者を見ると、留学、資産の処分、通信手段の使用、さらには家族関係や社会関係なども、中共当局がリスクを判断する根拠となる可能性がある。また「公安機関が認めるもの」という基準のほか、敏感な国、敏感な時期、敏感な集団、敏感な家庭背景など、比較的曖昧な基準も存在する。
文書は「家庭の経済条件が一般的である者が国外留学すること」までリスクとして挙げている。この規定は非常に理解しがたいものとみられている。一般的には、経済状況と国外留学の間に内在的な関連性はなく、ましてやリスクが存在するとは考えられていない。
沈明室氏は、こうした規定は一見すると理解しがたいが、実際には「中共による再流入防止と新型出入境規制の論理の下では、末端管理の運用方式に完全に合致している」と指摘した。ただし、受動的な制限から能動的な警戒へと変わることで、「行政機関に非常に大きな管轄権を与え、主観的な認識に基づいて能動的に制限できるようになる」と述べた。
習近平、権力維持のため管理を強化
流出した52種類の人員リストを見ると、対象には事件関係者やテロ関係者だけでなく、留学生、出境後に帰国していない者、その親族なども含まれている。この管理方式と対象範囲は、これまでで最も厳格かつ広範な出入境規制であるとみられている。
中国問題専門家の李林一氏は大紀元に対し、「この文書を見ると、中共による監視は、われわれが認識し、想像していた以上に厳しい。つまり、中共はこの政権の安定維持を極めて厳しく捉えている」と述べた。
李氏はさらに、「習近平が権力を掌握して以降、自らが権力を失うことを非常に恐れている。そのため、さまざまな配置や手段は、歴代の前任者以上のものとなり、中共体制を『過度な安定維持』の状態に置いている」と指摘。「大量の人的・物的資源を費やし、権力を失うことや、この体制が転覆されることを防いでいる」と述べた。
李氏は、中国経済の減速に加え、中共の過度な安定維持体制によって、中共の力や国力は徐々に衰えていくとみている。今後は別の問題が生じる可能性もあり、例えば民生分野への投入不足によって、民衆の反発や騒乱などが引き起こされる可能性があるとした。
沈明室氏も、手冊から規定に至る流れを見ると、習近平自身と中国共産党政権に対する不安感が、管理強化につながっているとみている。中共が警戒する対象は、もはや一部の反対者ではなく、社会全体になっているという。
沈氏は、その管理について「もはや特定の集団や地域を対象としたものではなく、全国へ拡大された総力戦であり、戦時体制に似ている」と述べた。
責任編集:孫芸
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