悪魔が世界を統治している 九評編集部:悪魔が世界を統治している

第十八章:中国共産党のグローバルな野望(上)

2019/12/08
更新: 2022/05/23

目次

序文

1. 中国共産党の野望―アメリカに取って代わり、世界を支配する

a. 中国共産党は常に世界支配を目論んでいる
b. 世界支配に必要なのはアメリカの打倒
c. アメリカを転覆させ抑制する中国共産党の多面的戦略
d. 反米をあおり、対米戦争に備える中国共産党
e. すでに中米関係の意図を隠さない中国共産党

2.中国共産党の世界支配戦略

a. 一帯一路はグローバル化の仮面をかぶった領土拡大
b. アジア太平洋地域からアメリカを排除する中国共産党の戦略的辺境
c. 「分割して統治する」―アメリカから分離されたヨーロッパ
d. 「中国モデル」を輸出し、アフリカを支配する中国共産党
e. ラテンアメリカへの進軍―米国の裏庭へ侵入
f. 軍事的野望を誇示する中国共産党

参考文献

 

序文

 

20世紀初頭、ソビエトの共産主義が暴力的に起こしたロシア革命は、共産邪霊がさらなる舞台をお膳立てするための布石だった。舞台の主役は、もちろん中国共産党である。

1921年、共産主義インターナショナル(コミンテルン)極東支部が中国共産党を設立した。その後数十年間、欧米の民主陣営と対立し、冷戦という世界の表舞台で主役を演じたのはソビエトだった。欧米諸国はソ連と東欧衛星国を共産主義陣営とみなし、敵として警戒した。一方、中国共産党はその間に政権樹立と成長の時間を十分に与えられた。

1991年、ソビエト連邦が崩壊し、世界の表舞台には中国共産党のみが残った。中国共産党は正面衝突を避ける全く新しいアプローチを取ることにした。自国の市場経済を開放して諸外国を惹きつける一方、専制政治を死守するという作戦である。そのため、多くの欧米の専門家や政治家、ビジネスマンたちは、中国共産党を共産党とは認識せず、むしろその変種くらいにしか見ていなかった。

しかし、彼らの認識は事実とかけ離れていた。中国共産党は共産主義の特徴である虚偽、悪意、闘争というイデオロギーを頂点に据え、数千年間人類が蓄積してきた最も有毒で狡猾な、あらゆる政治的陰謀を繰り広げた。中国共産党は人々を利益で誘惑し、権力で支配し、嘘で騙した。その悪魔的な技は、すでに頂点を極めた。

中国には五千年の歴史に育まれた壮麗な伝統文化がある。人々は先人の国土を敬い、世界はその遺産を称賛した。一方、中国共産党はこの中国に対する人々の憧れを利用した。中国共産党は政権を掌握した後、「中国」と「中国共産党」という言葉の概念を混乱させた。中国共産党は、中国の「和平崛起」(平和的な台頭のこと)を掲げ、真の動機を国際社会から隠ぺいすることに成功した。

しかし、中国共産党の本性が変わることはない。共産党の経済戦略とは、単に「市場経済」から栄養を吸収し、自身の社会主義体制を強化することである。中国共産党の真の目的は中国の繁栄と成功ではなく、その支配を安定させて野望を実現することである。【1】 実際、中国共産党は基本的な倫理や普遍的価値観を全く無視している。

人類が築いてきた国家は、先人の智慧と彼らの々に対する信仰の上に成り立っている。人類は創造主から与えられた行動基準、つまり高い道徳的気質、私有財産の権利、普遍的価値観を守るべきである。社会の経済発展は、それに見合った道徳基準によって支えられる。

しかし、中国共産党が率いる中国は全く反対の道をたどった。中国は露骨に道徳の堕落を奨励しながら、猛スピードで経済発展を遂げた。共産邪霊が中国の「経済の奇跡」を按排した理由は単純である。経済力がなければ、中国共産党が世界を口説いて影響力を行使することなど不可能だからだ。邪霊の目的は中国や中国人に利益をもたらすことではなく、単に人々を拝金主義に仕立てるためであり、そうすれば国際社会は経済や国際問題において中国共産党に協力するようになるからだ。

一方、国内において、中国共産党は市場経済システムの最も冷酷な部分を使って人々を支配した。悪党に報酬を与え、善良な人々を罰し、最も狡猾な悪人を成功者と褒めたたえた。中国共産党は人間の悪の部分を増長させ、無神論を利用して人々が良心の呵責も感じなくなるほど堕落することを促した。

海外において、中国共産党は「中国式社会主義」(つまり共産主義)を宣伝した。潤沢な経済利益に釣られた自由社会の人々は警戒心を解き、道徳的な信念を放棄し、中国共産党による人権侵害や宗教弾圧にも目をつぶった。多くの欧米の政治家や企業家たちは経済利益と引き換えに良心を裏切り、中国共産党に協力した。

欧米諸国は中国共産党の平和的な変革を願い、それを助けようとしていた。中国はもちろん表面的にはかなり現代化し、西洋化したが、その根底にある本性は全く変わっていない。過去数十年間、中国共産党はアメリカの道義的責任に泥を塗り、国民の意志をドブに捨てた。

中国共産党は共産主義の主要な武器であり、全世界の脅威である。共産邪霊が中国共産党のグローバル化を進めた理由は、その毒素を世界の隅々にまき散らし、人々が伝統や神々に背くようにするためである。たとえ共産党による世界支配が成功しなかったとしても、その根底にある真の目的、つまり人々の道徳を腐敗させることはできる。人々を経済利益で誘惑し、債務の罠をしかける。政治制度に浸透し、軍事力で脅し、プロパガンダで混乱させるのである。

われわれは最大の危機に直面している。従って、中国共産党の野望、戦略、陰謀、目的を詳細に検証する必要がある。

 

1.中国共産党の野望―アメリカに取って代わり、世界を支配する

 

a. 中国共産党は常に世界支配を目論んでいる

中国共産党は地域的な覇者で満足することはなく、世界支配を切望している。それは同党の独裁性という生来の性質上決められている。中国共産党の本性は天、地、伝統に逆らう。「旧世界」を破壊するために暴力に訴え、「人類を解放する」という偽りの目標のために、すべての国家と階級を破壊する。その不変の使命は、世界が共産主義イデオロギーによって支配されるまで永続的に拡大する。共産主義の教義と実践は、まさに「グローバル化」である。

しかし、かつては伝統文化が根強かったため、共産主義は緩慢で遠回りのアプローチを取ることにした。ソビエト連邦のスターリンは「一国社会主義」を主張した。一方、最近の中国共産党は「中国式社会主義」を掲げている。

各政党が権力を共有しながら政権を循環させる欧米式民主主義とは異なり、中国共産党には絶大な権力が集中する。従って、同党は10年から100年という長期的な戦略計画を練ることができる。

1949年の政権樹立直後、中国共産党は「イギリスを超え、アメリカに追いつく」というスローガンを掲げ、大躍進へと突進した。大躍進政策は破滅的な失敗に終わり、後に国内的にも対外的にも不利な情勢が続いたため、同党はその後数十年間、低姿勢を続けた。

天安門事件の後、世界は中国共産党を厳しく批判した。当時、同党は世界情勢を読み、アメリカと直接対決する段階ではないと判断した。同党は世界の舞台で目立つよりも、まずはその強みを隠し、時を稼ぐ道を選んだ。それは中国共産党がその目標を変えたからではなく、時期や状況によって異なる戦略を使うことにしたからである。同党の目標は常に世界の覇権である。

共産邪霊のやり方は、古代中国の「明修桟道、暗渡陳倉」(偽装工作と奇襲をあわせる戦術のこと)である。最初に共産主義政権をソ連に樹立したが、その真の目的はソ連に中国共産党を育てさせ、成熟させることだった。

b. 世界支配に必要なのはアメリカの打倒

第一次大戦後、最強の国家として世界秩序を維持してきたのはアメリカである。この秩序を覆したい国は、まずアメリカを打倒しなければならない。従って、中国共産党の戦略は、必然的に打倒アメリカである。中国共産党がアメリカに対する総攻撃の準備を怠ったことはない。

マイケル・ピルズベリー(Michael Pillsbury)は著書『The Hundred-Year Marathon: China’s Secret Strategy to Replace America as the Global Superpower』(仮題:100年マラソン―アメリカに代わり世界覇者となる中国の秘密戦略)の中で、中国がアメリカ主導の世界の政治経済を覆し、共産党誕生100周年を記念する2049年までに、共産主義による世界支配を目標とする長期戦略を持っていると指摘する。ピルズベリーによれば、中国国防大学製作のプロパガンダ番組「較量無声」(声なき戦い)に、アメリカに対峙する野望が明確に示されている。中国共産党が世界を支配するという「大儀」は、「必然的に世界の覇権国家であるアメリカに対する継続的な闘争」であり、「これは100年単位の競争であり、人間の意志で変化するものではない」【2】

中国共産党のグローバル戦略は対アメリカに焦点を置いている。ペンシルベニア大学教授で中国専門家のアーサー・ワルドロン(Aurthur Waldron)は2004年の上院公聴会で、人民解放軍(PLA)は反米オペレーションを展開する世界で唯一の軍隊だと述べた。【3】 実際、PLAはもとより、中国共産党の外交政策や国際活動のほとんどは直接あるいは間接的に反米である。

c. アメリカを転覆させ抑制する中国共産党の多面的戦略

中国共産党の世界制覇の特徴は、包括的なアプローチである。イデオロギー的にはアメリカやその他の自由民主社会と対立する。経済的には強制的な技術移転や知的財産の窃盗でテクノロジーの差を埋める。軍事的には南シナ海などで「超限戦」を繰り広げ、対アメリカを意識したオペレーションを行う。一方で、北朝鮮やイランを含む、ならず者国家を支援し、アメリカやNATO(北大西洋条約機構)を脅かす。

外交的には、中国共産党は「戦略的辺疆戦略」と「一帯一路」を推進する。中国共産党は周辺国からヨーロッパ、アフリカ、オセアニア、ラテンアメリカへと影響力を急速に広げ、アメリカを排除しつつ中国主導型の一大経済圏を樹立しようとしている。

中国共産党の戦略は多面的である。1996年に上海協力機構を立ち上げ、2015年にアジアインフラ投資銀行を設立し、また2012年に東欧諸国との経済活性化を目指す「16プラス1」を組織した。ブリックス(ブラジル、ロシア、インド、南アフリカ)との協力体制を強調し、人民元の国際化を積極的に主張している。また、同政権は(5Gネットワークのような)産業基準を構築し、トレンドを支配しようとしている。

中国共産党は欧米諸国の報道の自由と民主主義を濫用し、統一戦線、プロパガンダの拡散、諜報活動を展開している。これは全て、アメリカを可能な限り操作し、内部から崩壊させることを目的としている。

典型的なやり方は、アメリカの政府高官、国会議員、外交官、退役軍人などに賄賂を渡すことである。経済利益でアメリカの資本家を操り、ロビー活動を通じて米政府の対中政策に影響を与える。ハイテク企業に対しては、中国共産党のネット検閲システム「グレート・ファイアー・ウォール」に協力するよう圧力をかける。海外の中国人コミュニティーに対しては、中国スパイになることを強制あるいは奨励し、欧米のシンクタンクや研究所に潜り込ませる。スパイは敏感な問題の議論を操り、研究所に中国共産党を擁護するような立場を取らせる。中国共産党の支配下にある中国企業はハリウッドの重要なスポンサーである。

さまざまな国に影響力を及ぼしながらアメリカをけん制する一方、中国共産党はアメリカ国内で強固な地盤を築き、内部から崩壊させることを狙っている。アメリカ国内に広範なスパイ網を張り巡らし、アメリカ社会を分断させ、国内不安をあおるのである。

d. 反米をあおり、対米戦に備える中国共産党

中国共産党のイデオロギーは憎悪を原動力としている。同政権が焚きつける愛国心は、反日、反台湾、反チベット、反新疆、反宗教団体、共産党に反対する人々、そして最も顕著なのは反米である。中国人のネットユーザー曰く、「小さい問題ならば日本を叩き、大きな問題ならばアメリカを叩く」。つまり、外国勢に対する憎悪を掻き立てることによって国内の不満を鎮め、危機を乗り越えるという手法である。

中国共産党はかつて何度もアメリカを友好国と認め、その民主制度を称賛していた。しかし、いったん政権を掌握すると態度を豹変させた。当時、中国人は歴史に翻弄され、国家は極度に疲弊していた。中国共産党は富強を望む人々の心につけ込み、アメリカやその他の国家に対する憎悪を掻き立て、自身が中国を救済すると宣伝した。

実際、中国共産党は中国人の生死など気にしていないし、中国の領土保全や持続可能な経済発展などもお構いなしである。中国共産党がいかに中国人を迫害してきたのか、中国の主権を裏切り、中国の道徳と伝統を踏みにじり、中国の将来をムダにしたその邪悪さをみれば、それは明らかである。

外国勢に対する憎悪を掻き立てることで、第一に自身を救済者と名乗り、暴虐な支配を合法化できる。第二に、市民の愛国心を刺激しておけば、危機に面した時に大衆の目を逸らすことができる。第三に、同党の領土拡張の野心的な計画は近代の恥辱を「修正するため」とし、支持を得ることができる。第四に、憎悪を利用して将来の戦争に必要な心理的準備を整え、民衆が残虐な行為に対して麻痺するようにする。

