国産の人工知能(AI)開発を後押しするため、企業による個人データ収集の規制を緩和する改正個人情報保護法が10日、参院本会議で可決、成立した。自民党や日本維新の会などの与党に加え、国民民主党やチームみらいなどが賛成した。
現行法では、民間事業者が個人情報を第三者に提供する際、原則として本人の同意が必要とされている。これに対し改正法では、AI開発など特定の目的に限り、例外的に本人同意を不要とする特例が設けられた。
データ利活用のハードルを下げることで、米国や中国に比べて遅れが指摘される国内AI開発の競争力強化を図る狙いがある。施行は公布後2年以内とされている。
政府は、第三者に提供されるデータについては個人が特定されないよう加工されるため、プライバシー侵害の懸念は限定的だと説明している。
一方、採決では立憲民主党、公明党、参政党、日本共産党などが反対に回った。反対各党は、対象となる情報に病歴や犯罪歴、信条などの「要配慮個人情報」が含まれ得る点を問題視し、本人の同意なしに外部提供が可能となることに強い懸念を示した。
とりわけ、プライバシー性の極めて高い情報の取り扱いを巡っては、制度の透明性や監督体制の不十分さを指摘する声も根強く、今後の運用次第では国民の不信感を招く可能性もある。AI振興と個人情報保護のバランスをいかに確保するかが、今後の大きな課題となる。
欧州は権利保護重視、中国は国家管理
今回の法改正を各国の制度と比較すると、日本の立ち位置が浮かび上がる。
欧州連合(EU)では、一般データ保護規則(GDPR)が個人データの利用について厳格な法的根拠や利用目的の限定を求めている。AIの活用についても透明性や説明責任、データ最小化の原則を重視しており、AI法では高リスクAIに対する事前のリスク評価や人による監督などの規制を導入した。
EUは、AIの発展を認めつつも、個人の権利保護を前提とした制度設計を採用している。企業にとってはデータ活用の自由度が制約される一方、プライバシー保護とAIガバナンスの両立を図る仕組みとなっている。
これに対し、中国は「個人情報保護法」や「データ安全法」、「サイバーセキュリティー法」などに基づき、データを国家の管理下に置くことでAI産業の育成を進めている。データの越境移転や利用には厳しい規制が設けられている。
そのうえ、企業によるデータ活用は認められるものの、国家への報告義務や監督と不可分の関係にある。
今回の日本の改正は、EUのような厳格な権利保護とも、中国のような国家主導の管理とも異なり、AI開発を促進するため同意原則を一部緩和する方向へかじを切ったといえる。
ただ、要配慮個人情報が対象となり得る点については慎重な運用を求める声も根強く、制度の実効性や監督体制の在り方が今後問われることになりそうだ。
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