THE EPOCH TIMES
古代中国の物語

借りは必ず清算される

2015年12月24日 07時00分

 17世紀、明朝から清朝へ移行する頃、民話として語り継がれたお話です。

 昔、北京から数キロ離れたワージャーダンという村に、チェンという裕福な地主がいた。

 チェンのすぐ近くには、リーという農民が住んでいた。リーは、石やレンガの家造りに長けていたので、チェン氏の家で何か修理が必要であれば、行って手伝いをした。チェンもそれに対して気前よくリーに支払ったので、二人は仲良くなり、その後は家族ぐるみの付き合いが始まった。

 一年後、チェンは商用のため、家族を連れて南の方へ移住することになった。滞在はほんの数か月になる予定だったが、出発前にチェンはリーを呼んだ。

「リーさん、実は、ひとつ君に頼みたいことがある」とチェンが切りだした。「実は、私には高級な酒を入れた樽が30個ほど家にある。私が不在にしている間、留守を見守る者たちが、私のいない間にそれを飲み干してしまうのではないかと心配なのだ。すまないが、私が帰るまで、君の家でそれを保管してくれないだろうか?」

「そんなの、お安い御用ですよ」とリーは頷いた。「すべての酒樽を、傷一つ付けずに保管しておきますよ。安心して旅に出て下さい」

 チェンはリーの言葉に安堵すると、すぐに自宅から30個の酒樽をリーに届けた。リーは、それを倉庫に置くと、しっかりと扉にカギをかけた。

誘惑

 2か月が過ぎたが、チェンからは何の便りもなかった。ある日、リーは倉庫にある酒が気になり、酒樽に近づいて匂いをかいでみた。しかし、何の匂いも感じない。「変だな。どんなにシッカリと蓋が閉まっていたとしても、せめて匂いだけでもするはずだが」。リーは樽を揺すってみたが、液体の音はしない。彼は好奇心にかられ、そっと樽の蓋を開けてみた。すると、そこには酒の代わりに、輝くばかりの銀貨が詰まっていた。

 興奮した彼は、すかさず全ての酒樽を開けてしまった。中に詰まっていたのはすべて銀貨で、合計3000両だった。彼は誘惑に勝てず、とっさにいくつかの銀貨をつかみ取ると、そのまま市場に繰り出した。彼は高級な酒を大量に買い込むと、その酒を全部の樽に入れた。30個の樽すべてに酒を注ぐと、再び封をして倉庫に保管し、盗んだ銀貨は他の部屋の奥にしまい込んだ。

 数か月後、チェンは旅から帰ってきた。リーは何ごともなかったように30樽をチェンに返した。チェンが家に戻って樽を開けてみると、そこには銀貨の代わりに酒が入っているのを見つけた。彼が苦心して貯めた銀貨は、すべてリーに盗られてしまったことが分かったが、なす術もなかった。

 チェンは頭を悩ませたが、銀貨を取り戻す方法は思いつかなかった。彼の無念は徐々に身体をむしばみ、とうとう半年後には亡くなってしまった。

 チェンが逝くと、リーは心が騒いだ。「これで堂々とチェンから奪った銀貨を使い、小作人から地主になれるぞ」。リーは早速、次々と土地を買うと、立派な家屋を建て、数人の愛人を住まわせて贅沢に暮らした。

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