中国共産党は若い世代を反米教育で洗脳し、アメリカを抜き世界を支配するための道具としている。時期が来たら、中国の若者を使ってアメリカやその同盟国にさまざまな形で浸透し、彼らを武装攻撃や超限戦、あるいは核戦争にまで参加させる。

9.11同時多発テロ直後に中国の若者が歓喜していたのを見れば、中国共産党のプロパガンダ戦略が功を奏していたのが分かる。中国の政治・軍事フォーラムでよく聞かれるのは、「中国とアメリカは戦争しなければならない」という感情的な発言である。これも中国共産党が人々を洗脳し、アメリカへの敵対心をあおることに成功した一例である。これは長期的な、戦争への緩慢な動員であり、中国共産党による入念な計画が系統的に実行されているのである。

中国共産党のヘイト・プロパガンダは中国の国境に留まらない。中国共産党は国際社会で公然とならず者政権やテロ組織を支援し、経済援助、武器、設備、戦略的な訓練、大衆の支持を与え、アメリカを敵視させる。中国共産党は反米諸国の枢軸として、グローバルに反米勢力を操っているのである。

e. すでに中米関係の意図を隠さない中国共産党

2008年、アメリカが経済危機に喘いでいる頃、中国は歴史上最も贅沢なオリンピックを開催した。繁栄という名の衣装をまとった同政権が世界の表舞台に立った瞬間である。当時、グローバル化の波に押され、国内の製造業が衰退していたアメリカは中国に助けを求めた。中国共産党メディアは「アメリカは中国から借金をして生存している」「アメリカは衰退の一途をたどっている。中国がアメリカに取ってかわる」と盛んに報道した。実際、すべての官製メディアは似たようなニュースを報道し、欧米メディアや学者間でもそのような意見が頻繁に聞かれるようになった。

2008年以降、アメリカの軍事・経済は衰退し、政権は不安定になった。アメリカは国民皆保険(ユニバーサルヘルスケア)、社会保障、気候問題、環境監視の拡大を進め、伝統的な製造業に対する規制を行った。グリーンエネルギー産業はメイド・イン・チャイナの製品に押され、アメリカの製造業は引き続き空洞化した。中国による不正な商取引や知財窃盗が横行した。

この流れの中で、人々は中国が上昇し、アメリカは沈下しているという見方を受け入れた。アメリカの軍事費が大幅に削減され、外交的立場が弱くなった。政治的には社会主義イデオロギーが台頭し、社会の分断が広がった。民主主義は政党論争ショーとなり、アメリカの政府機関は何度もストップした。中国共産党はこの混沌状態と自身の中央集権型全体政治を比べ、アメリカの民主主義を嘲笑した。

2010年、中国は日本を抜いて世界第二位の経済大国にのし上がった。2014年、世界銀行は購買力平価説に基づけば中国のGDPはアメリカを超えた可能性があると指摘した。【4】 米中のパワーバランスが変化し、アメリカの衰退が既に確実であると睨んだ中国共産党は、爪を隠し時を稼ぐという以前の戦略を止めた。その代わりに、同党は公にアメリカ主導の国際秩序を奪う戦略に変えた。中国共産党は公式に、臆面もなく「中国の夢」という拡張主義をメディアや専門家を通じて主張し始めた。

2012年、中国共産党は第十八回全国代表大会で「人類運命共同体」という概念を提言した。2017年、同党は各国の首脳を招き、古代の朝貢外交さながらの演出で世界政党対話会を開いた。中国は公に「中国式の」共産主義を全世界に輸出しようとしている。

中国共産党の野望は「中国モデル」「中国の計画」「中国の智慧」というスローガンのもと、世界を先導して同党のルールに沿った新世界秩序を樹立することである。同党は各方面で入念な準備を何十年も行ってきた。もし世界秩序が樹立されたらならば、同党は恐るべき新たな悪の枢軸となるだろう。それは、第二次世界大戦で連合国と戦った枢軸国よりも手ごわい相手である。

 

2. 中国共産党の世界支配戦略

 

a. 「一帯一路」はグローバル化の仮面をかぶった領土拡大

注目を集める「一帯一路」

2013年、中国共産党は公式にシルクロード経済ベルトと21世紀海洋シルクロードという構想を発表した。通称「一帯一路」である。これは中国政権が数兆ドルを投資して多くの国に橋、鉄道、空港、エネルギー設備などを建設する広域経済圏構想で、インフラ投資計画としては史上最大規模といわれている。      

「一帯」とはシルクロード経済ベルトを指し、中国西部から中央アジアを経由してヨーロッパとバルト海、また北西中国から中央アジア、西アジアからペルシャ湾と地中海、さらに南西中国からインドシナ半島を通り、インド洋を繋ぐルートである。

「一路」とは21世紀海洋シルクロードを指す両面作戦である。一つめは中国の港湾から南シナ海を繋ぐルートで、マラッカ海峡を通り、インド洋を経由してヨーロッパに続く航路である。二つめは、南太平洋に向かうルートである。

陸上を繋ぐ「一帯」は、6つのルートから成る。中国―モンゴル―ロシア経済ルート、新ユーラシア大陸橋、中国―中央および西アジア経済ルート、中国―インドシナ半島経済ルート、中国―パキスタン経済ルート、そしてバングラデシュ―中国―インド―ミャンマー経済ルートである。

新ユーラシア大陸橋は中国とヨーロッパを繋ぐ中国高速鉄道である。中国―ヨーロッパ間は海路で30日以上かかるが、鉄道では10日間である。中国高速鉄道は2011年に開通し、一帯一路の重要なルートとなっている。

中国パキスタン経済回廊は両政府による共同プロジェクトで、中国・新疆ウイグル自治区カシュガルとアラビア海に面するパキスタンのグワダル港までを結ぶルートである。グワダル港は世界の40%の原油が運ばれるホルムズ海峡に近い重要な拠点であり、中国は2013年に同港湾の管理権を取得している。

「一路」とは、いくつかの戦略的な港を建設し、グローバルな海路の支配をめざす構想である。経済の発達した国には中国企業が資本参加あるいは共同起業(ジョイント・ベンチャー)という形で参入し、貧しい国に対しては中国政府が巨額の資本を投じ、港湾の管理権を取得する。

2013年、中国企業は少なくとも17の港や空港の管理権を取得した。招商局港口控股有限公司(China Merchants Port Holdings Company Limited)は、フランスのTerminal Link SASの株式の49%を取得した。この投資により、招商局港口控股有限公司は4大陸8カ国の15の港湾とターミナルの管理権を得た。【5】

上記の港湾とターミナルに含まれるのは、ベルギーのアントワープとゼーブルッヘ、エジプトのスエズ運河コンテナ・ターミナル、トルコのクンポート港、ギリシャのピレウス港、シンガポールのパシルパンジャン港、ヨーロッパの玄関口と呼ばれるオランダのユーロマックス・ターミナル・ロッテルダム、アラブ首長国連邦のハリファ港第2期コンテナ・ターミナル、イタリアのヴァード港、マレーシアのクアンタン港、東アフリカのジブチ港、パナマ運河である。

巨額な投資の他に、一帯一路に付随するのは債務の罠である。これによって中国共産党は戦略的な拠点を支配する思惑がある。2017年、多額の負債を抱えたスリランカは99年間のハンバントタ港の管理権を中国企業に譲渡した。

2018年、中国共産党はインターネットのインフラ構築を狙ったデジタルシルクロードの建設に着手した。デジタルシルクロードは一帯一路の発展段階に現れたプロジェクトで、光ファイバーのインフラ、デジタル情報サービス、国際通信、電子商取引(Eコマース)などを含む。

一帯一路の多くの参加国には、整ったクレジット制度が存在しない。中国共産党は自身のEコマースや電子決済サービス(アリペイなど)をそれらの国々に導入し、欧米の競合会社を完全に遮断しようとしている。中国国内のネット監視システム「グレート・ファイアー・ウォール」も一部の参加国に輸出している。

中国共産党による戦略の規模は、世界のインフラ建設をみれば分かる。ニューヨーク・タイムズ紙2018年11月の報道によると、中国共産党は40本以上のパイプライン、その他の石油やガスのインフラ、200以上の橋、鉄道、道路、およそ200の原子力発電所、天然ガス、石炭、再生可能エネルギー、また数々の大きなダムを建設、または建設中であるという。同党は一帯一路の一環として112カ国に融資を行った。中国共産党の触手は世界中に伸びている。【6】

一帯一路の発展と共に、アメリカに代わって世界の覇者になろうとする中国の野望も大きくなった。人民元の国際通貨化や自国のクレジット制度を積極的に推進し、中国製通信機器(5Gを含む)と高速鉄道を多くの国々に導入させようとしている。その目的は、現在の欧米基準とは異なる中国共産党の基準を構築することである。

世界に拡大する「一帯一路」

一帯一路の初期段階は周辺国に焦点が置かれ、後にヨーロッパへと拡大した。その後、同プロジェクトはアフリカ、ラテンアメリカ、北極海に到達し、全世界に及んだ。一方、海洋シルクロードはもともと二つのルートしかなかったが、北極圏を経由してヨーロッパと繋がる三つめのルート、いわゆる氷上シルクロードが加わった。一帯一路が始まる以前から、中国共産党はアフリカとラテンアメリカへ多額の投資を行っていた。すでに一帯一路の重要な一部となったこれらの国々に対して、中国共産党は迅速に経済的・軍事的な影響力を発揮するようになった。

一帯一路の初期の目的は、他国で鉄道や高速道路を建設してインフラ整備することで、中国の過剰生産能力を解消することだった。これらの国々は豊富な資源とエネルギーを有しており、彼らのインフラ建設を助けることで、中国共産党は二つの目的を達成することができる。一つは、国内製品を低コストでヨーロッパへ輸送することができる。もう一つは、一帯一路参加国の資源を確保することができる。中国共産党の目的は自国の輸出を増やすことであって、一帯一路参加国の産業を促進することではない。中国共産党が自国の製造産業を犠牲にすることなどあり得ないのである。

一帯一路の裏に隠された真の目的は、経済的な利益を盾に政治経済を支配し、中国共産党が目指すグローバル戦略の一環として他国を植民地化することである。一帯一路参加国に及ぶ負の作用は甚大である。汚職、負債、全体主義、圧政など、共産主義のあらゆる有毒な要素が流入する。このプロジェクトは欺瞞に満ちた罠であり、参加国が長期的な経済発展を享受することはないだろう。

多くの参加国は一帯一路への警戒感を示し、同プロジェクトの停止あるいは再検討の意志を表明している。中国共産党もプロジェクトの透明性を約束し、多額の負債の見直しに応じるとしている。しかし、中国共産党の計画を過小評価してはならない。利潤追求を原則とする欧米企業の場合、トラブルを抱えるホスト国に対して数年以上も借金を取り立てることはしないが、中国共産党のバランスシートは次世紀にまで及ぶ。同党は激変する世界情勢をものともせず、目先の損失を気にすることなく長期間耐えられるのである。

中国共産党の望みは国連の中で親中政府を増やすことである。中国共産党は、アジア、アフリカ、ラテンアメリカのリーダーとなり、自由社会と対立し、アメリカに代わって世界一の覇権国なりたいのである。中国共産党は目的のためなら、いくら国民を犠牲にしても厭わない。例えば、中国共産党は中国人に対してコストの支払いを義務付けできるが、欧米の私企業ではムリな話である。世界の覇権国の争いは、中国共産党がどれだけ強大であるかといった机上の空論で測れるものではない。中国共産党には生死に関係なく、簡単に利用できる数億人という中国人がいる。中国人は共産党にとって単なる捨て駒なのだ。

ホワイトハウスの元首席戦略官スティーブン・バノンは、一帯一路に対する独自の見解を述べている。バノンによると、中国の一帯一路は、マッキンダー、マハン、スパイクマンの世界支配理論を上手く融合させているという。

アジア・グローバル研究所のアンドリュー・シェンは、バノンの見解を次のようにまとめている。

「ハルフォード・マッキンダー(Halford Mackinder)は、イギリスの地理学者・歴史学者であり、1904年に「中軸地帯(ハートランド、中央アジア)を制する者は、世界島(ユーラシア)を支配し、世界島を支配する者が世界を支配する」と論じた。アメリカ海軍の軍人で歴史学者のアルフレッド・マハン(Alfred Mahan)は、アメリカのシーパワー戦略家だった。マハンは治安維持を通してイギリスのシーレーンを支配する海洋帝国理論を広げ、拠点や運河を抑えることを主張した。それとは対照的に、ニコラス・ジョン・スパイクマン(Nicholas John Spykeman)は、リムランド(北西ヨーロッパから中東、インドシナ半島までの東南アジア、中国大陸、ユーラシア大陸東部に至るユーラシアの沿岸地帯を指す)がハートランドより重要であり、従って「リムランドを制するものはユーラシアを制し、ユーラシアを制するものは世界の運命を支配する」と論じた」【7】

バノンの見解は、中国共産党の一帯一路に対して欧米社会に警戒感が広がっていることを示している。

実際、中国共産党の野望は一帯一路に留まらない。中国共産党は単に陸路やシーレーン、その他港湾の確保を目的としているわけではなく、世界のどこでも隙あらば乗ずるつもりである。アジア、アフリカ、ラテンアメリカ地域には近年独立を果たした新国家が多く、空洞化した政権に中国共産党が入りこんでいる。かつてソ連の衛星国だった東欧の新独立国家も主権が脆弱であり、中国共産党の子飼いになりやすい。その他、欧米資本家が投資をためらうようなトラブル国も、中国共産党の手に落ちる傾向がある。戦略的に重要な拠点を持つ小国、島国、発展途上国も中国共産党の餌食となりやすい。

もともと欧米の民主陣営にいた国家も、脆弱な経済と巨額の債務に苦しみ、中国共産党側についてしまう。中国共産党はアメリカ周辺国の経済を支配し、アメリカを取り囲んでいる。同党の目的は、アメリカの影響力を排除し、徐々にそれらの地域からアメリカを追い出すことである。最終的に、中国共産党は共産主義を中心とする独裁的な世界秩序を構築する。これは決して新しいやり方ではない。この戦略は、かつて中国共産党が辺境地域を支配し、徐々に都市部を取り囲み、勝利を獲得した国共内戦の時と同じである。

b. アジア太平洋地域からアメリカを排除する中国共産党の戦略的辺境

中国共産党の辺境外交とは一体何だろうか。同党のシンクタンクは次のように定義している。「中国近隣14カ国と領土の境界、海洋の6カ国を含む。それを超えると、東にはアジア太平洋地域、西にはユーラシアがある。つまり、急激な中国の周辺国への拡大は、国際的な政治、経済、安全保障の3分の2を支配する。従って、辺境外交は単なる地域的な戦略ではない…これは真の偉大なる戦略なのだ」【8】

欧米との繋がりが弱いオーストラリア

2017年6月、フェアファクス・メディア(Fairfax Media)とオーストラリア放送協会は5カ月におよぶ調査報告を取り上げた「The Hard Edge of China’s Soft Power」(仮題:大胆な中国のソフト・パワー)という番組の中で、中国によるオーストラリア社会への深刻な浸透と支配の現状を伝えた。【9】 放送の6カ月後、中国共産党と繋がりの深い中国人ビジネスマンから賄賂を受け取ったと告発されたオーストラリア労働党のサム・ダスティヤリ(Sam Dastyari)が上院議員を辞職した。彼は南シナ海問題で中国寄りの発言をし、労働党の見解と対立していた。【10】

2016年9月、オーストラリアのSBSニュースは、中国人ビジネスマンが豪中貿易政策に影響を与えることを目的として政治献金を行っていたと報道した。【11】 さらに最近では、中国国営メディアがオーストラリアのメディアと契約し、中国の番組をオーストラリアで放映することになっている。【12】

また、オーストラリアは2015年、人民解放軍と近い中国企業とダーウィンの港湾を99年間貸与する契約を締結している。この港湾の近くには南シナ海を睨んだ米海兵隊の重要な軍事拠点があり、元アメリカ国務副長官補のリチャード・アーミテージ(Richard Armitage)は、アメリカが懸念を示していると指摘した。【13】

2017年、中国政府の反発を恐れたオーストラリアの出版社は、クライブ・ハミルトン(Clive Hamilton)の著書『サイレント・インベージョン ~オーストラリアにおける中国の影響~』の出版を拒否した。最終的に、三つめの出版社が出版に同意した。この事件をきっかけに、オーストラリア市民の間で中国の影響力に対する懸念が広がった。【14】

中国はなぜそこまでオーストラリアに固執するのだろうか。中国共産党がオーストラリアに浸透して影響力を及ぼすことに、なにかしら戦略的価値があるのだろうか?

2017年12月、全米民主主義基金(NED)は、『Sharp Power: Rising Authoritarian Influence』(仮題:シャープ・パワー―台頭する全体主義の影響力)という報告書の中で、中国共産党が賄賂工作でオーストラリアの政界や学術界に浸透し、米豪同盟にくさびを打ち込んでいると指摘した。【15】

オーストラリア政府は2017年の外交政策白書の中で、「終戦後、アメリカはずっとわれわれの地域を支配する勢力だった。今日、中国がそのポストを狙っている」と指摘した。【16】 オーストラリア戦略政策研究所のシニア分析家マルコム・デイビス(Malcolm Davis)によると、北京政府は米豪同盟を断つために、オーストラリア地域における戦略的優位な立場を得ようとしているという。【17】

オーストラリアは辺境外交を実施する中国共産党のソフト・パワーの実験台である。【18】 中国共産党によるオーストラリアへの浸透は2005年に遡る。中国外交部の周文重がキャンベラに到着し、中国大使館高官に対して中国共産党の新しい外交戦略を伝えた時である。当時の短期的な目標は、オーストラリアを中国の辺境戦略に加え、今後20年間、中国の経済成長を支える安定国として抑えることだった。長期的な目標は、米豪同盟の分断である。この会合では、中国共産党がいかにしてオーストラリアの経済、政治、文化に広く影響できるかが話し合われた。【19】

中国共産党は圧倒的な経済力を武器に、オーストラリアに対して軍事問題や人権問題の譲歩を強いてきた。経済利益を通じて個人的な関係を築き、同時に暗黙の脅しを仕掛けるのが中国共産党のやり方である。【20】

長期間の調査を行ったクライブ・ハミルトンによれば、「オーストラリアの主な機関―われわれの学校、大学、学術界からメディアまで、また鉱業、農業、観光業から軍事施設がある港湾や電子ネットワークまで、また地方議会から州政府、さらにはキャンベラの政党にまで―浸透し、中国共産党の複雑な支配体制によって監視下に置かれている」【21】

2008年の経済危機以来、オーストラリアは積極的に中国共産党の供給国になっている。それは、中国共産党が不景気のオーストラリアを救ったという共通認識があるためだ。オーストラリアにおける中国共産党の浸透がなぜそんなに深刻なのか。ハミルトンによれば、オーストラリアは「中国が経済的な繁栄を保障してくれると信じ、目がくらんでいるからだ。浸透が目の前で起こっていてもそれに目をつぶり、北京政府に反対して立ち上がる勇気もないからだ」【22】

欧米社会における中国共産党の浸透と影響に気づいていながら、また特に海外の華僑に対する中国共産党の浸透が深刻であるにも関わらず、多くのお人好しの欧米人は同党の戦略が「非積極的」であるとみなしている。つまり、中国共産党の戦略は批判者や政治的異見者を黙らせることだけだと思っている。しかし、ハミルトンは、「非積極的な」活動の裏に、中国共産党の「積極的な」野望があると指摘する。中国系移民を利用してオーストラリアの社会構造を変革し、欧米人をより親中派にすることで、北京政府の影響力を強めているのである。このやり方で、オーストラリアはアジアの覇権国である中国を援助し、さらにはグローバルな強大政権に成長した中国共産党を支持するようになる。【23】

同様に、中国共産党はニュージーランドへの影響力も強めている。カンタベリー大学教授の中国政治専門家アン=マリー・ブレイディ(Anne-Marie Brady)は、『魔法の武器』という論文を発表し、中国が国際的意見形成に対してどのように影響を及ぼそうとしているのかをニュージーランドの事例をもとに説明した。論文は、数人の中国生まれのニュージーランド議員が中国共産党と強い繋がりがあること、また多くの政治家が裕福な中国ビジネスマンや中国商業協会(Chinese trade associations in New Zealand)などの統一戦線組織から莫大な献金を受けていたことを暴露した。【24】 論文が発表された後、彼女の大学のオフィスや自宅、関連施設が強盗により荒らされた。この事件の前にも、彼女には「次はお前だ」と書かれた脅迫の手紙が届いていた。【25】

中国は積極的にニュージーランドの地方議員を引き込んでいる。例えば、ニュージーランドの議員は中国旅行などの贅沢な接待を受け、退職すれば厚待遇で中国企業に雇われる。これらは全て、彼らが党の路線に従うよう手なずけるためである。【26】

戦略的価値のある太平洋諸島国家を標的にする

太平洋諸島国家は領土こそ小さいが、海上基地としては重要な戦略的価値がある。それら諸国の領土面積は、ほんの53000平方キロメートルに過ぎないが、彼らの排他的経済水域(EEZ)は、1900万平方キロメートルにおよび、中国のEEZの6倍を超える。太平洋諸島国家との関係構築は、中国共産党が公に進める軍事戦略の一つである。

現在、太平洋地域の勢力図は、アメリカ、日本、ニュージーランド、オーストラリア、フランスに分けられる。太平洋における海軍力を強化するために、中国共産党は太平洋諸国と緊密な関係を築き、徐々にアメリカを排除する狙いがある。【27】

ニュージーランドの教授ジョン・ヘンダーソン(John Henderson)とオーストラリアの教授ベンジャミン・ラリー(Benjamin Reilly)によれば、中国共産党の南太平洋地域における長期的な目標は、覇権国であるアメリカのポジションを乗っ取ることである。【28】 中国共産党は巨額の資金をメラネシア、ミクロネシア、ポリネシアに投じ、同諸国のインフラ建設を援助している。地元の観光産業や電子取引を支援し、同地域へのアメリカの介入を遮断している。オーストラリア人作家のベン・ボーヘンは、太平洋の勢力図において、アメリカは中国に負けていると指摘している。【29】

中国の大規模な経済援助と投資が行われた後、中国の高官は傲慢さを露わにし、中国共産党の心理を見事に体現した。同党は他国の人々に対しても、中国人に対する時と同じように振舞った。中国共産党の目的は弱小国家を従順に従わせることであり、同党が国際規約やルールに従わないのは当然である。

パプア・ニューギニアで開催された2018年APECサミットでの中国高官の失礼な態度は地元の人々を驚かせた。中国高官は習近平とその他太平洋諸国のリーダーたちに対する取材を禁じ、新華社通信を参照するよう要求したのである。

共同声明に中国の不公平な貿易について書かれることを恐れ、中国政府はパプア・ニューギニアの外交官に面談を申し入れた。外交官は彼の公平な立場をゆるがすと判断し、中国の要求を断った。

さらに、中国高官は他の国々が中国に対する陰謀を企んでいると主張し、罵倒し始めた。あるアメリカ政府高官は中国のAPECでの態度について、「癇癪外交」と揶揄している。【30】

債務のワナに落ちた中央アジアの資源を支配する

ソ連解体の後、中国共産党はカザフスタン、キルギスタン、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタンなどの中央アジア諸国との関係を強化した。中国共産党の中央アジア戦略にはいくつかの理由がある。第一に、中央アジアは西方への領土拡大において避けられないルートである。さらに、貿易輸送のためのインフラ建設を通して中央アジアでの商機も見込める。第二に、これらの国家は石炭、石油、ガス、貴金属などの天然資源が豊富である。また、中央アジアは地理的にも、あるいは文化的にも新疆ウイグル自治区に近く、ここを掌握すれば新疆の少数民族に対する支配を強化できる。

中央アジア支配の意図を公にしてはいないが、中国共産党の同地域に対する影響力は高まっている。ブリュッセルを拠点とするシンクタンクの国際危機グループは2013年の報告書の中で、中国が不安定な社会情勢に乗じ、中央アジアで権力を増大させていると指摘する。北京政府にとって、中央アジアは天然資源の供給国であり、また自国の安価な製品の販売市場でもある。同時に、中国共産党は新疆の安定という名目で、数百万米ドルもの資金を中央アジアへ投資している。【31】

中国と中央アジアは高速、鉄道、航空路、通信、石油パイプラインという高密度なネットワークで繋がっている。中国の路橋建設会社がすべての建設を担う。危険で複雑な土地を開拓し、新道路を建設し、中国の製品がヨーロッパや中近東、またパキスタンやイランの港湾へと届く。1992~2012年の20年間に、中央アジアと中国の貿易量は100倍に増えた。【32】

中央アジアにおいて、中国共産党は大規模な国営の信用融資によるインフラ建設を推進した。一部の学者は、この種の投資は新しい国際慣習となり、中国が支配的な役割を担うだろうと指摘している。北京政府にとって中央アジアはもう一つの実験台であり、オーストラリアと同様に、外交戦略における新たな革命を起こしたのである。【33】

北京政府は中央アジア諸国の腐敗した独裁リーダーを支持する傾向があり、また不透明な投資プロジェクトは地元のエリートを潤すと考えられている。国際危機グループの報告によれば、中央アジア諸国の政権は脆弱で腐敗し、社会的・経済的に不安定である。【34】北京政府の大規模なインフラ建設プロジェクトは多額のローンを伴うばかりでなく、ホスト国の公的な承認や許可を必要とし、既得権益層が腐敗しやすい構造を生む。つまり、この仕組みは地元政権の汚職を促すのである。

元ウズベキスタン共産党中央委員会の第一書記イスラム・カリモフ(Islam Karimov)は、国が独立した1991年から、自身が亡くなる2016年まで初代大統領を務めた人物である。ソ連崩壊後、ウズベキスタンはカリモフの独裁政権下に置かれた。2005年、アンディジャン市で大統領と政権の退陣を求める住民による大規模なデモが発生した。これに対して政府側は治安部隊を投入し、数百人の死者(実数は不明)が生じたとされている。中国共産党はカリモフ政府を支援し、ウズベキスタンやその他の政権維持に努めた。【35】

脆弱な経済構造とインフラ建設に伴う莫大な負債を抱えた中央アジア諸国は、中国の債務の罠に陥っている。トルクメニスタンは深刻な経済危機に直面し、年300%のインフレや50%の失業率、深刻な食糧不足、蔓延する汚職に喘いでいる。現在、トルクメニスタンが産出するガスの顧客は中国のみであり【36】、中国からの借金は90億米ドル(2018年GDPのおよそ30%)に上る。【37】 巨額の融資の見返りとして、トルクメニスタンは自国の天然ガスを中国に譲渡するしか方法がないかもしれない。【38】 この国の主要な基幹産業は既に北京が握っている。

中国から3億米ドルを借りて発電所を建設したタジキスタンは借金が膨らみ、金鉱の経営権を中国に譲渡している。【39】

キルギスも大規模なインフラ建設プロジェクトで債務の罠にはまり、経済危機に直面している。同国はすでに、借金返済のために自国の天然資源の一部を中国共産党に譲渡するしか方法がない。キルギスはファーウェイやZTEなどの中国の通信企業と共同し、デジタル通信網を構築しようとしている。これによりキルギス政権が国民を管理するのみならず、中国も同政権を監視下に置けるのである。【40】

ソ連解体後、北京政府は権力が空洞化したカザフスタンに急接近し、同国のエネルギー分野に参入した。カザフスタンは原油輸出に依存しており、稼いだ外貨は安価な中国製品の輸入にあてがわれている。堅調な石油採掘を除き、同国の産業基盤は脆弱である。安価な中国製品が流入し、カザフスタンの製造業は危機に瀕している。【41】

中国共産党による中央アジアへの拡大の動機は、中央アジアに居住するウイグル人反体制派を一掃することである。上海協力機構(SCO)憲章は、容疑者を加盟国に引き渡せると明記している。加盟国は自国の役人を他の加盟国へ派遣し、調査を行うこともできる。中国共産党はこの手法で海外のウイグル人を弾圧し、他国へ逃亡した反体制派のウイグル人を逮捕している。【42】

中枢国を利用して戦略物資を確保

辺境外交の要素の一つは、最初に中枢国を決定し、その国家を利用して地域全体に影響力を広げていくことである。同党のシンクタンクによれば、中枢国とは北京政府が資源や人事において影響力を行使することのできる地域大国のことである。中枢国の特徴は戦略的利益において中国共産党と直接対立していないこと、またアメリカとの密接な利益共有がないことが挙げられる。【43】 中国共産党の中枢国とは上記に述べたオーストラリアやカザフスタンの他にイランやミャンマーも含まれる。

中近東で中国から最大の投資を受けているのはイランである。イランは主要な石油産油国であり、また1970年代後半から欧米とイデオロギー的に対立していることから、中国共産党の経済的・軍事的なパートナーとなったのはごく自然な成り行きである。同党とイランは1980年代から良好な経済・軍事パートナーである。

1991年、国際原子力機関(IAEA)は、イランが中国から未申告で天然ウランを輸入し、秘密裡に両国が核協定を締結していたと発表した。【44】 2002年、イランが秘密裡に大規模なウラン濃縮施設を建設していたことが発覚し、欧米の石油会社は同国から撤退した。中国共産党はこの隙に乗じ、イランと密接な関係を築いた。【45】

1992~2011年の間、イラン政権への世界的な経済制裁時を除き、中国とイランの貿易量は100倍以上伸びた。【46】 中国共産党の支援によりイランは国際的な孤立を切り抜け、短中距離弾道ミサイルおよび対艦ミサイルを製造した。さらに、中国政府は機雷や高速戦闘艇をイランに提供し、化学兵器の密造を支援した。【47】

また、中国共産党のもう一つのお気に入りは、隣のミャンマーである。ミャンマーの長い海岸線はインド洋への重要なアクセスを提供する。中国共産党はミャンマーと繋がるパイプラインを建設し、マラッカ海峡への依存を減らそうとした。【48】 ミャンマーの人権問題は国際的な批判を受けており、1988年には軍事政権と民主化運動が衝突した。翌年、中国の天安門広場では人民解放軍が民主化を叫ぶ人たちに発砲した。

国際的な批判を浴びた二つの独裁政権は急速に距離を縮め、以来密接な関係を続けている。1989年10月、ミャンマーの首相タン・シュエ(Than Shwe)が中国を訪れ、14億米ドルの兵器売買契約を結んだ。【49】 1990年代、両国はさらに多くの兵器売買契約を交わした。中国がミャンマーへ輸出した兵器は、戦闘機、哨戒艦艇、戦車、装甲兵員輸送車、高射砲、ロケットなどである。【50】 中国共産党による軍事、政治、経済的な支援は、ミャンマー軍事政権の命綱となっていた。【51】

2013年、中国は中国とミャンマーを繋ぐ原油・ガスパイプラインに50億米ドルを投じた。これは中国にとって4番目に大きな戦略的原油ガス輸入ルートである。2017年、市民の強い反対に遭いながらも、ミャンマー政権は中国共産党の支援を得てパイプラインの運用にこぎつけた。【52】 同様のプロジェクトはミッソン・ダム(現在は地元民の反対に遭い中止)、レプタダン銅鉱山(Letpadaung Copper Mine)である。2017年、二国間の貿易額は135億4千万米ドルに上った。現在、中国共産党は中国・ミャンマー間を繋ぐ経済回廊の建設を予定しており、そのうちの70%は中国側が負担するという。同プロジェクトの中にはインド洋への足掛かりとなる深水港【53】、またKyaukpyu経済特別区にある産業公園が含まれている。【54】

c.「分割して統治する」―アメリカから分離されたヨーロッパ

冷戦時代、ヨーロッパは自由社会と共産主義が対立する中心点だった。アメリカと西ヨーロッパは北大西洋条約機構(NATO)により緊密な関係を保っていた。冷戦終結後、ヨーロッパの政治経済は衰退の道をたどった。

ヨーロッパとアメリカの関係に楔を打つため、中国共産党はヨーロッパで分断統治の手法をとった。それは地元の情勢に適応しながら徐々に浸透し、ヨーロッパ全体へと影響力を強めていく方法である。近年、主要な問題に対するヨーロッパとアメリカの姿勢は大きく異なっているが、これも中国共産党が裏で操っているのである。

2008年金融危機の後、中国共産党は脆弱なヨーロッパ諸国の経済情勢につけ込み、莫大な資金援助の見返りとして国際ルールや人権問題に目をつぶるよう強要した。中国共産党はヨーロッパ諸国の溝を深め、利益を得ていた。中国共産党が標的としたのは、ギリシャ、スペイン、ポルトガル、ハンガリーである。

中国共産党は経済破綻したギリシャに莫大な投資を行い、その見返りとして同国に対する影響力を強め、ヨーロッパ支配の足掛かりとした。その後、中国共産党はギリシャ最大のピレウス港の運営権(35年)を取得し、海運の主要な要衝を抑えたのである。

2017年5月、中国とギリシャは3年間のアクション・プランに調印し、鉄道、港、空港、電力エネルギー、発電所に投資することで合意した。【55】 中国共産党は既に投資の見返りとして十分な政治利益を得ている。2016年以降、中国政権や人権問題を非難する法案がEUに提出されると、ギリシャが何度も反対票を投じている。このため、中国の人権問題を批判するEUの声明発表は何度も見送られている。2017年8月、ニューヨーク・タイムズ紙は、「ギリシャは最も熱心で地政学的な野心家である中国の接近を喜んでいる」と報じた。【56】

2012年、中国共産党は中東欧諸国16カ国と中国の協力枠組み「16+1」を設立した。ハンガリーが「16+1」に賛同し、初のヨーロッパ参加国として中国と「一帯一路」契約を結んだ。2017年、両国間の貿易額は100億米ドルを超えた。ギリシャと同様に、ハンガリーは中国の人権問題を批判するEUの法案に繰り返し反対している。【57】 チェコ共和国大統領の個人的な顧問は裕福な中国人ビジネスマンであり、彼自身はダライ・ラマと距離を置いている。【58】
同枠組みの16カ国のうち、11カ国はEU加盟国であり、5カ国は非加盟国である。明らかにEUの分断を意図して作られた地域協定である。さらに、16カ国の多くは旧社会主義国であり、これらが中国共産党に簡単になびくのは自然な成り行きともいえる。

ヨーロッパの多くの小国にとって、一国だけで中国に対抗するのは難しい。中国共産党は個別に各政権に接近し、人権問題や違法な外交政策に対して黙認するよう圧力をかけるのである。

最も典型的な例がノルウェーである。2010年、ノルウェーのノーベル賞委員会は、監禁されている中国人活動家に平和賞を授与した。これに反発した中国はノルウェー産の鮭の輸入を制限し、さまざまな報復措置を行った。6年後、両国間の関係は「正常化」したが、ノルウェーは中国の人権問題に対して口を閉ざすようになった。【59】

伝統的な西ヨーロッパでさえも、中国共産党の影響力を懸念している。2010年以降、中国の対ドイツ直接投資が飛躍的に増え、2016年と2017年、中国はドイツの最大貿易相手国となった。2016年、ドイツ企業56社が中国と香港投資家に買収され、その投資額は100億ユーロに上った。中国企業は合併吸収によって速やかに欧米市場に参入し、欧米の最新技術、ブランド、その他の資産を容易に入手できる。【60】 アメリカのフーバー研究所は2018年の報告書の中で、中国の「武器化した」投資だと指摘している。【61】

西ドイツに位置する産業都市デュイスブルクはヨーロッパにおける一帯一路の分岐点である。毎週、中国製品を満載した電車が到着し、その他の都市へと輸送される。デュイスブルクの市長は、同市をドイツ内の「中国都市」であると語った。【62】

一方、フランスに対して中国は長く「取引外交」を行ってきた。例えば、江沢民は1999年にフランスを訪れ、エアバス30機(150億フラン相当)の購入を約束した。経済利益の見返りとして、フランス政府は中国のWTO参加を支持した。天安門事件の後、フランスは欧米諸国の中で初めて中国と戦略的なパートナーシップを結んだのである。当時のフランス大統領は中国を批判する国連人権委員会に反対した人物であり、EUの対中国武器禁輸政策にも反対し、欧米で初めて中国共産党を称賛した国家元首である。【63】 さらに、中国共産党はフランスで大規模な中国文化ウィークというイベントを開催し、文化交流という名のもとでフランスに共産主義イデオロギーを宣伝し、拡大計画のステップとした。【64】

歴史的な強国であり、アメリカの同盟国であるイギリスも、中国共産党の重要なターゲットである。2016年9月15日、イギリス政府は公式に、中国とフランスのコンソーシアムであるヒンクリー・ポイントC原子力発電所の稼働を認めた。これはイギリス南西部サマセットに位置する3200メガワット規模の発電所である。

同プロジェクトは専門家やエンジニア、物理学者、環境主義者などから激しい批判を浴び、特に安全保障上問題があると中国専門家は指摘している。中国問題専門家でテレサ・メイ元首相の首席補佐官を務めたニック・ティモシー(Nick Timothy)によると、安全保障の専門家たちは(政権内でも外でも)「中国人がいつでもイギリスのエネルギーを停止できるようコンピューターに仕掛けをすることができる」と危機感を募らせている。【65】 ガーディアン紙はこれを、「世界で最も高い発電所の恐ろしい取引」と伝えている。【66】

中国政府による欧州での拡大戦略は勢いを増し、広範囲にわたる。手法は、欧州ハイテク企業の買収、重要な港湾の確保、退職した政治家を買収して中国共産党の代弁者にさせること、大学、シンクタンク、研究所に浸透し、中国研究者を籠絡して中国共産党を賛美させるなど多岐に渡る。【67】 イギリスのデイリーテレグラフ(The Daily Telegraph)は毎月、中国共産党の「中国時報」(チャイナ・デイリー)専用ページを設け、中国政権を称賛する記事を掲載している。北京政府からデイリーテレグラフに支払われる広告料は年間75万ポンドである。【68】

ヨーロッパにおける中国共産党の活動は、研究者の間で大きな懸念を呼んでいる。ヨーロッパの著名なシンクタンクのグローバル公共政策研究所(GPPI)は2018年、中国共産党の活動について次のように報告している。

「中国共産党は包括的かつ柔軟な政治的影響力を行使しており、公然とあるいは隠密に、主に政治経済エリート、メディアと世論、市民社会と学術界の3つの側面に注力している。中国はヨーロッパの一方的な開放を利用している。ヨーロッパの門戸は大きく開いているのに、中国は外来の思想やシステム、資本の流入を厳しく制限している。

この非対称的な政治関係がヨーロッパで広がっている。ヨーロッパ諸国が自国を中国側に合わせ、媚を売る「先制的で従順な」政策を取る傾向が強くなっている。欧州連合(EU)やその周辺国のエリートたちは、自国や欧州の利益と対立することも含めて、中国の美辞麗句や利益を称賛するようになっている。EUの連帯は中国の分割統治戦略によって損なわれており、特にリベラルな価値観の保護と投影、および人権問題についてはその傾向が顕著である。また、北京政府は、中国の価値観や利益を喜んで推進する陰の手引者、いわゆる一部の欧州の政治家や専門家たちが提供する「サービス」から利益を得ている。中国が積極的に政治資本の確立を狙っているが、もう一方では、EU加盟国の政治エリートたちが中国マネーの流入を熱望し、あるいはグローバル規模の名声を求めていることも大きく影響している」【69】

中国共産党は政治、経済、文化的な浸透を図る他に、ヨーロッパでさまざまなスパイ活動を行っている。2018年10月22日、仏紙フィガロは、「フランスを標的とした中国スパイ計画を暴露」という詳細な特集記事を掲載した。それによると、中国共産党は主に会社幹部らの履歴や仕事を公表してビジネスパーソンを繋ぐSNS、リンクトイン(LinkedIn)を通じて、情報収集のためにフランス人を雇用しているという。しかし、これらは氷山の一角に過ぎず、中国共産党の目的は、フランス国内の経済的財産である機密情報を略奪することにある。【70】  中国共産党による同様のスパイ活動が、ドイツでも確認されているという。【71】

d. 植民地化されるアフリカ 「中国モデル」の輸出

第二次世界大戦後、アフリカ諸国は次々と独立した。西側諸国は中国に技術や資金を注ぐ一方、アフリカに対する関心は薄れていた。西側からの「輸血」によって強くなった中国共産党は、アフリカへ積極的に介入した。中国共産党はかつての西側宗主国の地位を乗っ取り、アフリカの政治、経済、生活の各レベルに浸透した。

中国共産党は途上国開発を名目にアフリカ諸国に近づき、統一戦線を通じて、国連や米国など自由主義諸国との対立を生みだした。経済的な買収と軍事援助でアフリカ政府や反体制派をけん制する一方、アフリカ国家の運営を操作し、アフリカに中国共産党式の価値観を輸出した。

中国政府が管理する政策銀行・中国輸出入銀行は2001~10年、アフリカ諸国に627億米ドルを貸し出した。これらのローンに対する利子は比較的低く、一見政治的な条件も付いていない。しかし、多くは天然資源を担保としており、中国共産党はアフリカ諸国の豊富な資源を獲得する権利を得たのである。

2003年の中国輸出入銀行による対アンゴラ融資は石油を担保としており、「アンゴラモデル」と呼ばれる。アンゴラは次のような状況である。「中国人がアフリカで石油を掘削し、屈強な中国人に護衛された中国製パイプラインで中国が建設した港へ運び、中国行きタンカーにのせる。中国人(中国共産党)は反人道的な罪を犯す政府に武器を与え、国連安全保障理事会では、その政府の足場を守っている」【72】

2016年、中国はアフリカの最大貿易相手国および海外直接投資国となったが、多くの悪弊によりそのビジネスモデルは批判されている。【73】 低賃金、劣悪な労働条件、品質の悪い生産物、ずさんな工事、環境汚染、現地政府や公務員への賄賂、汚職などである。中国関連の開発プロジェクトはたびたび地元のアフリカ人たちから抗議を受けている。

ザンビアのマイケル・サタ(Micheal Sata)前大統領は、2007年の大統領選挙の際、次のように語った。「私たちは、中国人がいなくなって、過去の(西側諸国による)植民地時代のように戻ることを望んでいる。彼ら(西側諸国)もわれわれの資源を利用したが、少なくとも私たちに丁寧に接し、学校を作ったり、言葉を教えたり、イギリス文明を伝えたりしていた。少なくとも、西側の資本主義は人間的である。しかし、中国人はわれわれから搾取するだけだ」。【74】 ザンビアは中国の影響を強く受けており、いたるところに中国銀行の看板が掲げられ、中国語がどこからでも聞こえてくる。警鐘を鳴らしたサタ氏だが、ザンビアにおける中国の影響力を払しょくすることができず、当選後まもなくして中国大使と面会し、2013年に訪中した。

スーダンはアフリカでいち早く打ち建てられた中国共産党の「拠点」の一つだ。過去20年、中国による対スーダン投資額の増加が顕著である。中国から見て、スーダンは豊富な石油資源を有するのみならず、紅海における戦略的な重要地域である。【75】 1990年代、テロ主義や過激派イスラム主義を支持するバシール政権により、スーダンは国際社会から孤立した。中国共産党はこの隙に乗じてスーダンの最大の交易パートナーとなり、石油の主な輸出先となった。【76】 西側諸国からの圧力にも関わらず、中国共産党の投資はバシール政権を助ける結果となった。また、中国はスーダン政府に大量の武器を輸出し、21世紀初頭におきたダルフール大虐殺を可能にしたのである。

中国共産党は国際社会で同時に別々の行動をとった。スーダン内戦の「調停」のために国連軍へ部隊を派遣する一方、反人道罪で国際刑事裁判所から使命手配されているバシール大統領を自国に招いた。中国は、世界がどんなに変化しようとも、内部情勢がどうなろうとも、永遠にスーダンの友人だと宣言した。【77】

中国共産党は第三世界諸国への投資に余念がない。2000年、北京で中国アフリカ協力フォーラムが設立された。その後、毎年数回、中国アフリカ関連フォーラムがアフリカ諸国や中国で開かれ、そのたびに中国共産党の指導者はアフリカへの巨額投資を約束した。2000年、江沢民はアフリカの貧困国に対して100億元の債務免除を行うと発表した。2006年、北京でふたたびフォーラムが開催されると、中国共産党はアフリカ貧困国の2005年末までの債務を帳消しにすると宣言した。さらに、同党は100億米ドルを越える投資を行い、信用融資、奨学金など、さまざまな経済支援計画を発表した。【78】

2015年、南アフリカのヨハネスブルグで開かれたフォーラムで、中国は600億米ドルの資金を提供し、アフリカ諸国と「十大協力計画」を推進すると宣言した。【79】 中国商務部副部長(経済副大臣に相当)は2018年8月28日、「アフリカで最も発展の遅れた33カ国からの製品97%を関税ゼロにする」と述べた。【80】 同年9月3日、中国アフリカ協力フォーラム北京総会で、中国共産党は新たに600億米ドルの無償援助、無利子融資、分野別の投資を約束し、中国と外交関係を結ぶアフリカ貧困国に対し、2018年末までの政府間の未償還債務を免除するとした。【81】

数十年にわたる血の滲むような工作活動の結果、中国はアフリカ経済を支配することに成功した。経済利益で買収されたアフリカ諸国政府は中国共産党の言いなりになった。中国共産党がアフリカを手中に収め、中国共産党モデルの宣伝ステージにしようとしていることは、もはや明らかである。中国共産党の官製学者は、「中国は40年前から今日に至るまで、西洋がたどってきた道を使わずとも成功し、しかもその(発展の)歴史は続いている。アフリカの衝撃は、誰もが想像もできなかっただろう」と豪語した。【82】

エチオピアのメレス・ゼナウィ元首相は中国共産党を模倣した与党組織を作り、5カ年計画を発表した。匿名の中国外交部(外務省に相当)関係者によると、エチオピア与党の政党・人民革命民主戦線の上層部が中国で勉強し、訓練を受けたという。また、多くの要人の子どもも中国に留学していると明かした。さらに、エチオピアの閣僚級のほとんどが「毛沢東選集」を所持しているという。【83】 

2013年3月に公開されたBRICS(ブラジル・ロシア・インド・中国・南アフリカ)サミットで、エチオピアの首相は中国と協力し、発展を模倣したいと語った。現在、エチオピアは「新中国」と呼ばれ、インターネットの検閲、封鎖、専制政治、メディア統制など、中国と同じ轍を踏んでいる。【84】
この中国共産党化はエチオピアだけではない。2018年、中国共産党中央対外連絡弁部が主催する第4回アフリカ青年指導者フォーラムおよび政党フォーラムが広東深センで開かれた。これは、指導者と政府官僚を養成することを目的としている。

米ワシントンの無党派政策研究組織スティムソンセンター(Stimson Center)中国担当代表・孫韻は、このような政治訓練は発展途上国に「中国式」を輸出するためであると分析する。

「政治訓練には三つの目的がある。第一に、中国共産党の正当性を示すこと。『中国式』管理が成功し、いかに他の発展途上国でも適用できるかを宣伝する。第二に、『治国交流』と称し、中国の発展経験を紹介すること。あからさまに『革命』を全面に出すことはしないが、中国の思想形式を輸出している。三つ目は、中国とアフリカの交流を強化することである」【85】

e. ラテンアメリカへの進軍―米国の裏庭へ侵入 

ラテンアメリカは地理的に米国に近く、歴史的に米国の影響範囲内にある。ラテンアメリカでは20世紀半ばに共産主義が横行し、社会主義政権がいくつか誕生したが、米国に脅威をもたらすほどにはならなかった。

ソ連崩壊後、中国共産党は「南南合作(South–South cooperation)」の旗印を掲げ、経済、貿易、軍事、外交、文化など多方面への浸透工作を始めた。ベネズエラ、キューバ、エクアドル、ボリビアなどの中南米諸国は既に反米の立場を取っていた。これを利用して、中国共産党は太平洋をまたいで彼らの対米感情を挑発し、反米思想をあおった。

これにより、中国共産党はラテンアメリカにおける米国の優位性を弱体化させるだけでなく、米国の裏庭に自由に出入りして社会主義政権を支え、長期的に反米路線を維持することができる。中国共産党によるラテンアメリカへの浸透と影響力は、ソ連のそれをはるかに超えると言っても過言ではない。

中国共産党は最初、対外貿易と投資を通じてラテンアメリカへの影響力を強めた。米国のブルッキングス研究所によると、2000年の時点で、中国ラテンアメリカ間の貿易はわずか120億米ドルだったが、2013年までに2600億米ドルと20倍以上増加した。2008年以前、中国の借款は10億米ドルを超えなかったが、2010年には370億米ドルに達した。【86】 中国は2005~16年にかけて、ラテンアメリカと1410億米ドルの融資を契約している。現在、中国からのローンは世界銀行(World Bank)と米州開発銀行(Inter-American Develop Bank)からのローンの総額を超えた。さらに、中国共産党は2025年までに、ラテンアメリカに対する2500億米ドルの直接投資を約束している。まもなく中国ラテンアメリカ間の貿易は5000億米ドルに達すると見られている。ラテンアメリカは、中国の投資先としてアジアに次ぐ第二の地域である。

多くのラテンアメリカ諸国にとって中国は最大の輸出国である。中国はラテンアメリカの3大経済大国、ブラジル、チリ、ペルーの最大輸出国であり、アルゼンチン、コスタリカ、キューバにとって第二の輸出国となっている。エクアドルの道路インフラ整備、パナマの港湾計画、チリと中国間の巨大光ファイバー網建設計画など、ラテンアメリカにおける中国の影響力はますます強まっている。【87】

一方、中国共産党はラテンアメリカを自身の資源拠点に変えようとしている。例えば、鉄鋼企業を束ねる国有持株会社・宝鋼集団(China Baowu Steel Group)はブラジルに巨額投資しており、北京市政府管理の首鋼集団(Shougang Group)は、ペルーの鉄鉱石鉱山を支配しようとしている。さらに、中国はエクアドルの石油とベネズエラの燃料、金山の開発を模索している。

また、中国共産党はラテンアメリカのインフラに多額の投資を行っている。アルゼンチンの食料を運ぶ港に2500万米ドル、同国とチリを結ぶ道路に2億5000万米ドルの投資を約束した。【88】

軍事面においても、中国共産党はラテンアメリカに浸透している。中米経済安全保障グループの研究員ジョーダン・ウィルソン(Jordan Wilson)は、中国共産党が2000年以降ローエンドからハイエンドまでの武器販売を行い、2010年までに輸出総額が1億米ドルに達したと発表した。特に2004年以降、中国共産党による対ラテンアメリカ武器販売が急増した。武器の販売先はベネズエラのような反米政権である。同時に、両国の軍事交流や合同軍事訓練が増加した。【89】

2015年、北京で中国アルゼンチン会談が開かれたが、その協議内容から両国の軍事協力が新たなステージに入っていることがうかがえる。最先端のハイエンド製品の合同生産、アルゼンチン領土内で南半球初の宇宙監視制御ステーションの設置、アルゼンチン空軍への中国製戦闘機の配備などが含まれ、その総額は5~10億米ドル規模になる。2014年時点の対ラテンアメリカ武器輸出額は1億3000万米ドルであり、対アルゼンチン武器販売額はそれを超えている。

中国共産党はラテンアメリカと経済、文化、軍事関係を強め、緊密な外交関係を築いている。中国共産党は2015年に発表した軍事白書の中で、「人民解放軍は地域的および世界的な安全保障協力に積極的に参加し、中国共産党の海外の利益を効果的に確保する」としている。【90】

中国共産党の利益と圧力を前に、パナマ、ドミニカ、エルサルバドルが中華民国(台湾)との外交関係を断ち、中国共産党を称賛した。パナマは2017年6月に中国と国交を樹立し、1世紀以上続いた台湾との外交関係を終了した。その3年前から中国共産党は港湾、鉄道、高速道路などパナマのインフラ計画に240億米ドルに上る投資を行っていた。【91】 中国共産党は世界の主要な要塞であるパナマ運河の両側の支配権を獲得している。

更に、中国共産党はエルサルバドルのラ・ウニオン港に300億米ドル近くを投資した。駐エルサルバドル米国大使は2018年7月の現地紙エル・ダイアリーノ・デ・ホイで、中国共産党のラ・ウニオン港への投資は軍事目的であり、影響力の拡大を注視する必要があると指摘している。【92】

文化面において、中国共産党はラテンアメリカおよびカリブ海諸国に39の孔子学院(大学クラスに設置)、11の孔子課堂(高校以下の教育機関)を設立し、5万人以上が登録した。【93】 孔子学院は中国共産党のスパイ機関であり、表向きは中国文化機関としているが、中国共産党のイデオロギーを海外へ発信し、若者を洗脳していると考えられている。

ラテンアメリカに広がる中国共産党の浸透は、米国にとって深刻な脅威である。中国共産党は中国の市場、投資、軍事援助に依存する国家の政策を左右し、米国と対立させることも可能である。

中国共産党が建設した運河、港湾、鉄道、通信インフラは、すべてグローバルな覇者となるために将来利用する重要な道具なのである。

f. 中国共産党の軍事的野心

2018年、珠海航空ショーで中国の最新式無人機・彩虹7(CH-7)が初披露され、軍事専門家の注目を集めた。米国製武器の輸入が禁じられているヨルダン、イラク、トルクメニスタン、パキスタンを含む多くの武器市場で既に多数の彩虹4(CH-4)が購入されている。【94】 最新の彩虹7は米国の無人機X-47Bに追従する最新機だ。軍事専門家は、最新の彩虹は試験飛行なしで珠海航空ショーに登場したと指摘する。【95】 航空ショーに設置された戦闘シミュレーションでの架空の敵は、明らかに米国だった。【96】 これは米国との覇権競争という中国共産党の野望を表している。

近年の中国軍の発展に伴い、中国の野望はますます顕著になっている。2009年、南シナ海で海上調査中だった米海軍の音響測定艦インペカブルが中国船から追尾された。【97】

また、黄海の公海でビクトリアス級音響測定艦が同様の挑発行為を受けた。中国船が30ヤードの間隔で何度も接近し、ビクトリアスは衝突を避けるために他の航路を選ばざるを得なかった。【98】最近では、2018年9月、南シナ海で中国軍艦が米ディケーター級ミサイル駆逐艦に異常接近し、わずか約45ヤード(約41メートル)前方を横切った。【99】

中国共産党の軍事的野心は長期的である。陸から海へ、そして最終的には陸と海を支配する覇権国になることである。1980年、中国共産党の戦略指針は自国の国境守備に焦点を置く積極的な防衛であり、当時の主な敵はソビエト軍だった。2013年、戦略は積極的な攻勢に転換し、中国国境の最前線が広がった。中国共産党は、「戦略的な攻勢は積極的な防衛の重要な形式だ」と定義している。【100】 

2015年、中国の軍事評論家で『超限戦』の著者は、「一帯一路政策は、陸軍の遠征能力を必要とする」とし、「中国陸軍は飛躍し、自己革命を起こさなければならない」「一帯一路から派性する国益は、中国軍の改革を起こす大きな動機づけとなる」と述べている。【101】 これら全てが中国共産党の軍事的野心を焚きつけている。

2018年、米国防総省は米国議会への年次報告書で次のように指摘している。

「中国の海事重視と海外利益の護衛という使命によって、PLA(人民解放軍)は急激に中国国境とその周辺への拡張を進めている。中国人民解放軍海軍(PLAN)の焦点は、「近海水域防御」から、「近海水域防御」と「公海の保護」の混合に移り、最高司令部が狙う統括範囲がより広域になっていることを示している。中国の軍事戦略と進行中のPLA改革は、歴史的な「大陸中心の心理」からの脱却を表している。同様に、学説にある「前沿防御」の戦略思想は、想定される衝突を中国領土の外部で発生させることであり、PLAの戦略家が益々グローバルな役割を構想していることが伺える」【102】

中国の第一の目標は、第1列島線(北は千島列島、南は台湾までの中国の対米防衛ライン。黄海、日本海、南シナ海を含む)を突破し、太平洋とインド洋の公海、最後は世界の海洋に出ることだ。

中国が南シナ海に建設した人工島は滑走路や軍用機、ミサイルが配備されている。ファイアリー・クロス礁、スビ礁、ミスチーフ礁の三つの人工島には対艦ミサイルや地対空ミサイル、また飛行場があり、空母型の戦力を有している。戦略的に、中国海軍は「第一列島」を突破することが可能であり、遠洋での作戦能力を備えている。

ホワイトハウスの元首席戦略官スティーブ・バノンは、南シナ海で今後10年以内に米中戦争が勃発する可能性について繰り返し述べている。【103】 

元米国陸軍大佐で軍事評論家のローレンス・セリンは、「中国共産党は現在、北インド洋で他の強権国家と同盟を作り、南シナ海を越えて国際的な影響力を拡大しようとしている。世界のGDPの約半分に権威を行使できる申し分のない地位だ」と論じている。【104】

南シナ海問題は地域的な領有権紛争ではなく、世界的な戦略的意味を持つ。1年間で5兆ドル近くの製品が南シナ海を通過するからだ。【105】 一帯一路の「一路」にあたる海上ラインは南シナ海から始まる。中国の石油輸入量の80%は南シナ海を経由している。【106】 南シナ海地域の平和は、第二次世界大戦後は米軍と同盟国によって維持されてきた。中国共産党が米国と一戦交える用意をするのは想像に難くない。中国は、南シナ海をさらなる経済発展促進と軍事展開のための「戦略の鍵」と見ているのだ。

米マサチューセッツ工科大学政治学教授テイラー・フラーベルは、中国共産党の歴史上の紛争案件を集めたところ、興味深いことが分かったという。1949年以来、中国と隣国との間には23件の領有権問題が発生した。そのうちの17件が解決しており、15件については北京政府がかなり譲歩していた。しかし、南シナ海については、中国は海軍が弱小だった1950年代から、強く領有権を主張している。このような議論の余地なしという中国の態度は、他の領有権紛争には見られない。【107】

中国共産党にとって、「寸土必定」(わずかな土地でも必要)が、すべての領土問題の解決手段ではない。フラーベル教授は中国共産党の南シナ海での強行姿勢について、いくつかの理由を挙げている。南シナ海には海上の戦略価値があること、潜在的に大量の資源を有すること、外国海軍の一部の活動を管理できること。南シナ海の島は中国軍の最前線にすることができる。また、南シナ海から西太平洋に入る中国潜水艦を他の国が追跡するのを防ぐこともできる。【108】

中国の南シナ海における軍拡、特に現状を変化させる近年の活動は、周辺国に緊張を生み出している。10年間防衛費を削減してきた日本は予算を増加し、インドは一度停滞した海軍近代化を復活させた。【109】

中国は「エネルギーと貨物輸送ラインの安全」を名目に南シナ海で活発に活動している。これは従来のバランスを崩し、衝突発生のリスクを増大させる行動である。有識者は、中国共産党が南シナ海における問題を国家安全保障上の問題としてとらえ、これが周辺地域の安全の侵害につながっていると指摘する。【110】 これは、前述したスティーブ・バノンの見解と一致する。

2017年、中国軍はジブチで初めて海外軍事基地を建設した。欧米の専門家は、中国共産党の視野が西太平洋を越えて軍事力をいかに遠くに投じるかに及んでいると分析する。【111】 例えば、中国は最近、太平洋諸島国家へ莫大な投資を行っている。見返りのない投資に見えるが、これらの国が将来、中国軍遠洋艦隊の補給所になることを見越しているのである。【112】 中国共産党の軍拡は伝統的な陸海空だけにとどまらず、宇宙やサイバー空間にまで及ぶ。

中国共産党の軍事的野心は膨大な人員、装備、資金力に支えられている。

中国共産党は200万人の現役軍人を有する世界最大の軍隊を維持している。PLAの陸軍は世界最大規模であり、軍艦の保有数も世界最多で空軍も大きい。PLAは大陸間弾道ミサイルや弾道ミサイルを備えた潜水艦、戦略爆撃機から成る陸・海・空の3部隊による核攻撃能力を有している。

さらに、中国共産党には170万人を擁する武装警察部隊があり、中央軍事委員会と多数の予備部隊および民兵部隊と共に統一指揮下にある。中国共産党の軍事指導イデオロギーには、常に「人民戦争」がある。全体主義システムの下では、利用可能なすべての組織をすぐさま「軍事化」することができる。つまり、中国共産党には必要に応じて軍事利用できる10億人以上の人間(海外の中国人も含めて)がいるということだ。

中国のGDPは1997~2007年に急速に成長した。中国共産党は圧倒的な経済力で武器を製造し、アップグレードした。中国陸軍は2020年までに5000の近代的な主力戦車を保有すると推定されている。海軍は少なくとも2隻の空母を保有し、空軍戦闘機の90%は第4世代で、第5世代の戦闘機もすでに所有していると言われている。

2008~2017年にかけて中国の国防費は平均年率8%と膨らみ、2017年には1543億ドルに達し、世界第2位になった。【113】 しかし、海外専門家は実際の国防費は公式発表の2倍であると推定している。実際、中国の国防費は必ずしもその軍事力を反映するものではない。中国共産党はいくらでも民間の人材や資源を利用できるからである。戦争のために国内産業全体を動員できるのだから、実際の中国の軍事力は公式データや一般的な推定を遥かに超える。

中国共産党は2020年末までに30を超える通信衛星・北斗による軍民共用の全地球測位システム(GPS)を備えると発表した。また、同党による軍用無人機・彩虹の大量生産は、同党の積極的な戦略を物語る。たとえば、同機を台湾海峡に利用すれば、無人機の「人海戦術」ならぬ「機海戦術」を通じて利点を得ることができる。【114】 衛星とAIに制御された多数の無人機集団は、局地的な対立や非対称戦争時に効果的である。

珠海航空ショーで発表されたステルス戦闘機・殲-20は、米国製F-22のレプリカと呼ばれ、殲-31とF-35も非常によく似ている。中国軍が戦闘機の開発を通じて、米国とのギャップを縮めていることを示している。

また、中国共産党はさまざまなスパイ工作を通じて米国に追いつこうとしている。ある最新の調査によると、米国に対するスパイ攻撃のうち、ハッキングの90%は中国が発信源である。中国共産党のネットワークが米国の大企業や軍事施設に侵入し、自国では開発できない技術や知識を盗んでいる。【115】  中国のドローン技術は米国から盗んだとみられている。

戦術に関しては、中国共産党は「非対称戦(asymmetric warfare, asymmetric strategy, asymmetric weapons)」に力を注いでいる。【116】 米国のインド太平洋司令部指揮官フィリップ・S・デイビッドソン上将は、中国を「競争相手」と表現した。中国は対艦ミサイルや潜水艦戦など「非対称能力」を増強することで米国に追いつこうとしている。デイビッドソン指揮官は、「将来、中国との紛争で米国が勝つという保証はない」と述べた。【117】

中国共産党は、東風21Dミサイル(米空母を狙う対艦弾道ミサイル)の研究開発の一環として、対米国の模擬戦を行っている。2018年、中国は「空母キラー」の名で知られる陸上ベースの超音速対艦ミサイル・鷹撃12Bを披露した。同機は西太平洋で米空母に打撃を与え得る550キロメートルの「デス・ゾーン」(death zone)を超低空飛行で描いた。同ミサイルは、中国共産党の「反介入・拒否区域」を作り出すための軍事手段である。

軍事力の拡大と共に、中国は北朝鮮や中東の腐敗政権への武器輸出を続けている。その目的は、それらの政権との軍事同盟を強化するだけでなく、米国の軍事力を弱体化し、米国に対抗するためである。また、中国共産党は反米感情を広げ、あおっている。これにより他の反米政権との団結が容易になり、中国共産党は覇権国家への野望を推進することができるのである。

同時に、中国共産党は上記で述べた「超限戦」など、テロの軍事理論を提唱している。「戦争は私たちから遠くない、中華世紀誕生」などと戦争の必然性を説き、「死者は歴史の進歩の原動力」と死をいとわない暴力と恐怖を肯定する。「戦争の権利がなければ発展の権利もない」と侵略を正当化し、「国の発展は他の国に対する脅威を意味する。これが、世界史の一般的な法則である」と主張する。【118】

中国国防大学防衛学院・朱成湖学長は、「米国が台湾海峡での戦争に介入した場合、米国より先に核兵器を使用して米国の数百の都市を破壊する。中国の西安から東側地域が破壊されたとしても惜しまない」と述べた。【119】 中国共産党の野心を少し披露して、国際社会の反応を伺っているのである。

ここで強調したいのは、中国軍は中国共産党の支配下にあり、軍の戦略は党の全体的な計画の一部に過ぎないということである。中国共産党の野望は、経済と軍事力を盾にして共産主義イデオロギーを世界に押しつけることである。【120】

 

参考文献

[1] 赵可金:〈和平发展道路:模式的突破〉,《人民网》,2009年11月11日,http://theory.people.com.cn/GB/10355796.html.
[2] 国防大学等:《较量无声》,2013年6月,https://www.youtube.com/watch?v=iUjkSJxJDcw&t=2190s.
[3] “Testimony of Arthur Waldron,” in “U.S.-China Relations: Status of Reforms in China,” Subcommittee on East Asian and Pacific Affairs, Committee on Foreign Relations, United States Senate, April 22, 2004, https://www.foreign.senate.gov/imo/media/doc/WaldronTestimony040422.pdf.
[4] Chris Giles, “China Poised to Pass US as World’s Leading Economic Power This Year,”Financial Times, April 29, 2014 https://www.ft.com/content/d79ffff8-cfb7-11e3-9b2b-00144feabdc0.
[5] 陈良贤,苏颢云:〈海外港口热:中企如何布局?〉,《澎湃新闻》,2017年8月17日,https://www.thepaper.cn/newsDetail_forward_1758810.
[6] Derek Watkins, K.K. Rebecca Lai, and Keith Bradsher, “The World, Built by China,” The New York Times, November 18, 2018, https://www.nytimes.com/interactive/2018/11/18/world/asia/world-built-by-china.html.
[7] Andrew Sheng, “A Civilizational Clash With China Comes Closer,” Asia Global Institute, The University of Hong Kong, January 16, 2018, http://www.asiaglobalinstitute.hku.hk/en/civilizational-clash-china-comes-closer/.
[8] 吴心伯:〈对周边外交研究的一些思考〉,《世界知识》,2015年第2期,http://www.cas.fudan.edu.cn/picture/2328.pdf.
[9] “Power and Influence: The Hard Edge of China’s Soft Power,” Australian Broadcasting Corporation, June 5, 2017, https://www.abc.net.au/4corners/power-and-influence-promo/8579844.
[10] “Sam Dastyari Resignation: How We Got Here,” Australian Broadcasting Corporation, December 11, 2017, https://www.abc.net.au/news/2017-12-12/sam-dastyari-resignation-how-did-we-get-here/9249380.
[11] 〈深度:中国捐赠对澳洲影响有多大?外国政治献金是否该禁?〉, SBS News, September 12, 2016, https://www.sbs.com.au/yourlanguage/mandarin/zh-hant/article/2016/09/12/shen-du-zhong-guo-juan-zeng-dui-ao-zhou-ying-xiang-you-duo-da-wai-guo-zheng-zhi?language=zh-hant.
[12] Mareike Ohlberg and Bertram Lang, “How to Counter China’s Global Propaganda Offensive,” The New York Times, September 21, 2016, https://www.nytimes.com/2016/09/22/opinion/how-to-counter-chinas-global-propaganda-offensive.html?_ga=2.63090735.1831033231.1544154630-97544283.1541907311.
[13] Jonathan Pearlman, “US Alarm over Aussie Port Deal With China Firm,” The Strait Times, November 19, 2015, https://www.straitstimes.com/asia/australianz/us-alarm-over-aussie-port-deal-with-china-firm.
[14] Tara Francis Chan, “Rejected Three Times Due to Fear of Beijing, Controversial Book on China’s Secret Influence Will Finally Be Published,” Business Insider, February 5, 2018, https://www.businessinsider.com/australian-book-on-chinas-influence-gets-publisher-2018-2.
[15] Christopher Walker and Jessica Ludwig, “From ‘Soft Power’ to ‘Sharp Power’: Rising Authoritarian Influence in the Democratic World,” in Sharp Power: Rising Authoritarian Influence (Washington, D.C.: National Endowment for Democracy, 2017), 20, https://www.ned.org/wp-content/uploads/2017/12/Sharp-Power-Rising-Authoritarian-Influence-Full-Report.pdf.
[16] 2017 Foreign Policy White Paper, Australian Government, 2017, https://www.fpwhitepaper.gov.au/foreign-policy-white-paper/overview.
[17] Caitlyn Gribbin, “Malcolm Turnbull Declares He Will ‘Stand Up’ for Australia in Response to China’s Criticism,” Australian Broadcasting Corporation, December 8, 2017, https://www.abc.net.au/news/2017-12-09/malcolm-turnbull-says-he-will-stand-up-for-australia/9243274.
[18] 陈用林:〈陈用林:澳大利亚正在沦为中国的后院〉,《大纪元新闻网》,2016年9月2日,http://www.epochtimes.com/gb/16/9/2/n8261061.htm.
[19] Clive Hamilton. Silent Invasion: China’s influence in Australia (Melbourne: Hardie Grant, 2018), Chapter 1.
[20] 同上.
[21] 同上.
[22] 同上.
[23] Hamilton, Silent Invasion, Chapter 3.
[24] 林坪:〈揭秘中国锐实力(十)纽西兰〉,自由亚洲电台,
2018年9月25日,https://www.rfa.org/mandarin/zhuanlan/zhuantixilie/zhongguochujiaoshenxiangshijie/jm-09252018162912.html.
[25] 同上.
[26] 同上.
[27] 林廷辉:〈龙在陌生海域:中国对太平洋岛国外交之困境〉,《国际关系学报》,第三十期(2010年7月),页58。https://diplomacy.nccu.edu.tw/download.php?filename=451_b9915791.pdf&dir=archive&title=File.
[28] John Henderson and Benjamin Reilly, “Dragon in Paradise: China’s Rising Star in Oceania,” The National Interest, no. 72 (Summer 2003): 94–105.
[29] Ben Bohane, “The U.S. Is Losing the Pacific to China,” The Wall Street Journal, June 7, 2017, https://www.wsj.com/articles/the-u-s-is-losing-the-pacific-to-china-1496853380.
[30] Josh Rogin, “Inside China’s ‘Tantrum Diplomacy’ at APEC,” The Washington Post, November 20, 2018, https://www.washingtonpost.com/news/josh-rogin/wp/2018/11/20/inside-chinas-tantrum-diplomacy-at-apec/.
[31] China’s Central Asia Problem, Report No. 244, International Crisis Group (February 27, 2013), https://www.crisisgroup.org/europe-central-asia/central-asia/china-s-central-asia-problem.
[32] Wu Jiao and Zhang Yunbi, “Xi Proposes a ‘New Silk Road’ With Central Asia,” China Daily, September 8, 2013, http://www.chinadaily.com.cn/sunday/2013-09/08/content_16952160.htm.
[33] Raffaello Pantucci and Sarah Lain, “China’s Eurasian Pivot: The Silk Road Economic Belt,” Whitehall Papers 88, no. 1 (May 16, 2017), https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/02681307.2016.1274603.
[34] “China’s Central Asia Problem,” International Crisis Group.
[35] 〈孔泉:中国支持乌兹别克斯坦为国家安全所做努力〉,人民网,2005年5月17日,http://world.people.com.cn/GB/8212/14450/46162/3395401.html.
[36] Benno Zogg, “Turkmenistan Reaches Its Limits with Economic and Security Challenges,” IPI Global Observatory, July 31, 2018, https://theglobalobservatory.org/2018/07/turkmenistan-limits-economic-security-challenges/.
[37] Jakub Jakóbowski and Mariusz Marszewski, “Crisis in Turkmenistan: A test for China’s Policy in the Region,” Center for Eastern Studies (OSW), August 31, 2018, https://www.osw.waw.pl/en/publikacje/osw-commentary/2018-08-31/crisis-turkmenistan-a-test-chinas-policy-region-0.
[38] Eiji Furukawa, “Belt and Road Debt Trap Spreads to Central Asia,” Nikkei Asian Review, August 29, 2018, https://asia.nikkei.com/Spotlight/Belt-and-Road/Belt-and-Road-debt-trap-spreads-to-Central-Asia.
[39] “Tajikistan: Chinese Company Gets Gold Mine in Return for Power Plant,” Eurasianet, April 11, 2018, https://eurasianet.org/tajikistan-chinese-company-gets-gold-mine-in-return-for-power-plant.
[40] Danny Anderson, “Risky Business: A Case Study of PRC Investment in Tajikistan and Kyrgyzstan,” The Jamestown Foundation, China Brief 18, no. 14 (August 10, 2018), https://jamestown.org/program/risky-business-a-case-study-of-prc-investment-in-tajikistan-and-kyrgyzstan/.
[41] Juan Pablo Cardenal and Heriberto Araújo, China’s Silent Army: The Pioneers, Traders, Fixers and Workers Who Are Remaking the World in Beijing’s Image (New York: Crown Publishing Group, 2013), Chapter 2.
[42] Lindsey Kennedy and Nathan Paul Southern, “China Created a New Terrorist Threat by Repressing Secessionist Fervor in Its Western Frontier,” Quartz, May 31, 2017, https://qz.com/993601/china-uyghur-terrorism/.
[43] 徐进等:〈打造中国周边安全的“战略支点”国家〉,《世界知识》,2014年15期,页14-23,http://cssn.cn/jjx/xk/jjx_lljjx/sjjjygjjjx/201411/W020141128513034121053.pdf.
[44] Therese Delpech, Iran and the Bomb: The Abdication of International Responsibility (New York: Columbia University Press, 2006), 49.
[45] Cardena and Araújo, China’s Silent Army, Epilogue.
[46] Seyed Reza Miraskari et al., “An Analysis of International Outsourcing in Iran-China Trade Relations,” Journal of Money and Economy 8, No 1 (Winter 2013): 110–139, http://jme.mbri.ac.ir/article-1-86-en.pdf.
[47] Scott Harold and Alireza Nader, China and Iran: Economic, Political, and Military Relations (Washington, D.C.: RAND Corporation, 2012), 7, https://www.rand.org/content/dam/rand/pubs/occasional_papers/2012/RAND_OP351.pdf.
[48] 〈绕过“马六甲困局”的商业基础——如何保证中缅油气管道有效运营〉,《第一财经日报》,2013年7月22日,https://www.yicai.com/news/2877768.html.
[49] Li Chenyang, “China-Myanmar Relations since 1988,” in Harmony and Development: Asean-China Relations, eds. Lim Tin Seng and Lai Hongyi (Singapore: World Scientific Publishing, 2007), 54.
[50] 同上.
[51] “China’s Myanmar Dilema,” Asia Report No.177 (Brussels: International Crisis Group , 2009), 1, https://d2071andvip0wj.cloudfront.net/177-china-s-myanmar-dilemma.pdf.
[52]  〈闲置两年后 中缅原油管道终于开通〉,《BBC中文网》,2017年4月10日,https://www.bbc.com/zhongwen/simp/chinese-news-39559135.
[53] 庄北甯,车宏亮:〈中缅签署皎漂深水港专案框架协定〉,《新华网》,2018年11月8日,http://www.xinhuanet.com/2018-11/08/c_1123686146.htm.
[54] 鹿铖:〈中缅经济走廊:缅甸发展的新兴途径〉,《光明网》,2018年9月17日,http://news.gmw.cn/2018-09/17/content_31210352.htm.
[55] 林坪:〈揭秘中国锐实力(十一)欧洲政界〉,《自由亚洲电台》,https://www.rfa.org/mandarin/zhuanlan/zhuantixilie/zhongguochujiaoshenxiangshijie/yl-11052018102634.html.
[56] Jason Horowitz and Liz Alderman, “Chastised by E.U., a Resentful Greece Embraces China’s Cash and Interests,” The New York Times, August 26, 2017, https://www.nytimes.com/2017/08/26/world/europe/greece-china-piraeus-alexis-tsipras.html.
[57] 同上.
[58] Jan Velinger, “President’s Spokesman Lashes Out at Culture Minister for Meeting with Dalai Lama,” Radio Praha, October 18, 2016, https://www.radio.cz/en/section/curraffrs/presidents-spokesman-lashes-out-at-culture-minister-for-meeting-with-dalai-lama.
[59] 林坪:〈揭秘中国锐实力(十一)欧洲政界〉,《自由亚洲电台》,2018年11月5日,https://www.rfa.org/mandarin/zhuanlan/zhuantixilie/zhongguochujiaoshenxiangshijie/yl-11052018102634.html.
[60] 〈德国蓝皮书:中国在德国非金融直接投资大幅增长〉,《观察者网》,2018年7月9日,http://mil.news.sina.com.cn/dgby/2018-07-09/doc-ihezpzwt8827910.shtml.
[61] Chinese Influence and American Interests: Promoting Constructive Vigilance (Stanford, Calif.: Hoover Institution Press, 2018), https://www.hoover.org/sites/default/files/research/docs/chineseinfluence_americaninterests_fullreport_web.pdf, 163.
[62] Philip Oltermann, “Germany’s ‘China City’: How Duisburg Became Xi Jinping’s Gateway to Europe,” The Guardian, August 1, 2018, https://www.theguardian.com/cities/2018/aug/01/germanys-china-city-duisburg-became-xi-jinping-gateway-europe.
[63] 〈希拉克:热爱中国的人〉,《中国网》,2007年3月20日, http://www.china.com.cn/international/txt/2007-03/20/content_18421202.htm.
[64] 联合写作组:《真实的江泽民》,〈第九章 贪战(上)〉,《大纪元新闻网》,http://www.epochtimes.com/gb/12/6/18/n3615092.htm.
[65] Nick Timothy, “The Government Is Selling Our National Security to China,” Conservative Home, October 20, 2015, http://www.conservativehome.com/thecolumnists/2015/10/nick-timothy-the-government-is-selling-our-national-security-to-china.html.
[66] Holly Watt, “Hinkley Point: The ‘Dreadful Deal’ behind the World’s Most Expensive Power Plant,” The Guardian, December 21, 2017, https://www.theguardian.com/news/2017/dec/21/hinkley-point-c-dreadful-deal-behind-worlds-most-expensive-power-plant.
[67] 林坪:〈揭秘中国锐实力(十二)在欧洲的经济渗透〉,《自由亚洲电台》,2018年11月8日,https://www.rfa.org/mandarin/zhuanlan/zhuantixilie/zhongguochujiaoshenxiangshijie/yl-11082018122750.html;〈揭秘中国锐实力(十三)欧洲学术、言论自由〉,《自由亚洲电台》,2018年11月12日,https://www.rfa.org/mandarin/zhuanlan/zhuantixilie/zhongguochujiaoshenxiangshijie/MCIEU-11122018165706.html.
[68] Jack Hazlewood, “China Spends Big on Propaganda in Britain … but Returns Are Low,” Hong Kong Free Press, April 3, 2016, https://www.hongkongfp.com/2016/04/03/china-spends-big-on-propaganda-in-britain-but-returns-are-low/.
[69] Thorsten Benner et al., “Authoritarian Advance: Responding to China’s Growing Political Influence in Europe,” Global Public Policy Institute (GPPI), February 2018, https://www.gppi.net/media/Benner_MERICS_2018_Authoritarian_Advance.pdf.
[70] Christophe Cornevin and Jean Chichizola, “The Revelations of Le Figaro on the Chinese Spy Program That Targets France” [“Les révélations du Figaro sur le programme d’espionnage chinois qui vise la France”], Le Figaro, October 22, 2018, http://www.lefigaro.fr/actualite-france/2018/10/22/01016-20181022ARTFIG00246-les-revelations-du-figaro-sur-le-programme-d-espionnage-chinois-qui-vise-la-france.php. [In French]
[71] “German Spy Agency Warns of Chinese LinkedIn Espionage,” BBC News, December 10, 2017, https://www.bbc.com/news/world-europe-42304297.
[72] Serge Michel and Michel Beuret, China Safari: On the Trail of Beijing’s Expansion in Africa (New York: Nation Books, 2010), 162.
[73] Reuben Brigety, “A Post-American Africa,” Foreign Affairs, August 28, 2018, https://www.foreignaffairs.com/articles/africa/2018-08-28/post-american-africa.
[74] “Not as Bad as They Say” The Economist, October 1, 2011, https://www.economist.com/middle-east-and-africa/2011/10/01/not-as-bad-as-they-say.
[75] Joseph Hammond, “Sudan: China’s Original Foothold in Africa,” The Diplomat, June 14, 2017, https://thediplomat.com/2017/06/sudan-chinas-original-foothold-in-africa/.
[76] 曾勇,〈中国处理达尔富尔危机的战略分析〉,《阿拉伯世界研究》,2012年11月,第六期,http://mideast.shisu.edu.cn/_upload/article/23/47/8ee05ca2405488f615e514184f73/077159aa-8c97-41b8-bcc3-95c22c3ba732.pdf.
[77]  〈北京盛情款待遭通缉的苏丹总统巴希尔〉,《法广》,2011年6月29日,http://cn.rfi.fr/中国/20110629-北京盛情款待遭通缉的苏丹总统巴希尔.
[78] 中共国务院新闻办公室《中国的和平发展道路》称,截至2005年,中国减免了44个发展中国家约166亿元人民币债务。http://www.scio.gov.cn/zfbps/ndhf/2005/Document/307900/307900.htm.
[79] 潘小涛:〈中国人,请准备再大撒币〉,《苹果日报》,2018年8月31日,https://hk.news.appledaily.com/local/daily/article/20180831/20488504.
[80] 〈商务部:非洲33个最不发达国家97%的产品享受零关税〉,《中新网》,2018年8月28日,http://www.chinanews.com/gn/2018/08-28/8612256.shtml.
[81] 家傲:〈中国再向非洲大撒币 美国警觉〉,《自由亚洲电台》,2018年9月3日,https://www.rfa.org/mandarin/yataibaodao/junshiwaijiao/hc-09032018110327.html.
[82] 泉野:〈对话王文:从撒钱论到“新殖民主义”误区背后的真问题〉,《多维》,2018年9月2日,http://news.dwnews.com/china/news/2018-09-02/60081911_all.html.
[83] 蔡临哲:〈埃塞俄比亚学习“中国模式”〉,《凤凰周刊》,2013年5月15日,http://www.ifengweekly.com/detil.php?id=403.
[84] 安德鲁・哈丁:〈记者来鸿:非洲出了个“新中国”〉,《BBC中文网》,2015年7月27日,https://www.bbc.com/ukchina/simp/fooc/2015/07/150727_fooc_ethiopia_development.
[85] 斯洋:〈争夺话语权,输出中国模式,中国影响欧美和亚非方式大不同〉,《美国之音》,2018年12月7日,https://www.voachinese.com/a/4420434.html.
[86] Ted Piccone, “The Geopolitics of China’s Rise in Latin America,” Order From Chaos: Foreign Policy in a Troubled World, November 2016, 4 and 9, https://www.brookings.edu/wp-content/uploads/2016/11/the-geopolitics-of-chinas-rise-in-latin-america_ted-piccone.pdf.
[87] Alfonso Serrano, “China Fills Trump’s Empty Seat at Latin America Summit,” The New York Times, April 17, 2018, https://www.nytimes.com/2018/04/13/opinion/china-trump-pence-summit-lima-latin-america.html.
[88] Translated from Chinese version of the paper by Jorge Blázquez-Lidoy, Javier Rodríguez, Javier Santiso, “Angel o demonio? Los efectos del comercio chino en los países de América Latina” [Angel or Demon? The Effects of Chinese Trade in Latin American Countries], https://repositorio.cepal.org/bitstream/handle/11362/11135/090017043_es.pdf?sequence=1&isAllowed=y [in Spanish].
[89] Jordan Wilson, China’s Military Agreements with Argentina: A Potential New Phase in China-Latin America Defense Relations, U.S-China Economic and Security Review Commission Staff Research Report, November 5, 2015, https://www.uscc.gov/sites/default/files/Research/China%27s%20Military%20Agreements%20with%20Argentina.pdf.
[90] 金雨森:〈中共金钱外交恐成为最后一根稻草〉,《看中国》,2017年7月5日,https://www.watchinese.com/article/2017/23053.
[91] 同上.
[92] 〈中共巨额金援抢萨尔瓦多 引美国忧虑〉,新唐人电视台,2018年8月22日,http://www.ntdtv.com/xtr/gb/2018/08/23/a1388573.html.
[93] 黄潇潇:〈拉美和加勒比地区孔子学院达39所〉,《人民网》,2018年1月26日,http://world.people.com.cn/n1/2018/0126/c1002-29788625.html.
[94] Sharon Weinberger, “China Has Already Won the Drone Wars,” Foreign Policy, May 10, 2018, https://foreignpolicy.com/2018/05/10/china-trump-middle-east-drone-wars/.
[95] Rick Joe, “China’s Air Force on the Rise: Zhuhai Airshow 2018,” The Diplomat, November 13, 2018, https://thediplomat.com/2018/11/chinas-air-force-on-the-rise-zhuhai-airshow-2018/.
[96] 黄宇翔:〈中国无人战机惊艳珠海航展亮相假想敌是美国〉,《亚洲周刊》,2018年11月25日,第32卷 46期,https://www.yzzk.com/cfm/blogger3.cfm?id=1542252826622&author=%E9%BB%83%E5%AE%87%E7%BF%94.
[97] “Pentagon Says Chinese Vessels Harassed U.S. Ship,” CNN, March 9, 2009, http://www.cnn.com/2009/POLITICS/03/09/us.navy.china/index.html.
[98] Barbara Starr, “Chinese Boats Harassed U.S. Ship, Officials Say,” CNN, May 5, 2009, http://edition.cnn.com/2009/WORLD/asiapcf/05/05/china.maritime.harassment/index.html.
[99] Barbara Starr, Ryan Browne and Brad Lendon, “Chinese Warship in ‘Unsafe’ Encounter With US Destroyer, Amid Rising US-China Tensions,” CNN, October 1, 2018, https://www.cnn.com/2018/10/01/politics/china-us-warship-unsafe-encounter/index.html.
[100] 军事科学院军事战略研究部:《战略学》(北京:军事科学出版社,2013),页47.
[101] 乔良:〈“一带一路”战略要考虑军事力量走出去问题〉,《中国军网》,2015年4月15日,http://www.81.cn/jmywyl/2015-04/15/content_6443998_5.htm.
[102] Annual Report to Congress: Military and Security Developments Involving the People’s Republic of China 2018, U.S. Department of Defense, May 16, 2018, https://media.defense.gov/2018/Aug/16/2001955282/-1/-1/1/2018-CHINA-MILITARY-POWER-REPORT.PDF, 46, 47.
[103] Benjamin Haas, “Steve Bannon: ‘We’re Going to War in the South China Sea … No Doubt,’” The Guardian, February 1, 2017, https://www.theguardian.com/us-news/2017/feb/02/steve-bannon-donald-trump-war-south-china-sea-no-doubt.
[104] Lawrence Sellin, “The US Needs a New Plan to Address Chinese Power in Southern Asia,” The Daily Caller, June 5, 2018, https://dailycaller.com/2018/06/05/afghanistan-pakistan-america-china/.
[105] Panos Mourdoukoutas, “China Will Lose The South China Sea Game,” Forbes, July 1, 2018, https://www.forbes.com/sites/panosmourdoukoutas/2018/07/01/china-will-lose-the-south-china-sea-game/#5783cad73575.
[106] Michael Lelyveld, “China’s Oil Import Dependence Climbs as Output Falls,” Radio Free Asia, December 4, 2017, https://www.rfa.org/english/commentaries/energy_watch/chinas-oil-import-dependence-climbs-as-output-falls-12042017102429.html.
[107] M. Taylor Fravel, “Why Does China Care So Much about the South China Sea? Here Are 5 Reasons,” The Washington Post, July 13, 2016, https://www.washingtonpost.com/news/monkey-cage/wp/2016/07/13/why-does-china-care-so-much-about-the-south-china-sea-here-are-5-reasons/?utm_term=.4a7b1de04dbd.
[108] 同上.
[109] Brahma Chellaney, “Why the South China Sea Is Critical to Security,” The Japan Times, March 26, 2018, https://www.japantimes.co.jp/opinion/2018/03/26/commentary/world-commentary/south-china-sea-critical-security/#.XAnOBBNKiF1.
[110] Scott L. Montgomery, “Oil, History, and the South China Sea: A Dangerous Mix,” Global Policy, August 7, 2018, https://www.globalpolicyjournal.com/blog/07/08/2018/oil-history-and-south-china-sea-dangerous-mix.
[111] Hal Brands, “China’s Master Plan: a Global Military Threat,” The Japan Times, June 12, 2018, https://www.japantimes.co.jp/opinion/2018/06/12/commentary/world-commentary/chinas-master-plan-global-military-threat/#.W9JPPBNKj5V.
[112] 林廷辉,〈龙在陌生海域:中国对太平洋岛国外交之困境〉,《国际关系学报》第三十期(2010年7月),https://diplomacy.nccu.edu.tw/download.php?filename=451_b9915791.pdf&dir=archive&title=File,页58.
[113] Annual Report to Congress: Military and Security Developments Involving the People’s Republic of China 2018, U.S. Department of Defense, May 16, 2018, https://media.defense.gov/2018/Aug/16/2001955282/-1/-1/1/2018-CHINA-MILITARY-POWER-REPORT.PDF.
[114] 黄宇翔:〈中国无人战机惊艳珠海航展亮相假想敌是美国〉,《亚洲周刊》,2018年11月25日, 第32卷 46期,https://www.yzzk.com/cfm/blogger3.cfm?id=1542252826622&author=%E9%BB%83%E5%AE%87%E7%BF%94.
[115] David E. Sanger, “U.S. Blames China’s Military Directly for Cyberattacks,” The New York Times, May 6, 2013, http://www.nytimes.com/2013/05/07/world/asia/us-accuses-chinas-military-in-cyberattacks.html?pagewanted=all&_r=1&.
[116] See in-depth analysis of this issue by Peter Navarro, director of the White House National Trade Council, in Crouching Tiger: What China’s Militarism Means for the World (New York: Prometheus Books, 2015).
[117] Steven Lee Myers, “With Ships and Missiles, China Is Ready to Challenge U.S. Navy in Pacific,” The New York Times, August 29, 2018, https://www.nytimes.com/2018/08/29/world/asia/china-navy-aircraft-carrier-pacific.html.
[118] 参照:三人行:〈评血腥公司的末日疯狂赌〉,《大纪元新闻网》, http://www.epochtimes.com/gb/5/8/1/n1003911.htm,http://www.epochtimes.com/gb/5/8/2/n1004823.htm;李天笑:〈神要中共亡 必先使其狂〉,《大纪元新闻网》,http://www.epochtimes.com/gb/5/8/17/n1021109.htm.
[119] Jonathan Watts, “Chinese General Warns of Nuclear Risk to US,” The Guardian, July 15 2005, https://www.theguardian.com/world/2005/jul/16/china.jonathanwatts.
[120] Michael Pillsbury was surprised to find that, when Chinese scholars assess the country’s power, military strength accounted for less than 10 percent. After the collapse of the Soviet Union, the CCP changed its criteria for evaluating strength and incorporated factors such as economy, overseas investment, technological innovation, and natural resources. Michael Pillsbury, The Hundred-Year Marathon: China’s Secret Strategy to Replace America as the Global Superpower, Chapter 2.

つづく 第十八章  中国共産党のグローバルな野望(下)

 

悪魔が世界を統治している

目次

 

序章
第一章   人類を壊滅する邪悪の陰謀
第二章   始まりはヨーロッパ
第三章   東側での大虐殺
第四章   革命の輸出
第五章   西側への浸透(上)
第五章   西側への浸透(下)
第六章   神に対する反逆
第七章   家族の崩壊(上)
第七章   家族の崩壊(下)
第八章   共産主義が引き起こした政治の混乱(上)
第八章   共産主義が引き起こした政治の混乱(下)
第九章   共産主義がしかけた経済的な罠(上)
第九章   共産主義がしかけた経済的な罠(下)
第十章   法律を利用する邪悪
第十一章  芸術を冒涜する
第十二章  教育の破壊(上)
第十二章  教育の破壊(下)
第十三章  メディアを乗っ取る
第十四章  大衆文化―退廃と放縦
第十五章  テロリズムのルーツは共産主義
第十六章  環境主義の裏にいる共産主義(上)
第十六章  環境主義の裏にいる共産主義(下)
第十七章  グローバル化の中心は共産主義
第十八章  中国共産党のグローバルな野望(上)
第十八章  中国共産党のグローバルな野望(下)
おわりに